覚醒ネコ第一次聴覚野における持続性細胞の機能モデルに関する基礎的研究

概要

健聴者の大脳皮質第一次聴覚野(A1: primary auditory cortex)において観測される神経発火を模擬した電気刺激を直接入力する聴覚BMI(Brain-Machine Interface)が実現されれば、聴神経以降の聴覚中枢系における障害に対する有効な補償技術となる. A1において観測される神経発火には,音の急峻な時間包絡の変化に対して感度を持つ一過性の発火応答と,音の定常部分の音圧レベルに対して感度を持つ持続性の発火応答が観測される. 前者の応答を示す細胞を一過性細胞,後者の細胞を持続性細胞と呼ぶ. 前者の一過性細胞は先行研究によって模擬が行われた.本研究では先行研究により構築された聴覚機能モデルを用い,この後者の持続性細胞の模擬を行うこととした.

持続性細胞の発火頻度―強度関数は,音の定常部分の音圧に対して非単調に増加する特徴を持つ.これは,音圧レベルの上昇による周辺抑制野の広がりに起因するものと考えた. そこで,聴覚機能モデルのA1モデルに対する抑制性入力を音圧レベルの上昇に伴い増加させることで周辺抑制野の広がりを模した. その結果,持続性細胞応答の音圧に対する非単調増加性が可能な聴覚機能モデルを構築することができた.

生理学データ 聴覚機能モデルの出力 
持続性細胞の応答(左: 生理学データ, 右: 聴覚モデルの出力)

生理学データ(発火頻度関数) 聴覚機能モデルの出力(発火頻度関数)
発火頻度―強度関数(左: 生理学データ, 右: 聴覚モデルの出力)

キーワード

聴覚,音声,聴覚モデル,第一次聴覚野,覚醒ネコ,聴覚BMI

代表的な論文 / 口頭発表

  1. 合田哲也,小澤賢司,木下雄一朗,佐藤悠,地本宗平,“覚醒ネコ第一次聴覚野における持続性細胞の機能モデルに関する基礎的研究,” 日本音響学会2009年秋季研究発表会講演論文集,pp. 551-552 (2009).