【一般書】小松左京による作品について

前回の投稿に続き,この冬休みの期間中に読むことのできたSF小説の中で,特に小松左京氏によるものについてです.

小松左京は日本を代表するとされているSF作家の1人で,最近に映画化された「日本沈没」といった作品が有名です.

 

私は今回,「果しなき流れの果に」という長編と,「神への長い道」という中編の2作を読みました.

どちらも宇宙や生命の存在する意義という非常に壮大なテーマを扱った作品で,人よりも高次の存在と,人がそうした存在に近づくためにより高い知性を持とうとする過程が描かれます.特に後者の中編は構成や発想が非常に洗練されており,テーマ性の観点では一つの極致であるように感じました.

 

非常に壮大なテーマを扱う2編ですが,作品の根底には自然や人の平凡な営みに対する肯定的なまなざしがあります.

高い存在になろうとする努力を認めつつ,(今の私たちを含む)人の日常的な生活に価値を見出す点はニーチェ哲学のようでもあり,小松左京の優しさと価値観が表れているように思います.

2020年01月15日