Research 2010






2010年度 修士論文


「甲府盆地における流域管理を考慮した土地利用の研究」(鈴木慎二)


  洪水被害を低減するためにダムや堤防等による治水だけではなく土地利用計画による都市開発のコントロールが望まれている。これを検討するため、現在わが国で利用できる情報は大河川の特定箇所の破堤を想定し最大浸水深で示される洪水ハザードマップであるが、下流の市町村は一律に浸水深が大きくなる、破堤箇所や降水量の設定によって結果が変化する、内水氾濫は評価されていない、など土地利用計画の根拠とするには精度が粗い問題点がある。古くから人々は低地に集落を構える場合、微高地や洪水時の流路や遊水地など水を避ける場所や集まりやすい場所を読み取りできるだけ安全な場所を選んできた。本研究はその考えに学び、微地形レベルで浸水危険性を評価する方法を提案したものである。計画への適用性を考え、容易に入手可能な情報を用いた方法とした。
 甲府盆地において5mメッシュ数値地図情報とGISを用い、水の集まりやすさを表現した集水マップを作成する方法を提示した。既往のハザードマップとは異なる結果を得られた。さらに甲府盆地において水害の危険度の高い中央市をケーススタディとして本研究の提示指標に基づいた土地利用を検討した。ハザードマップの最大浸水深と合わせて評価することで、浸水危険地区と開発誘導地区を特定することができた。また都市開発を誘導している用途区域内にも危険地区が一部存在すること、開発を抑制している市街化調整区域にも比較的安全な地区が一部存在することを示し、今後の土地利用方策を考察した。
 
 


2010年度 卒業論文

「住民まちづくり活動の実態と意識に関する研究ー笛吹市の都市計画策定に係わった住民を対象としてー」(斉藤史浩)

 計画の策定においては、ワークショップ(以下「WS」)によって住民主体あるいは住民行政協働のまちづくり(以下「まちづくり活動」)に弾みをつけ、計画の実行に向けて住民による主体的な活動に期待するなど、まちづくり活動の展開が重視されるようになった。しかし、公募等によってWSに参加した人たちはどのようなまちづくり活動を行っているのか、あるいは、WSによる計画策定が終了した後のまちづくり活動は展開したのか(する可能性があるのか)、その実態は把握されていない。そこで、WSによる計画策定に関わった住民のまちづくり活動の実態および課題を明らかにし、WSへの参加の効果や計画策定後のまちづくり活動の活性化への課題を検討した。


「子どもの遊び環境に関する研究ー羽黒放課後児童クラブ・子ども教室を対象としてー」(沼尾貴典)

 近年、放課後に屋外で遊ぶ子どもの姿を見なくなった。放課後の新たな子どもの遊び環境として放課後児童クラブおよび子ども教室が注目されている。そこで本研究は甲府市内にあるこれらの施設の現状とそこに通う子ども達の遊びの現状や意識を把握し、今後の子どもの遊び環境のあり方を考察する。


「地域のブランド化を目指すソフトツーリズムに関する研究ーワインツーリズム山梨を対象としてー」(藤野祐弥)

 元気のない地域を活性化しようと様々な取り組みがなされている。本研究は観光の視点で,住民が主体となって地域活性化への取り組みをしているワインツーリズム山梨に注目し、この活動が地域にもたらす効果を検討した。通常の観光よりも1人あたりの消費金額が高い、宿泊・飲食・土産等への消費に波及している、など経済効果が示されたが、参加者(観光客・運営側の参加者の両方)の本地域への魅力の向上や愛着の発見がみられ、住民と観光客のふれあいや観光客同士のつながりが生まれている効果がみられた。地域に対する誇りの回復や,地域資源を活かすこのような活動へのモチベーションが高まるなど、さらなる効果につながることが期待できる。