映画世界

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映画用語集
キーワード フレーミング
アングル、俯瞰撮影
カット、ショット、クローズアップ
カメラワーク、パン、ズーム、トラベリング
モンタージュ、ワンカット・ワンシーン、パラレル・アクション
句読法(切返し、フラッシュバック)

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1. フレーミング 、画面構成(Flaming/Cadrage)

映画が生まれた当初、カメラは固定されていたため、フレーミングには空間を画定する機能しかなかった。その後、フレームの映画的用法がいくつか開拓された。その最も重要な機能は暗示的な機能である。つまり、物語上の構成要素をフレーム内に必ずしも入れなくてもよいということがわかったのである。フレームはフレーム外の世界の存在も暗示する

そのとき、対象を見せないことによっていかに対象の付加価値を高めることができるかという問題が生じる。

情報遮断による最上級表現

『ローズマリーの赤ちゃん』(ポランスキー)のラストシーンは自分の生んだ赤ん坊を初めて見るミア・ファーローの顔のアップで終わるが、赤ん坊自体はカメラにとらえられない(赤ん坊を見るミア・ファーローの表情は恐怖から母性愛を示すそれに変わる).一般的に、最上級的な(”この世で最も美しい””非常におぞましい”)存在は言語表現では容易だが、物自体を映さなければならない映像表現では難しい.『めまい』(ヒッチコック)では、見事な変身を遂げたキム・ノヴァクの存在的完成度をいやがうえにも強調するのはそれを見つめる感極まった表情のジェイムズ・スチュアートの切り返しショットである.[A. バザンの用語では遠心的フレーミング(cadre 'centrifuge')]。また、「エレファントマン」では効果的な情報遅延とでもいうべき技法により、主人公の素顔はなかなか観客に示されない。その間、観客は”非常におぞましい”何かを想定するのだが、一度素顔が見せられるとそのおぞましさは相対化される。

ディテールによる象徴的表現

『戦艦ポチョムキン』では軍人の下半身のショットによりツァーの圧政を表現しているといわれている。

トリュフォー:「『見知らぬ乗客』の冒頭、別々のタクシーから降りておたがいに別々に歩いていくふたりの男の足を追っていくクローズアップがじつに印象的です。ついで走る列車からとらえられた前進移動で二方向の線路が交差するまでのカットがつづき、そして、ついにふたつの靴がぶつかりあうところで、この映画のふたりの主人公、ガイとブルーノが出会う、という発端...」『ヒッチコック映画術』p.195


2.アングル

  • 俯瞰撮影、ハイアングル
  • 仰角撮影、ローアングル、あおり(で撮る)

    ともに場合によっては心理的な意味を客体に与えることができる。例えば、俯瞰撮影は対象となる人物を卑小化する傾向がある。運命にあらがえず、虫けらのようにその餌食となる存在を描くにはこのアングルが向いている。反対に仰角撮影はあがめる視線であり、対象に優越性、勝利感を付与する。


    3.カット、ショット(モンタージュの単位)

    スクリーン上に何か(オブジェ)を見せる。それだけでもオブジェは含意的な意味(コノテーション)を持ってしまう。なぜなら、このオブジェについて画面は何かを語りたいのだ、と観客は判断するからだ。

    「<ピストルのワンショット>に対応することばは『ピストル』という単語ではなく、『ほらここにピストルがありますよ』とか『これはピストルですよ』といった文である。そこにはもの(オブジェ)を提示しながらそれ以上の何かを意味させようとする意図が読み取れる。」 J. Aumont /A.Bergala /M.Marie /M.Vernet, Esthetique du film , Nathan, 1983
    L.S. (long shot):ロング(ショット)、全景、フルショット[体全体 ]
    M.S. (medium shot):ミディアムショット[足まで]、
    T.S. (two shot):ウェストショット[尻まで]、
    バストショット[胸まで]、寄りのカット、アップショット
    C.U. (close up):クローズアップ[顔]、
    B.C.U. (big C.U.):クローズアップ[顔の一部、もの]
    (ショットの大きさを表すのに人間をモデルにするのはルネッサンスの
    人間中心主義の影響か?実際、遠近法はひとつの特権的な視線を前提と
    した考え方であった。)

