Research 2002






2002年度 卒業論文

「伝統的密集市街地の道路空間の特徴」(片岡 健一 )


一般的な密集市街地の定義は「道路網が未整備でかつ低質建築物が高密度に建ち並んでいることにより、防災上、特に市街地大火に対して脆弱な市街地」である。しかし、京都や金沢のような、いわゆる古都と呼ばれる中世の都や城下町の面影を残した街並みや、歴史の深い漁村なども定義から考えれば密集市街地であるにも関わらず、多くの人々に親しまれ日本の文化として保存の対象となっている場所もある。また歴史のある地方小都市ではその後の開発によって町並みは変化したが、土台には過去の町並、敷地割りを持ち、地域性を持って密集した密集市街地も存在する。
密集市街地の道路空間は改善すべき必要はあるが、一方で、区画整理などによってその良さが失われ画一的な街並みになる例も少なくなく、歴史と連続した道路空間整備のあり方を考える必要がある。また京都の伝建地区のように文化財級の建築物が街並みを形成している道路ではその保全の意義が認められるが、近世あるいはそれ以前の基盤を持ちながらも近代になって建物・敷地が改変・細分化してしまっているような地方小都市に多く見られるごくふつうの密集市街地ではその価値はあまり認められていない現状にある。しかしそのような道路空間にも価値を見出しその歴史と連続した形態を生かしながら街並みに磨きをかけていくことが望まれる。
密集市街地に関する研究は、
・京都や佃・月島などの定評のある路地をもつ密集市街地の「表出」や「ファサード」などの部分的要素
・京都の路地の形成プロセス
・農地の密集プロセス
などは明らかにされているが、密集市街地の道路空間を基盤的視点から捉えた研究はなく、また地方小都市を対象にした研究も少ない。

以上の問題意識から、本研究は、密集市街地の道路空間の特徴とは何かを明らかすることがまず必要であると考え、
・「密集市街地の類型化」、
・「道路空間を捉えるための指標の提示」を方法として、
・「従来漠然と言われている密集市街地の道路空間の特徴を明らかにすること」
を目的とする。さらに以上の知見に基づいて近代の変質を受けた地方小都市(山梨県市川大門町)の道路空間改善の操作方法について提案を試みた。


「八ヶ岳南麓地域における農村集落の景観保全に関する考察」(河辺 淳一)



現在、八ヶ岳南麓地域には都会からの移住者が増えているが、その開発を誤ると美しい農村集落の風景が失われることになる。そこで適正な開発を行うためのガイドラインが必要となりそのためには美しい農村集落の原風景がどのようなものかということを明らかにする必要がある。本研究はそれを集落の境界空間の特性に注目し考察した。

「高原リゾート地における近年の宅地化の特徴に関する研究−八ヶ岳南麓長坂町の事例ー」(土子 裕)

 近年、八ヶ岳南麓の農村地域に近年、ブームとなっている田舎暮らし者等をはじめとする様々な移住者の宅地化が進んでいる。その為に農村の住民は農村独自の雰囲気・空間が破壊されるといった乱開発が行われるのではないかと不安を抱えている。 しかし、乱開発が行われるといってもどのような開発なのか、また実際に農村において新たな宅地化がどこに、どのように建っているのか全く実態が分かっていない。その為に本論では近年の住宅の宅地化の現状を調査、分析し、その現状の景観的特徴を明らかにすることを目的とし、その為の指標として立地と建築景観の2つの指標を元に宅地化の景観的特徴を明らかにし、またその現状を踏まえた上で農村にふさわしい宅地化とはどのようなものなのかを考察することを目的とする。



「傾斜地に立地する自然発生的農村集落における道の形態に関する研究」(中川 和憲 )



本研究は従来の区画整理された街なみの単調さなどに何らかの示唆を与えようという観点から、山梨県甲府盆地の傾斜地に立地する自然発生的農村集落のアノニマスな景観に注目しその特性を明らかにする。また、平坦地の道空間に関してはすでに検討を終了しており、それと傾斜地の道空間を比較し伝統的集落における道の関係を明確にした研究である。


 2002年度 修士論文テーマ

「田舎暮らしの人々が地域に及ぼす影響について」(金丸清文(花岡研究室))








2002年度 卒業論文参考題目

 1.伝統的な道空間の形態とその魅力に関する研究
 2.農村集落の活性化と新しいコミュニティー形成に関する研究
 3.防災を契機とした住民主導型まちづくりプロセスの研究
 4.快適な屋外空間の計画に関する研究
 5.地方都市圏の土地利用変遷および土地利用コントロールに関する研究
 
 


2003.3.15