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Research 2000〜2001



■継続 アノニマス(無名の民衆がつくった)形態に学ぶ道空間の設計手法 -ふるさとの風景の特徴と価値-


 甲府盆地の典型的集落であり今なお現存する「近代以前に自然発生し長い歴史をかけて現在の姿を形成した伝統的農村集落」の道空間の形態的特徴を明らかにし、さらになぜそのような形態になったのか理由を明らかにして、あたりまえで価値の無いように考えられてきた「曲がりくねった道」の価値を考察することによって、伝統的なふるさとの風景の保全あるいは今後新たにつくる居住地の景観設計手法に新たな知見を与えることを目的とする研究です。


■継続 伝統的な道の使われ方に関する研究 - 伝統行事に注目して - 


日本の道空間は単に移動する場として利用されるのみならず、生活の場として様々な使われ方をしてきました。また人々はそのような道空間の利用を通じて居住地の様々な場所にいろいろな意味(場所霊:重要な場所、重要な道、忌避される場所、忌避される道・・)を見出してきました。場所霊を配慮した1つの道の使われ方の例として、小正月の道祖神祭りでの道の利用や、冠婚葬祭における行列など、があります。それは甲府盆地の多くの集落では今もなお継承され続けられています。歴史学や民族学の分野では伝統行事に関する多くの研究蓄積がありますが、地理的な場所と行動の関係は十分に明らかになっているとは言えません。このような「人々の心に継承されてきた場所の意味」を配慮した空間設計をするためには、使われ方の実態を空間と結びつけながら理解していく必要があります。この研究は伝統的な道の使われ方の実態を空間と結びつけながら明らかにして、人々が場所に見出した意味を解読し、そのような意味を大切にした空間設計手法を開発していこうとするものです。


■田舎暮らしの実態調査 - 中山間地域の活性化に関する研究 -


現在、世界屈指のGNPを得るまでに成長した日本ですが、それは高度成長期に地方(農村)から都市への人口移動(産業移動)によって実現したとも言えます。しかしその一方で都会の人間疎外的なあるいは非自然的な環境による人々の生活の疲弊や、地方の人口減少と老齢化による過疎問題が起こりました。都会の人々が自然の中でリフレッシュするために地方に別荘を建てたり、旅行をしたりという行動は旧来から見られましたが、最近の新たな動きとして生活の基盤を都会から田舎へ移すいわゆる田舎暮らしを求める人々が増えつつあります。この動きは過疎問題を解決させ、人々の生活をより豊かにさせるきっかけになるかもしれません。この動きの実態はまだよく分かっていません。この研究はまず田舎暮らしの実態を明らかにして、そこに潜む問題や地域活性化に結びつくような新たな芽を発見しようとするものです。

■新規 場所性を配慮した住宅地開発手法


住宅地開発では、宅地の効率的配置が優先され、その地域の自然・歴史・文化が染み着いた場所の特徴は殆ど配慮されません。そのため、全国どこへ行っても同じ町並みがつくられ、その町はその地域が持っていた歴史と断絶した存在となってしまいました。この研究は住宅地開発手法の1つである区画整理を事例として、経済効率性を重視しながらも、いかにしてその地域のもともと持っていた場所性を配慮した設計が可能かを検討するものです。

■継続 公共バスの活性化に関する研究 - 過疎バスの実態調査 - 


地方都市は自家用自動車の普及(モータリゼーション)によって都市構造が大きく変化し、公共交通機関の運営がもはや成り立たなくなりつつあります。一方でモータリゼーションは食料供給地である農地を浸食する都市の無秩序な拡大、環境への悪影響、子どもや老人など交通弱者の人々の不便増加、交通事故の危険増大、などさまざまな弊害を伴っています。今後、人口増加の停滞・老齢化・エネルギーの枯渇などを考えると、私たちは公共交通の良さを見直し公共交通の運営が成り立つような環境をつくる努力を今からはじめる必要があります。昨年度は甲府市街地において通勤に利用できるバスが十分ある地域において「それにもかかわらず何故バスを利用しないのか?」ということを調査によって明らかにしました。本年度はバスが廃止され困っている過疎地域において市町村や官民共同によるバス運営の努力の実態を調べ、何が成功に導き、何が失敗を招いたのかを明らかすることをテーマとしました。

■継続 区画整理に伴う都市公園の計画設計に関する研究 - 地域の自然や歴史と連続した公園、利用される公園にするためには - 


新たな住宅地を開発したとき、その住宅地に住む人々のために開発面積の3%の面積の公園をつくることが法律によって義務づけられています。ところが公園をつくったけれど利用されない、どこでも同じ様な公園がつくられその地域の自然や歴史と関係しない、と言った問題が多く見られます。この研究はいかにしたら地域の自然や歴史と連続し、かつ人々に利用される公園をつくることができるかという問題を検討するものです。

■継続 中国四川省成都の府南河整備事業にみる意思決定システムの研究 - 合理的かつ実現可能な計画システムのあり方 - 



■やすらぎの場の計画・設計に関する研究


都市計画では地域を用途に応じて分類し、均一で効率的な土地利用にすることを目標にしてきました。つまり、住むところ、働くところ、遊ぶところ、を分離する操作をしてきたわけです。たとえば自然に親しむ場・遊ぶ場は「公園」に指定されたわけです。しかし本来、都市(地域)はそのような単純なものではなく、様々な空間が複雑に入り交じって豊かで意味のある空間を形成してきました。そして私たちが思う大事な場所・好きな場所・やすらぐ場所も地域の様々な場所にちりばめられています。この研究は「やすらぎ」という感情に注目し、その実態を明らかにして、「やすらぎの場所」を地域の中につくっていく方法を検討しようというものです。昨年までいくつかの地域で「やすらぎの行動の実態」「その場所の定性的な特徴」を明らかにしてきました。人々が指摘した「やすらぎの場所」の空間的特徴を定量的に調べて、安らぎの場所に潜む空間規定原理を抽出することが課題として残されています。

■そのほか
▼スプロール地区の細街路の形態と形成過程 - スプロール(無秩序開発)による空間形態の問題点・成因と効果的な開発誘導の模索 -
▼地区計画による景観誘導の実態とその問題点および改善点の提案
▼地域の開発と保護のバランスの意思決定を支援する計量的研究
▼道空間の様態が親密感・なわばり意識・共空間化作法・交流に与える影響 - 空間形態が共同の意識に影響を与えることはできるか - 
▼中心市街地活性化に関する研究 - 都市の魅力とは何か -  




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June 1, 2000