軸方向放電励起気体レーザー

Longitudinally excited gas laser

我々の研究室では，新しい気体レーザーの研究をしています．気体レーザーは，媒質ガスにより中赤外域から真空紫外域の幅広い領域（波長12 μm（12000 nm）から100 nmの領域）でレーザー発振します．

新しい気体レーザーの性能として，シンプルで小型の装置（簡単に持ち運びができる程度の大きさでガスボンベやポンプが不要な装置）で，きれいな円形ビーム（レーザーポインターのように拡がらないビーム）を1 kHz以上の高繰り返しで出力することを目標にしています．

そのために，我々は，低ガス圧放電（10 kPa以下，10 kPaは大気圧の1/100の圧力）を用いる軸方向放電励起方式に着目しています．

これまでに，軸方向放電励起方式では，CO₂レーザー（9.2〜11.4 μm）やF原子レーザー（630〜780 nm），XeFレーザー（351 nm），N₂レーザー（337 nm），KrFレーザー（248 nm），F₂レーザー（157 nm）などの発振が観測されています．

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紫外レーザーの開発

UV laser

軸方向放電励起方式による小型でシンプルな装置によるきれいなビームを出力する紫外気体レーザーの開発を行っています．

紫外気体レーザーの欠点であるビーム品質やガス寿命（大型な装置）を改善し，固体レーザーのような性能をもち，固体レーザーよりも小型でシンプルな装置で，固体レーザーよりも短波長の紫外気体レーザーの開発を目指しています．

N₂レーザー（337 nm）により，軸方向放電励起方式の特徴の調査や可能性の探索を行い，新しい気体レーザーの研究をしています．N₂レーザーの実験で得られた結果や技術を用いることにより，軸方向放電励起エキシマレーザー（KrFレーザーとArFレーザー）の開発を行っています．

F₂レーザー（157 nm）においては，既に，2002年（宇野が学生の時）に，低ガス圧（40 Torr）発振と高ガス圧（1 atm）発振を実現しています．さらに，我々は，希ガスダイマによる真空紫外域（200 nm以下）の波長可変レーザーの開発を目標としています．

軸方向放電励起N₂レーザーの研究では，これまでに，エキシマランプと同じ方式によるレーザー発振や立ち上がり時間数十μsの遅い電圧パルスによるレーザー発振，ビーム拡がり角0.3 mrad（全角）の高品質ビームのレーザー発振などを実現しました．

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炭酸ガスレーザーの開発

CO₂ laser

波長9 - 11 μmで発振するレーザーには，CO₂レーザー（発振波長域9.2 - 11.4 μm）とQCL（量子カスケードレーザー）（発振波長域4 - 12 μm），鉛塩半導体レーザー（2.9 - 27 μm）があります．

CO₂レーザーは，パルス幅100 nsから1 msでパルス発振もCW（連続波）発振も可能であり，高エネルギー動作も高平均出力動作も可能です．また，ガラスや樹脂，水などによく吸収されるため，材料加工や医療でよく使用されています．

我々は，CO₂レーザーの高性能化・簡便化の研究を行っています．

軸方向放電励起CO₂レーザーの開発では，非常に簡単な装置構成において，光のパラメータ（レーザーパルス波形・パルス幅，レーザービーム形状・ビーム品質，偏光，発振波長）が制御可能なCO₂レーザーの開発を行っています．

軸方向放電励起CO₂レーザーでは，パルス幅が数msの長パルス発振が一般的でしたが，我々は2009年にパルス幅100 nsの尖頭パルスをもつ短パルス発振を実現しました．最近では，1台の軸方向放電励起CO₂レーザーにおいて，放電の制御により，長パルス（パルス幅10 μsから10 ms），テール付き短パルス（尖頭パルス幅100 nsから400 ns，テール長数μsから数十μs，尖頭パルスに対するテールのエネルギー比1:0から1:200），テールフリー短パルス（パルス幅100 nsから400 ns）の3種類のレーザーパルスの生成を実現しました．さらに，長パルスにおけるパルス幅の制御やテール付き短パルスのパルステールエネルギーの制御も実現しました．

パルス幅約10 μsの長パルスの直後にパルス幅約200 nsのテールフリー短パルスを出力するプレ長パルス付き短パルス（予熱パルス付き短パルス）などの新奇レーザーパルスの生成を実現しました．

