対話型インターフェースを備えたEXAFS解析ソフトウェア

阪根 英人

EXAFS (広域X線吸収微細構造) による局所構造解析は、原理的には試料を選ばないため非常に多くの分野で用いられるようになってきている。その測定は現在では一般的には放射光施設を共同利用で使用して行われており、担当者によってよく整備されたビームラインを使用できれば、試料にもよるがX線吸収スペクトル自体を測定することは困難でないことが多い。しかし、EXAFSの解析には多種の数値計算を含む解析が必要である。かつては解析には各研究グループが独自に作成したプログラムが用いられていたが、現在では http://ixs.csrri.iit.edu:80/catalog/XAFS_Programs にあげられているような、市販、シェアウェア、あるいはフリーで公開された解析ソフトウェアが使われることが増えてきた。今回は、EXAFSの応用が始まった初期から大阪大学理学部分析化学講座において松林信行氏 (現物質研) によって作成されたものに数々の変更を加えて (ソースコードにはもはや形跡がほとんどない) できた、パーソナルコンピュータ MS-DOS版EXAFS解析ソフトウェア、Xanadu を紹介する。

Xanaduの操作上の特徴は右に示したように、画面上で対話的に条件設定を行いながら解析を進めることであろう。そのため、現在の条件、設定しなければならない項目、設定できない条件、などが即座に判断できるので、いろいろな条件を検討しながら解析を進めることがかなり容易になる。さらに右のような文字ベースの画面だけでなく、下に示したようなグラフィックスが随時表示され、データの範囲指定などはグラフィック画面上に表示される (下図には示していない) カーソルを操作することにより、わかりやすく判断して設定することができる。解析結果も画面上やプリンタにグラフィックスとして表示されるので、その良否をすぐに判断することができる。説明書も用意されており、ソースコードとともに希望者に配布している。

MS-DOS版は、もはや少数派となりつつあるNEC PC-9801とその互換機上でしか動作しない。DOS/V登場以後、IBM PC互換機上で動作するバージョンが求められたこともいく度かあったが、主にグラフィックス表示まわりの仕様が異なること、開発環境を新たに用意する必要があったこと、などの理由により作成されることがなかった。そうこうしているうちに、パーソナルコンピュータで使われる基本ソフトの多くがMicrosoft Windowsとなり、大きな画面を使用できるWindows環境上で解析することがし好されるようになった。また、Windowsを基本プラットフォームとすることにより、容易に大容量のメモリを使用できるようになり、また当然ながら、上述のIBM PC互換機上でも動作するようになる。それらのことから、今開発を続けているのはほとんどWindows版についてであり、Microsoft Visual Basicを使用して記述している。フーリエ変換までのDOS版の機能は、印刷を除きすでにほぼ実装済みである。フーリエ変換まではWindows 3.1環境で実行することも考慮して作成しているので、Windows 3.1/95(Service pack 1以降)/NT 4.0(Service pack 2 以降) (98は未確認) のいずれの環境でも、それぞれに合った実行ファイルを使って解析することができる。下にWindows 95上で解析している時の画面の一例を示す。Windowsの持つマルチウィンドウ機能を利用していくつかの解析段階の画面を同時に表示することが可能であり、また大容量メモリを有効に活用したスムージングなど、新しく改良点が加えられている。Windows版については今後も大きな変更を加える予定であるので現在の所は一般には公開されておらず、DOS版の使用になれた少数の試用者によりテストが行われている。


日本分析化学会第47回年会附設「Laboratory-made software 発表交流会」, Gifu (1998. 10).

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