超臨界温泉プロジェクト


◆超臨界温泉とは?

温泉には,怪我病気治癒,心身疲労回復などの効能があり,また禊や集団交流など昔からの入浴習慣にもなじむもので,大変に親しまれているものである。近年はレジャーとしても広く普及しており,国内の温泉の数は3000を超え,平均すると各自治体に1つはある勘定になる。山梨県も温泉王国といえ,各町村に公営の温泉施設があるのが普通であり,さらに石和,湯村など昔から著名な温泉から,西山,奈良田などの"秘湯"まで数多い。最近白骨温泉の事件を契機として,温泉の湯質が問題となっている。悪質な例では,単なる水道水を沸かした湯を"温泉"と称して長年営業していたものもある。地下深くから冷泉を汲み上げ,ボイラーで沸かし一日中循環する"温泉"もよく見られるものであり,"掛け流しの湯"でも湯量や温度の調節のため水道水などで割ることも多いと聞く。温泉は本来地下から湧き出た直上に湯船があることが望ましく,たとえ泉源の湯を100%用いているにしろ,樋やパイプで引いてくる間に,酸化・変質やミネラル分の消失を来たしてしまうそうである。
 温泉水の起源は地下深部で岩漿に作用した高圧熱水である。地下深部では水は高温高圧の超臨界ないし亜臨界状態にある(超臨界水,亜臨界水)。本研究は超(亜)臨界熱水を利用し,人工的に"温泉"を作るユニークな研究で,鉱物成分を含有する熱水を連続供給する実験システムの実現可能性の検証を主眼とする。最終的には含鉱物熱水を湯船に直接墳入する超臨界"源泉"を実現することが目的である。

◆ねらい

 本研究で開発する温泉はむろん「ホンモノ」の温泉ではない。しかし,岩漿性高圧熱水を実際に製造し,湯船に注入するというという点では,循環水や添加物を用いる「温泉」以上にホンモノの温泉であるといえる。さらに,商業性の高い任意の鉱物から岩漿性高圧熱水を得ることができる。文献,特許,商標などを検索したが先例がなく,独創的かつ画期的である。
 最近県内の温泉では,乱掘による湯量の低下,過当競争にともなう差別化が必要になっている。本研究が目標としている「超臨界温泉」は,内容的にも,ネーミングもユニークなもので,ホンモノ志向に応え,県内温泉産業の活性化のための起爆剤足りうるものであり,地域のニーズにマッチしたものであると自負している。具体的には,単純泉(単なる湯井戸泉)の高付加価値化,レジャー温泉施設のような多様な湯質を要求される施設への提供(超臨界湯,ワイン湯,薬石湯,…)を意図している。
 超臨界ないし亜臨界状態の熱水と鉱物との相互作用については,鉱床生成の観点からイオン平衡について研究がなされている。また熱水中での各種鉱物の溶解および合成についての基礎的な研究もなされている。本研究はこれらの基礎的なデータ収集を行うものではなく,鉱物成分を含有する熱水を連続供給する実験システムの実現可能性の検討を主眼としている。

◆これまで