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研究内容
  • 針型試料前処理デバイスを用いた揮発性有機化合物の高感度分析
  •   食品・飲料や花などの「香り」は、揮発性有機化合物(VOC)によるものです。一方で、シックハウス症候群や化学物質過敏症など、微量のVOCによって健康被害を受けることも知られています。これらVOCは一般的に、ガスクロマトグラフィー(GC)法により分析されています。しかし、空気中の微量VOCを正確に測定するためには、測定前にVOCを濃縮する必要があります。従来のVOC濃縮方法は、濃縮した試料を分析装置に導入する際に、煩雑で長時間にわたる脱着操作や、高価な専用脱着装置が必要でした。
      本研究では、これらの問題点を克服するために、右図のような針型のVOC濃縮デバイスを開発しています。この針型濃縮デバイスは、小型のポンプを用いて針の先端からVOCを含む気体試料を吸引することにより、針内に充填した吸着剤にVOCを濃縮することができます。そして、濃縮針をそのままGCの試料注入口に挿入して加熱脱着することで、VOCの高感度分析が可能です。この針型濃縮デバイスを用いる方法は、従来法と比較して、極めて迅速かつ容易に、濃縮したVOCを分析装置に導入することが可能です。当研究室では、測定対象化合物に応じて様々なタイプの針型濃縮デバイスを作製し、種々の環境試料中に含まれる微量VOCの高感度分析に応用する研究を進めています。また、針型濃縮デバイスを用いて水道水や飲料などの水試料中に含まれるVOCを分析する新たな分析法の開発も行っています。

  • 大気中の半揮発性有機化合物捕集用デバイスの開発
  •   半揮発性有機化合物(SVOC)とは沸点が250℃以上ある有機化合物の総称であり、多環芳香族炭化水素(PAH)やフタル酸エステル等が含まれます。一部のSVOCは人の健康に悪影響があることが知られています。また、大気中に放出されたSVOCは凝集してエアロゾルを形成したり、微小粒子状物質(PM)の一部となっていることも知られています。大気中のSVOCの存在量は極めて微量であるため、分析するためには、大量の空気を採取してそこに含まれるSVOCを捕集する必要があります。しかし、従来のSVOC捕集方法は、捕集したSVOCの脱離効率が低く定量精度に問題がある、あるいは脱離に長時間を要するなどの問題点があります。
      当研究室では、大気中のSVOCを捕集するための新規デバイスの開発を進めています。空気試料を採取してSVOCを捕集した後に、少量の有機溶媒をカートリッジに通液するだけで、迅速かつ高効率にSVOCを脱離させることができるデバイスの開発を進めています。