予備電離や高速ガスフローを用いない装置で，繰り返し周波数1 kHzのテール付き短パルスの発振を実現しました．

1台の軸方向放電励起CO₂レーザーにおいて，共振器の調整により，ガウシアンビーム，トップハットビーム，ドーナツビームの生成も実現しました．M²=1のビームの生成も実現しました．

東海大学理学部物理学科の遠藤雅守教授との共同研究において，1台の軸方向放電励起CO₂レーザーにおいて，共振器の調整により，ランダム偏光，ラジアル偏光，アジマス偏光の生成も実現しました．

近畿大学理工学部電気電子工学科の中野人志教授との共同研究において，軸方向放電励起CO₂レーザーの小型化・簡便化を目指しています．

精電舎電子工業株式会社との共同研究において，軸方向放電励起CO₂レーザーの製品化を行なっています．

本研究は，JST A-STEP シーズ育成タイプ「パラメータ制御可能なCO₂レーザーの開発と加工応用」（2018.10 - 2022.03.）の支援を受けました．

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レーザー加工の研究

Laser processing

レーザー加工の研究として，我々が開発したレーザーパルス波形・レーザービーム形状が制御可能なCO₂レーザーによる加工対象に最適な照射条件の探索を行っています．

レーザー加工では，レーザーパルス幅おおよそ100 ns以下ではアブレーション加工が生じ，数十μs以上では熱加工が生じると言われています．（＊厳密には，fsの領域でアブレーション加工による非熱加工が生じます．100 ns程度ではアブレーションプラズマが観測されますが熱影響の小さな熱加工が生じると考えています．）

テールフリー短パルスのCO₂レーザーでは，アブレーション加工が生じます．テール付き短パルスのCO₂レーザーでは，尖頭パルスの部分でアブレーション加工，パルステールの部分で熱加工・熱効果・熱影響が生じます．長パルスのCO₂レーザーでは，熱加工・熱効果・熱影響が生じます．

熱加工・熱効果・熱影響では，加工対象に炭化や溶融，変質，ひび割れを与えるかもしれません．あるいは，加工効率を向上させる効果をもたらすかもしれません．この辺は，加工対象によります．

また，レーザービーム形状も照射部の熱分布に影響を与えます．そこで，我々は，加工対象に最適なCO₂レーザーパルス・ビームの探索を行っています．

現在の我々の加工対象は，青板ガラスや白板ガラス，合成石英ガラスなどのガラス，PET（マイラー）やPI（カプトン），PTFE（テフロン），PC（ポリカ）などのポリマー樹脂，CFRPやGFRPの複合材料，レーザー医療に関係する人の歯（硬組織）を用いた実験をしています．

これまでに様々な材質のガラスにおいてクラックレスな加工（穴あけ加工，切削加工，切断加工，溝加工）を実現しました．

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レーザー医療の研究

Laser medicine

レーザー医療の研究として，CO₂レーザーによる人の歯の切削の研究と歯槽骨の修復・再生の研究，軟組織治療における熱影響の低減の研究を行っています．

現在，歯科治療には様々なレーザーが使用されています．CO₂レーザーは，歯茎などの軟組織の切開や止血に使用されています．歯医者さんが使用しているCO₂レーザーを歯に照射すると，歯は炭化してしまいます．

我々が開発したCO₂レーザーでは，歯に炭化を与えないきれいな切削が実現しました．しかも，低いエネルギーで効率よく切削することができました．現在は，効果的な切削が可能な条件の探索や1台の小型CO₂レーザーによる硬組織の切削，軟組織の切開，止血などが可能な複合歯科治療機の開発を目指しています．

また，山梨大学医学部歯科口腔外科学講座とともに，インプラント治療におけるCO₂レーザーの効果について研究しています．インプラント治療では，歯を支えている歯槽骨の量とインプラントの定着スピードが重要となります．本研究では，CO₂レーザー照射による歯槽骨の修復・再生の研究として，CO₂レーザーのレーザーパルス波形や総照射強度，照射対象に依存する骨の修復・再生の特性を調査しています．

本研究は，科研費（基盤研究C）「レーザーパルス形状制御CO₂レーザーによる歯・歯槽骨・骨の修復・再生の研究」（2016.04. - 2019.03.）の助成を受けました．

