新しい金属酸化物触媒の創出と表面機能制御

“触媒”という言葉を聞いたことがあるでしょうか?私たちの生活に欠かすことのできない燃料、プラスチック、繊維、肥料、医薬品などの多くは、天然に存在する資源を化学反応によって変化させてつくられます。中にはなかなか進まない反応や不要なものが大量にできてしまう反応もあります。そのようなときに触媒を使うと、欲しい物質を短い時間でたくさんつくれるようになります。触媒は化学反応によって変化したり消費されたりしませんが、化学反応中に共存して反応を早く進めたり、つくり出されるものを変えたりできる不思議な材料です。

アンモニアから直接高純度水素を製造するシステムの開発

次世代エネルギーとして水素が注目されていますが、貯蔵や輸送が困難であるという問題があります。そこで水素をアンモニアに変えて効率よく貯蔵・輸送し、使用する場所でもう一度アンモニアから水素を取り出す方法が検討されています。私はアンモニアから水素のみを直接分離・精製できる膜反応器(メンブレンリアクタ)の開発に取り組んでいます。メンブレンリアクタでは、触媒がアンモニアを水素と窒素とに分解すると、直ちに合金膜が水素のみを選択的に分離・精製します。アンモニアから超高純度水素が直接得られるだけでなく、触媒上から水素が取り除かれることによってアンモニア分解反応が促進されます。

植物由来の物質から化学製品を合成するための触媒

紙おむつ等に使用されている超吸水性ポリマーは、アクリル酸という物質からつくられています。このアクリル酸は現在、化石資源である原油からつくられています。一方、菜種油や廃食用油などからバイオディーゼル燃料を作る際に、同時にグリセリンという物質が生成します。私はこのグリセリンからアクリル酸をつくる反応を効率よく進めるための固体触媒の開発に取り組んでいます。

水を触媒に変化させる材料

水が触媒反応に与える影響について調べています。触媒を使った反応中に水が存在すると、反応が進みにくくなったり進みやすくなったりします。例えば酸化ニオブを触媒としたときには、水蒸気を導入すると反応の効率が向上します。酸化ニオブ上で水が触媒として機能して反応を促進していることを明らかにしました。