グラフィカルアブストラクトの疑問④|山梨大学研究推進・社会連携機構

グラフィカルアブストラクトの疑問④

 プロンプトは英文と和文、どちらでもよいのか?

研究・教育・ビジネス、趣味のイラスト、個人のSNS投稿など…
画像生成AIは様々な場面で広く使われるようになってきました。

しかし、使い慣れてくるとふと気になるのが、

プロンプトって日本語でも通じるの?
やっぱり英語の方が正確に伝わるの?

そんな風に思ったことはありませんか?
論文のグラフィカルアブストラクトなど専門的な場面だけでなく、日常的な画像生成でも気になりますよね。実際に「英語」と「日本語」で同じ内容を指示した場合、どんな違いが出るのか、
画像を並べて検証してみましょう。

 明確な言語の差は見えず

H. Nakagomi, et al., “3D scan matching for mobile robot localization over rough terrain,” Electrical Engineering in Japan 209, 14–25 (2019). (2025.02実施) H. Huang, et al., “Decoding aging clocks: New insights from metabolomics,” Cell Metabolism 37, 34–58 (2025). 
(2025.02実施)

これは、ある論文のAbstractをもとに作成したグラフィカルアブストラクトです。

まず、論文のAbstractを画像生成AIに読み込ませ、約20単語に要約しました。
生成指示とそれに続く要約文を、英語と日本語でそれぞれの組み合わせで用意し(※要約文はAIによる自動生成)、画像生成AIに入力してグラフィカルアブストラクトを作成しました。

どちらが英語のプロンプト、どちらが日本語のプロンプトによるものでしょうか。

 

 

左側の図は「荒地でのロボット位置推定技術」に関する論文をもとに作成したものです。
(左が英語プロンプト、右が日本語プロンプト)
どちらの画像も「荒地」「ロボット」というキーワードを的確に捉えており、一発で生成されたグラフィカルアブストラクトとしては十分に実用的な仕上がりになっています。

一方、右側の図は「代謝物から老化の進行度を図る老化時計の研究」に関する論文をもとに作成したものです。(左が英語プロンプト、右が日本語プロンプト)
老化時計」というキーワードが要約文に含まれていたため、時計や高齢者をモチーフとした画像が生成されました。

このように、グラフィカルアブストラクトとしての完成度はあくまで一例ですが、これら2つの事例を見る限り、英語と日本語のプロンプトの間に大きな違いは見られません。
他のテーマや条件で試せば違いが出てくる可能性もありますが、少なくとも論文要約をもとにしたこのケースにおいては、言語の差は限定的であるように感じられます。

 言語対応の進化

画像生成AIの精度が向上した現在では、「散歩する犬」といった日常的な日本語の指示でも、違和感のない画像が生成されるようになっています。専門的な内容だけでなく、こうした日常的な場面においても、英語と日本語のプロンプトに大きな差は見られなくなってきました。

画像生成AIが登場した当初は、学習データの偏りから英語のプロンプトのほうが効果的とされていました。しかし、AIの技術は日々進化しており、英語以外の言語に関する学習データも増えてきたことで、言語による差は徐々に小さくなりつつあります。
一方で、細かな言葉のニュアンスや専門用語については、翻訳せずに元の言葉で入力したほうがAIに意図がより正確に伝わりやすい場合もあります。
とはいえ、日常的な指示や一般的な内容であれば、そうした細かい違いを気にする必要はほとんどないと言えるでしょう。

散歩する犬を描いて(2025.08実施) Create an image dog walking (2025.08実施)