2011年東北地方太平洋沖地震の発生前後6年半の間に,日本アルプス及び周辺地域で発生した全ての地震の震源分布図(下図)を見ると,どの地域でも地震の発生頻度と規模は地震後に大きくなっているが,震源分布自体に大きな変化は認められない。このことは東北地方太平洋沖地震後も地下の既存の断層破砕帯に沿って破壊が進行している状態に大きな変化はないことを意味している。
諏訪湖以北では,東北地方太平洋沖地震前後とも糸静線沿いで地震が発生しているが,松本分地東縁断層群の一部の区間では震源分布は糸静線とは一致せず,糸静線の東側で地震が発生しており,松本分地東縁断層群の一部区間は地震空白域となっている。同様の地震空白域は,地震発生確率が高まっている牛伏寺断層の南方延長部に位置する諏訪断層群及び諏訪湖南岸断層群の北端部にも認められ,東北地方太平洋沖地震前から地震活動が活発だった牛伏寺断層沿いでは,同地震後に活動がさらに活発化しているので,牛伏寺断層との連動が懸念される。
諏訪湖以南では,震源分布は糸静線活断層系とは一致せず,南アルプス内の北北西−南南東ライン上で地震が発生している。南アルプス内には未知の活断層が存在している可能性が指摘される(福地・早川,2018ab:山梨大学教育学部紀要No.26及びNo.27)。
引用文献
福地龍郎・早川綾子(2018a)日本アルプス及び周辺地域の活断層分布と地震活動変化.山梨大学教育学部紀要,第26号,p.133−145.
福地龍郎・早川綾子(2018b)糸魚川−静岡構造線活断層系沿いに分布する地震空白域について.山梨大学教育学部紀要,第27号,p.75−87. |