研究内容

光-化学エネルギー変換システムの創製

地球上に降り注ぐ太陽光エネルギーは年間当たり約120,000TWと人類全体が年間に使用するエネルギーの約8,000倍にも相当することから、光エネルギーを貯蔵可能な化学エネルギーに直接変換する人工光合成が持続可能なエネルギー獲得手法の一つとして期待されています。
 本研究では太陽光の有効利用を可能にするため、可視光に応答する光材料の開発およびエネルギー変換に関わる化学反応を担う多電子移動触媒の設計・創製を行っています。


多電子移動触媒の開発および設計指針の開拓

 化学反応では電子を逐次的に一電子ずつ移動するよりも複数個の電子を一度に移動する(多電子移動反応)方が熱力学的に駆動することが容易になります。そのため多電子移動反応は化学合成やエネルギー変換、生物の代謝など様々な場面で重要な役割を担っています。しかし一方で多電子移動過程の内容は非常に複雑で、これを制御する手法は経験的にも理論的にも確立されていません。本研究では電気化学や分光化学など駆使して多電子反応活性を支配している中間体や触媒特性を明らかにし、そこで得られる知見を基に新規触媒の設計指針の構築および開発を進めていきます。



可視光応答可能な全固体Z-スキーム光反応系の構築

 光化学反応では光吸収によって生成する正孔および励起電子の酸化還元電位と目的反応の酸化還元電位の位置関係を適切に調節することが必要です。一方でエネルギー変換効率の向上に向けてはできるだけ長波長の光まで吸収できるようなバンド設計も重要になってきます。本研究ではこれら2つの条件を同時に満たすため、1つの光触媒で酸化と還元の両方の目的反応を行うのではなく、酸化反応向けの光触媒と還元反応向けの光触媒をそれぞれ独立に設計し、金属ナノ粒子でつなぎ合わせることによって、可視光で酸化還元両方を駆動するシステムを開発しています。