    クローズ・アップはグリフィスが開発した説話的技法である。「映画本来の心理的・劇的な意味作用力がもっともよくあらわれるのがクローズ・アップである」(マルセル・マルタン) cf.ドライアー『ジャンヌ・ダルク』

    「ロングショットは人間を微小なシルエットに変えて、世界の中に置き直す。人間は事物の餌食であり、<客体>にすぎない。こうして悲観的な心理的トーン、否定的な雰囲気が生まれる。」(マルセル・マルタン)

    『サイコ』における私立探偵アーボガスト殺害シーンについて、ヒッチコックは次のようにのべている。「ある種の安心感、楽天的な人のよさみたいなものをただよわせながらという感じ[をだすため]、アーボガストが階段を昇ってくるところを、単純にワン・カットで撮ることにし、彼が階段の最後の段に足をかけたとたんに、キャメラを思い切って高い位 置にもっていくことにした。これにはふたつの理由がある。第一の理由は、この一瞬、出刃包丁をかざして私立探偵に襲いかかる母親を頭上から垂直に撮るためだ。というのも、もし、母親を背後から撮ったら、きっと顔を見せないためのわざとらしいやりかたにみえて、観客にうさんくさく思われるだろう。これを俯瞰でとれば、顔をかくすというような印象はあたえないだろうからね。キャメラを高みに持っていった第二の理由はーこれが主要な理由だがー階段の全景のロング・ショットと出刃包丁で切りつけられた瞬間の男の顔のクローズアップとのコントラストを強調するためだった。ちょうど音楽と同じようなものだ。俯瞰ショットは静かなバイオリンの奏でるメロディー、そして突然、クローズアップは管楽器を吹き鳴らす音、といったところだ。」『ヒッチコック映画術』、p.284


    4.カメラワーク

  • 固定画面 cf. La Passion de Jeanne d'Arc (C.T.ドライヤー)
  • パン(ニング)
  • Zoom:ズーム
  • トラベリング( Travelling )、移動撮影(前、後、横)

    Zoom:ズーム [西部劇におけるカメラワークのように]広大な平野と人間の関係を常に強調するためにはカメラワークを断片化すべきではない。風景を不動の全体として、その中を駆け回る男を描くにはパンやズームの方がよい。

    トラベリング( Travelling )、移動撮影(前、後、横)
    前進:「勝手にしやがれ」(ゴダール)
    後退:「ローラ」 (J. Demy), Lola Mont峻 (M.オフュルス)
    横:「ウィークエンド」 (ゴダール), 「地獄に堕ちた勇者ども」(ヴィスコンティ)
    Travelling subjectif : 「知りすぎた男」「サイコ」「鳥」
    →文学における「主観的トラベリング」の使用(「異邦人」[葬列、殺人の場面])
    Trajectoire ou pano-travelling/パノ・トラベリング(多くはクレーン撮影 )
    →19世紀小説の中にはクレーン撮影を先取りしたような描写が見られる
    (「ゴリオ爺さん」「居酒屋」の冒頭)

    「私は街を散策するのが好きだ。これもまたトラベリングである。私はよく自転車に乗って街を動き回る。」 Alains Resnais, Image et Son.

    「ある人物の動きを追う、ドラマの展開上不可欠なオブジェ・舞台装置・風景などを発見する。トラベリングはこうしたことを可能にする技法である。」Louis Daquin, Le cinema, notre metier.

    「俳優が動く以上、移動する主観的構図を考えたくなるのも当然のことだ。この場合、パンは俳優の頭の動きを示し、トラベリングは俳優の(徒歩による、乗物による、前進、後退、横、落下)移動をあらわす。この二つを合わせたパノ・トラベリングは俳優が移動しながら同時に頭を右または左に向けたり、地面 や空を見る仕草を示す。主観的トラベリングは最もよく用いられ、例には事欠かない。ある空間に人が入るという事態を<主観化>するために映画は数知れぬ ほどこの技法を使ってきた。驚嘆、恐怖あるいは嘔吐感をあらわにしたした俳優の顔が画面 にでる。続いて切り返しで、この感情を引き起こした空間(王宮、不吉な地下蔵、戦場)に前進撮影で入っていく。」 Julien Sormery, Le cinema pratique, n�43.

