実績

提案技術の技術的優位性

 農作物中の害虫を非破壊で検出する技術に関しては、穀物では、近赤外装置、および、軟X線装置、リンゴ果実において近赤外装置、小型磁気共鳴イメージング装置(MRI)を利用した報告がある。
 近赤外光の吸収を基にしたシステムでは被害果の90%以上を非破壊的に検出できるとの報告
[1][2]であるが、同時に40%の確率で健全果を被害果として認識する問題点が報告されている。
 磁場強度1テスラ(T) の永久磁石を備えた小型MRI装置を使用して被害果の観察を行い、体長1.5~2.0㎜程度のモモシンクイガが食害した果肉の細い孔隙と幼虫を捉えることに成功した[3]が、実験装置の制約から対象はリンゴ幼果(径30㎜)であり、撮影時間は、三次元スピンエコー法で15時間、グラディエントエコー法で2時間を要した。
 別のシステム[4]では、撮影視野(径110㎜)を広げたため、0.2テスラのMRI 装置を使用して処理を行い、撮影時間は三次元スピンエコー法で82分、グラディエントエコー法では27分を要した。
 従来技術の問題点は、処理時間が非常に長いことが第一に挙げられる。台湾向け輸出モモは、全数検査を行う必要があるため、従来技術では、まったく対応することが出来ない。さらに、健全果を被害果として誤認識する確率が非常に高い。これでは、台湾向け輸出のコストの上積み可能なメリットがなくなり、農家は輸出を行わなくなる。

 これらの従来技術の問題点を解決するために本提案システムの技術がある。技術的優位性は検証済みである。

[1]豊島真吾,田邊哲也,竹上喜伸,水野俊博,高梨祐明,井原史雄,“ダブルセンサー近赤外装置のモモシンクイガ加害リンゴの検出精度”,果樹研究所研究報告 第7号,pp.13-20,2008

[2]豊島真吾,中元陽一,高梨祐明,増田哲男,“近赤外線分光法を利用したモモシンクイガに加害されたリンゴの識別の試み”,果樹研究所研究報告 第5号,pp.87-94,2006

[3]井原史雄,栁沼勝彦,石田信昭,小泉美香,“小型磁気共鳴イメージング装置(MRI)によるリンゴ幼果に食入したモモシンクイガ幼虫の検出”,日本応用動物昆虫学会誌, Vol.52, No.3,pp.123-128,2008

[4]拝師智之,小泉博,新井朋徳,小泉美香,狩野広美,“0.2T 小型磁気共鳴イメージング装置(MRI) によるリンゴ果実におけるモモシンクイガ食入害の観測”,日本生体学会誌,Vol.59,pp249-257, 2009

1.X線を利用する画像認識技術

 小谷教授が科学技術振興機構 JST A-STEP 平成23年度第2回で支援を受け、技術を確立済みであり、「X線透過画像による芯食い虫のモモ被害果検出システムの開発」、精密工学会画像応用技術専門委員会、Vol.27(2012),No.3 P.9-15招待講演で報告済みである。


2.並列高速画像処理技術

 小谷教授が「X線透過画像による芯食い虫のモモ被害果検出システムの開発」、解説、精密工学会誌、Vol.79(2013),No.11 p.995-998,査読ありで報告済みである。


3.柔軟物のハンドリング技術

 寺田教授が特許2本を既に提出済みである (特願2013-013019、特願2013-028884)。