現在，CO₂レーザーはアンチエイジングを含む皮膚治療にも使用されています．レーザーは照射部に熱を与えるため，術前の麻酔や術後のダウンタイムが必要となり，患者さんの負担に繋がっています．そこで，CO₂レーザーのレーザーパルス波形やレーザービーム形状を制御することにより，照射部の余分な熱を低減し，患者さんの負担を減らす研究をしています．

本研究は，科研費（基盤研究C）「パラメータ制御CO₂レーザー軟組織治療における熱影響の低減」（2023.04. - 2026.03）の助成を受けています．

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スケジュール

Schedule

【2023.04.-2024.03.】

2023.04.17-21. 国際会議：OPIC ALPS'23. 横浜, 神奈川. パシフィコ横浜.

2023.06.13-16. 国際会議：LPM. 弘前, 青森. 弘前文化センター.

2023.09.02-03. レーザー夏の学校. 仙台, 宮城. 東北大学復興記念教育研究未来館.

2023.09.07-09. 国内学会：電気学会A部門大会. 名古屋. 愛知工業大学.

2023.09.19-23. 国内学会：応用物理学会秋季学術講演会. 熊本. 熊本城ホール.

2023.10.14-16. 国際会議：SPIE/COS Photonics Asia. 北京, 中国.

2024.01.16-19. 国内学会：レーザー学会学術講演会年次大会. 東京.

2024.01.28-02.02. 国際会議：SPIE Photonics West. サンフランシスコ. アメリカ.

2024.02.xx. 卒論発表会.

2024.03.xx. 卒論提出.

2024.03.22-25. 国内学会：応用物理学会春季学術講演会. 東京. 東京都市大学世田谷キャンパス.

　　　　

【2022.04.-2023.03.】

2022.04.19-21. 国際会議：OPIC SLPC2022. 横浜. パシフィコ横浜. 博士課程のRahamanが発表しました.

2022.04.25-29. 国際会議：COLA. 松江. 島根. くにびきメッセ. 博士課程のRahamanが発表しました.

2022.09.20-15. 国内学会：電気学会A部門大会. 種子島. 鹿児島. 西之表市民会館. M2の柳井と吉村が発表しました.

2022.09.20-23. 国内学会：応用物理学会秋季学術講演会. 仙台. 宮城. 東北大学川内キャンパス. B4の大川と宮川が発表しました.

2022.10.01-02. レーザー夏の学校. 札幌. 北海道. 北海道大学. B4の大川と宮川が発表しました.

2022.11.14-18. M2の中間発表.

2022.12.26. 4年生の中間発表.

2023.01.18-20. 国内学会：レーザー学会学術講演会年次大会. 名古屋. 愛知. ウィンクあいち. B4の大川と宮川が発表しました.

2023.02.10. 修論提出.

2023.02.14-15. 修論発表会.

2023.02.20-21. 卒論発表会.

2023.03.03. 卒論提出.

2023.0315-18. 国内学会：応用物理学会春季学術講演会. 東京. 上智大学四谷キャンパス. B4の大川と宮川が発表しました.

2023.03.23. 卒業式・修了式.

　

国際会議のOPICとLPM，Photonics Asia，Photonics West，国内学会のレーザー学会と応用物理学会では，毎回，研究成果を発表しています．本研究室では，学生も国際会議や国内学会，研究会で発表しています．実験をし成果をまとめれば，何処へでも連れて行きます．発表状況は，研究室ブログの研究業績に記載しています．

【こちら】．

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山梨大学

University of Yamanashi

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学生・卒業生1

Students

2009年度から2022年度までに気体レーザーの研究を手伝ってくれた学生，

社会人ドクター1名．修士（修了生）16名．学部4年生（卒業生）32名．研究生2名．うち留学生3名，中国2名，マレーシア1名．

卒論発表・修論発表における表彰　【こちら】

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学生・卒業生2

Students

2009年度から2022年度までに気体レーザーの研究を手伝ってくれた学生，

社会人ドクター1名．修士（修了生）16名．学部4年生（卒業生）32名．研究生2名．うち留学生3名，中国2名，マレーシア1名．

卒論発表・修論発表における表彰　【こちら】

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