    『汚名』のパーティ・シーンにおけるクレーン撮影(「天井のシャンデリアのうえからキャメラがホールの全景をなめながらイングリッド・バーグマンの手ににぎられた鍵をクローズアップでとらえるまでのワン・カット」)についてヒッチコックは述べている。「わたしたちは台詞のかわりにキャメラの言語を使うことができる。『汚名』のあの移動撮影の場合は、要するにキャメラがこう言っているのと同じなんだよー『この邸でパーティーがひらかれている。だが、ここでは大きなドラマが起こっているのに、だれも気づいていない。そのドラマのカギは、この一個の小さな鍵なんだ』とね」『ヒッチコック映画術』p.104


    5.モンタージュ

    物語の統辞法を担うだけでなく、画面自体の表現力も高める

    「わたしは映画の数々の小さな断片しか撮らない。その無数の断片を組み合わせると一本の映画になるわけだが、その編集をみちんとできるのはわたしだけで、ほかの人間には絶対できないように撮るわけなんだよ。撮影中にわたしの頭のなかですっかり編集ができあがっているから、わたしの指示なしには勝手に編集することが不可能なんだ。」『ヒッチコック映画術』p.194

    ワンカット・ワンシーン

    『サイコ』のなかでアンソニー・パーキンスが母親を二階から地下室へ映すシーンについて
    ヒッチコック:「ここのところはどうしてもカットを割らずに、ワン・カットで撮りたいと思った。なぜなら、アンソニー・パーキンスが母親を抱きかかえて部屋から出てきたときに、急にカメラを上方へ持っていったりしたら、観客はとたんに、”おや、なぜだろう”と勘ぐるだろうからね。だから、わたしは、最初からキャメラを吊しておいて、アンソニー・パーキンスが階段を昇って母親の寝室に入っていってフレーム・アウトするまで追い、それから彼が母親を抱きかかえて寝室から出てくるまで、ノー・カットで待ち、その間もキャメラは上に昇り続けるようにし、ちょうど寝室のドアの真上にきたときに、ぐるりと回転させて、もう一度階段の下のほうをのぞかせるようにした。このキャメラの動きに観客が疑問を持つ余裕をあたえないために、寝室のなかからオフでアンソニー・パーキンスと母親の口喧嘩が聞こえてくるようにして、観客の気をそちのほうにそらすことにした。」『ヒッチコック映画術』、p.285


    パラレル・アクション、カット・バック

    ふたつ以上の別々のアクションを並列的にモンタージュして新しいアクションや時間、空間を生み出す手法:[例]金持ちと貧乏人、喜びと悲しみ

    『見知らぬ乗客』について トリュフォー:「この映画の最も注目すべき点のひとつは、サスペンスを盛り上げるために時間が巧妙に大胆に操作されていること、じつに見事に時間が拡張あるいは収縮されていることです。たとえば、テニスの試合のシーン。ファーリー・グレンジャーは一刻も早くこの試合に勝って、遊園地に向かうロバート・ウォーカーをつかまえなければならない。その死にものぐるいのあせり。それと平行して、ロバート・ウォーカーが途中で排水溝にファーリー・グレンジャーのイニシャルが刻まれたライターを落してしまったときの狼狽が描かれる。必死になってライターをひろい上げようとするロバート・ウォーカーのあせり。カット・バックで描かれるこのふたつのシーンに緊迫感をあたえるために、あなたは思いっきり時間を圧縮してみせるーまるでレモンをしぼるように。」『ヒッチコック映画術』p.196

    「単に二つのアクションが交替することによって観客を惹きつけるのではない。この技法がたぐいまれな強度を獲得しているのは、それら二つの系列が、最後には必ず一つに合流するという運動によってなのだ。[...]パラレル・アクションの技法とは、できごとを二つの系列に分離しつつ、それを究極的に融合させることで、映画の話法をより効果的に機能させるメカニズムにほかならない。」武田潔『映画そして鏡への誘惑』p.220

    映画で用いられる句読法
    Fade in:フェード・イン
    Fade out:フェード・アウト
    Dissolve:オーバーラップつなぎ(主にフラッシュバック)
    Surimpression:二重映し、二重焼き付け
    Decoupage/カット割り
    Cut:カットつなぎ
    Reverse:切返し(のカット)
    Flash:フラッシュ(カット)
    Flash Back, Flash forward:フラッシュバック、フラッシュフォワード
    I. (Insert/Split picture):カットイン,インサートカット


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