大画面ディスプレイにおける視聴者の視線情報と腹話術効果の関係

概要

FPD (Flat Panel Display)技術の進歩に伴うテレビ画面の大型化により,映像と音像の乖離が懸念されてきている. これまでにもテレビ視聴時における腹話術効果の研究がなされてきた.しかし,先行研究の実験条件と実際のテレビ視聴環境には少なからず差異がある. さらには,視聴者の視線情報を測定して解析することが,信頼性の高い視聴覚クロスモダリティの解析のためには有効であると考える.

そこで,実際の視聴環境での音響再生系が腹話術効果にどのような影響を及ぼすのかについて検討を行った. さらに,腹話術効果の錯覚下における音像定位位置と視線の位置との関係,そして注視の程度と音像定位位置のばらつきとの関係を明らかにすることとした.

大型液晶テレビの実機を用いて鉛直方向の腹話術効果について検討を行った結果,画面より下側に設置されたディスプレイ付属スピーカ系やラックシステムスピーカ系により音を提示した場合には,腹話術効果だけで画面上方に音像を定位させることは困難であることが示された. また,腹話術効果の錯覚下における音像定位位置と視線情報の関係性について検討を行った結果,映像のみを注視しない限り,腹話術効果は殆ど期待できないことが示唆された.

       
音像定位実験の結果.
(左:鉛直方向における腹話術効果が及ぼす音像定位位置の影響,右:音像定位位置と視線の軌跡との関係)

キーワード

腹話術効果,音像定位,視線情報,スピーカ,音圧パニング

代表的な論文 / 口頭発表

  1. 佐藤 純生, 福江 一智, 木下 雄一朗, 小澤 賢司, "鉛直方向の腹話術効果に及ぼす音響再生系の影響," 映像情報メディア学会誌, Vol. 63, No. 1, pp. 110-113, 2009年1月.
  2. 福江 一智,佐藤 純生,木下 雄一朗,小澤 賢司, "大画面ディスプレイにおける鉛直方向の腹話術効果に関する考察," 第71回情報処理学会全国大会講演論文集, No. 3Q-7 (2 pages), 滋賀・草津, 2009年3月.
  3. 佐藤 純生, 福江 一智, 木下 雄一朗, 小澤 賢司, "腹話術効果の錯覚下における音像定位位置と視線情報の関係に対する一検討," 日本音響学会2009年秋季研究発表会講演論文集, pp. 577-578, 福島・郡山, 2009年9月.
  4. J. Sato, K. Fukue, Y. kinoshita, K. Ozawa, "Relationship between gaze direction and sound localization in ventriloquism effect," Acoust. Sci. & Tech., Vol. 32, No. 1, pp. 40-42, Jan. 2011.