防災研究室

ITトリアージ    鈴木猛康

災害医療分野の防災研究として、文部科学省からの受託研究「住民行政協働ユビキタス減災情報システム」の実証実験の一環として,山梨大学附属病院で平成22年5月22日に「ITトリアージ訓練」を実施し,病院のトリアージ管理と住民(中央市・リバーサイド自治会),行政(中央市)の安否確認との連携の有効性を確認しました

トリアージ訓練では,以下の2点について研究成果の評価を行いました.

(1)ICカードを用いたトリアージ管理の電子化
山梨大学附属病院では,毎年恒例(第10回目)のトリアージ訓練を5月22日に実施しました.今年の訓練では,住民・行政協働ユビキタス減災情報システム(山梨減災システム)を適用したトリアージ管理の電子化の有効性を確認することを目的としました.トリアージタグとICカードのIDを関連づけることにより,@トリアージされた負傷者の移動を自動的に追跡し,Aトリアージ結果を表示し,Bトリアージ結果の分析を行いながら,円滑なトリアージ管理を行いました。

(2)中央市ならびに市内自主防災組織における安否確認
上記トリアージ訓練では,病院内のトリアージ管理の電子化とともに,病院のトリアージ情報と地域コミュニティで管理する世帯情報との共有の有効性を実証しました. 地域防災SNSに世帯情報が登録されていれば,病院で本人確認が行われた負傷者は「確認済み」として,住所(市町村まで),氏名,生年月日の3つが一致するが病院で本人確認が行われていない場合は「未確認」として,負傷者のトリアージ結果は家族の安否情報となって地域防災SNSへ送られ,情報を登録した住民はPCや携帯電話のメールでトリアージ結果を受け取ることができました.また,市町村は,災害拠点病院でトリアージされた市町村民のトリアージ結果を,市町村災害対応管理システムで表示し,住民の問い合わせに答えることができました.トリアージ訓練では,病院内に中央市の災害対策本部とリバーサイドタウン自治会の席を設け,病院のトリアージ管理システムとリアルタイムで情報システムを連携させて,住民や中央市職員が安否確認作業を行いました.このような災害時の病院のトリアージと市町村や住民の情報システムを連携させる試みは,他に例を見ないものです。

写真−1 トリアージされた負傷者の情報を入力                    写真−2 住民と中央市による安否確認の様子

図−1 行政によるトリアージ結果の確認画面                      図−2 住民によるトリアージ結果の確認