研究内容

ユビキタスナノ材料創成研究室とは

現在、社会に流通している優れた材料群には、希少な元素や毒性の高い物質が含まれることが多く、 資源の枯渇や環境汚染といった問題が徐々に表面化しています。一方、ユビキタス材料と称される材料群は、 一般に身の回りに豊富に存在する“ありふれた”原材料のことを指します。従ってユビキタス材料で既存の材料を代替できればよいのですが、 多くの場合ユビキタス材料単体では必要な性能を満足できません。しかし、材料の性能はそのサイズ、形状、配列などに強く依存することが多く、 材料の特殊な表面形状、或いは複数の材料が作る特殊な表界面を積極的に利用することで、時に材料が元来持つ何倍もの性能を引き出すことができます。 本研究室で取り扱う「ユビキタスナノ材料」は、ユビキタス材料を原料に、ナノ~マクロスケールにおいて構造制御を施すことで、 優れた機能や性質を付加したナノ材料です。ユビキタスナノ材料創成研究室ではセラミックス材料及びその複合材料に着目し、 微細構造制御、表界面制御、分域構造制御など様々な階層において使用目的に合わせたデザインをおこなうことで、これまでにない優れた複合誘電材料、 圧電材料、光学材料などを開発するべく研究をおこなっています。

セラミックキャパシタの大容量化に向けたナノ構造設計

現在、本研究室ではセラミックキャパシタの蓄電デバイスへの応用に取り組んでいます。 セラミックキャパシタはリチウムイオン電池等の「化学電池」とは異なり、充放電に化学反応を介さないため、 出力密度に優れるという利点があります。しかし、エネルギー密度が低い、すなわち一度に多くのエネルギーを 蓄積できないという問題点があります。そこでセラミックキャパシタの静電容量を飛躍的に増加させることで、 高い出力密度・エネルギー密度を併せ持つ蓄電デバイスの開発を試みています。
図に示すように、 キャパシタ間の誘電体層に微小金属粒子を分散させると、金属粒子間に微小なキャパシタが形成され、 静電容量が増大することが知られています。
高温を必要とする従来の固相法により、こうした金属/誘電体セラミックス複合キャパシタを作製しようとすると、 数種類の貴金属もしくはそれらの合金を除き金属粒子の酸化が問題となります。そこで本研究室では、 200oC程度以下の温度条件で、金属/誘電体セラミックス複合成形体を作製することができるプロセスを開発し、 この材料のキャパシタ応用を試みています。

化学溶液から合成する均一なナノ粒子・複合ナノ粒子

本研究室では電子材料、光学材料への利用を目的として、化学溶液プロセスを用いて機能性ナノ粒子、 あるいは複合ナノ粒子の合成に取り組んでいます。 化学溶液プロセスには様々な方法がありますが、機能面からの設計に基づいた(複合)ナノ粒子を合成するためには、 様々な方法を組み合わせる必要があります。 これまでに均一沈殿法、共沈法、化学浴析出法、水熱法、ソルボサーマル法、さらにはフラックス(溶融塩)法などを組み合わせ、 均一で特異な形状を有するチタン酸バリウム(BaTiO3)、ニオブ酸カリウム(KNbO3)などの誘電体ナノ粒子、 導電性酸化物であるニッケル酸ランタン(LaNiO3)のマイクロ粒子、酸化亜鉛(ZnO)の単分散ナノ粒子などを開発してきました。 さらにこれらの材料を適切な条件を整えることで、core-shell粒子として複合化し、新しい複合材料の開発にも力を入れています。