植物に対する環境ストレス植物は土壌、気象条件、大気汚染物質など様々な環境の影響を受けており、ときには、それらが農作物や樹木の成長などに悪い影響(= 環境ストレス)を及ぼしています。 |
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環境ストレスの何が問題なのか?農作物の品質や収量が低下すれば、我々の食生活が成り立たなくなりますし、農家さんの収入が減ってしまいます。 また、「樹木の成長低下 = 光合成によるCO2吸収固定量の減少」なので、樹木の温暖化防止効果がそれほど期待できなくなります。 |
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私の研究のQuestion1. 環境ストレスは、植物に対してどのような影響を、どれくらいもたらすのか?(リスク評価)2. 植物や人間の生活を守るために、我々はどのような対策をすればよいのか?(対策の検討) |
1. 環境ストレス負荷実験植物に環境ストレス(ex. 高温, 乾燥, オゾン曝露など)を実験的に与えて、光合成、葉内成分および成長などに対する環境ストレスの影響やその生理メカニズムについて調べています。2. 影響評価モデル開発1の実験データをもとに、環境要因と成長などの関係をモデル化します。※ モデル化:植物の生理反応や応答を数式化すること。 3. 影響評価・対策シミュレーション2のモデルをもとに、水田や畑で栽培されている農作物や森林の樹木などに対する環境ストレスの影響ならびに対策の効果をシミュレートしています。 |
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オゾンの植物影響そもそもオゾンというと成層圏のオゾンが有名ですが、実は地表付近にも存在しています。化石燃料の使用によって排出されるNOxなどから生成されます。オゾンは紫外線をカットしてくれる良いもの、というイメージがあるかもしれませんが、それ自体は酸化力が高いので、地表面に存在すると人間や植物に悪い影響を及ぼすのです。 |
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研究例 ・気孔からのオゾンの吸収量推定モデルの開発(Kinose et al., 2014) ・オゾンと土壌養分が上位葉と下位葉の光合成や成長に与える複合影響(Kinose et al., 2017a and b) ・成長に対するオゾンの影響評価モデルの開発(Kinose et al., 2020a) ・森林樹木のCO2吸収に対するオゾンの影響と対策の効果のシミュレーション(Kinose et al., 2020b) |
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気温上昇の植物影響化石燃料の使用によって大気中に放出されているCO2が主要な温室効果ガスであり、近年温暖化が進行しています。また、都市化に伴うヒートアイランド現象も気温上昇の原因です。もともと気温が低い地域では、むしろ気温の上昇により植物の成長が良くなることもありますが、一般に既に暑い地域では気温上昇が植物の成長などに悪い影響を及ぼします。 |
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研究例 ・インドネシアのイネに対する気候変動の影響シミュレーション(Kinose and Masutomi, 2019; Kinose et al., 2020) ・高温による日本のイネの白未熟粒の発生と対策の効果のシミュレーション(Kinose and Seita, 2022) |
研究をやっている中で、生物応答の法則性が見い出せたとき、生物現象が数式で理解できたとき、将来の成長予測の結果などが出てきたときは本当に感動します。また、政策に結びつくこともある非常にやりがいのある研究です。これまでは「環境 → 植物」の影響を見ていましたが、最近は「植物 → 環境」の逆方向の影響の研究のほか、光合成や品質の分析装置の開発にも関わっています。興味はいろいろと尽きません。 世の中の役に立てるよう、一緒に研究に取り組んでくれる学生を募集しています! |
● 2022年度〜2024年度 科学研究費補助金 若手研究(研究代表者)
森林のCO2吸収量に対するオゾンの影響評価 -夜間のオゾン吸収とその影響-
● 2022年度〜2024年度 科学研究費補助金 基盤研究(B)(研究分担者)
異なる観測手法の組合せによる森林のオゾン吸収量推定プロセスモデルの構築
● 2020年度〜2023年度 科学研究費補助金 国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))(研究分担者)
塩生植物-微生物共生系を用いた高機能なファイトレメディエーションの創出
● 2021年度 学内研究費 萌芽的融合研究プロジェクト(研究代表者)
シャインマスカットの収穫期判定法の開発 −レーザー誘起蛍光法による果皮色の定量−
● 2019年度〜2021年度 科学研究費補助金 若手研究(研究代表者)
農作物の収量に対するオゾンの影響評価 -植物成長モデルを用いた新規手法-
● 2019年度〜2021年度 JST SICORP(研究分担者)
都市生態へのオゾン汚染の影響:モニタリング、評価そして緩和