CIは優れた性質を持つ環状糖ですが、微生物が生産するCIの量は多くありません。Paenibacillus agaridevorans T-3040株は世界で最初に発見されたCI生産菌です。この菌のCI生産酵素、CITaseは野生型ではほとんど休眠状態で、工業的に利用するには十分な生産量が得られません。そこで、「リボゾーム工学法」を用いて菌を育種し、CITaseの生産量が野生型の1,000倍に増加した変異株を得ることができました。リボゾーム工学法とは、抗生物質耐性を付与してリボゾームやRNAポリメラーゼなどに特異的に変異を導入することにより、抗生物質などの二次代謝産物や、休眠酵素の生産性を高める育種法です(Ochi K. (2017) J. Antibiot. 70, 25-40)。一方、T-3040菌は全ゲノム解析の結果、キシラナーゼ、アガラーゼ、カラギーナーゼ遺伝子も持つと推定されましたが、野生株のこれらの酵素活性は高くなく、休眠酵素である可能性が高いと考えました。そこで、リボゾーム工学法でキシラナーゼ、アガラーゼやカラギーナーゼ活性を高める育種を試みています。また、2019年にスクリーニングした菌株でもリボゾーム工学法による育種が可能であるか検証を試み、リボゾーム工学法に普遍性があるかどうかを明らかにしていきたいと考えています。