高分子合成化学研究室 
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光で探る高分子ミセルの静的・動的特性
 
 両親媒性ブロックコポリマーが形成する高分子ミセルはドラッグデリバリーシステム(DDS)のキャリアとして期待されています。私たちの研究室では光線力学療法(PDT)や光温熱療法(PTT)用色素のキャリアのための高分子ミセルを開発しています。しかし高分子ミセルの静的・動的特性についての理解は不十分です。私たちの研究室では精密重合とフェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)や凝集誘起発光(AIE)を利用して高分子ミセルの静的構造や動的特性、さらに低分子内包挙動に迫る研究を進めています。具体的には
(1)
FRETによる高分子ミセルのコアの構造と膨潤挙動の解析
(2)
FRETによる高分子ミセルの鎖交換反応の解析(安定性評価)
(3)
FRETによる高分子ミセルに内包された色素の存在分布の解析
(4)
AIEによる高分子ミセル−低分子化合物の相溶性の新たな解析法の開発
などに取り組んでいます。
 
 
 
医療用色素DDSのための高分子ミセルの合成と応用
 
 がん治療の一つとして色素と光を利用する光線力学療法(PDT)や光温熱療法(PTT)があります。これは腫瘍に集積した色素に光を照射することにより毒性の高い一重項酸素などの活性酸素を発生させたり、局所的に加熱することによりがん細胞を選択的に死滅させる治療法です。このとき体透過性観点から長波長の光を吸収する色素が使われますが、そのような色素は剛直で平面性の高い構造をしていることが多く、水溶性に乏しいことが問題となります。そのため多大な労力とコストをかけて合成化学的に水溶性を付与することが行われています。私たちは高分子ミセルを利用して色素を水溶化することにより、この問題を解決することを試みています。
 
風洞実験のための感圧・感温塗料の開発 
 
 感圧・感温塗料(PSP/TSP)は燐光・蛍光色素と酸素透過性ポリマーからなる分子センサーです。この塗料は航空機やロケットなどの機体設計のための風洞実験で、機体模型表面にかかる圧力や温度を光学的計測するために利用されています。私たちの研究室ではPSP/TSPのための高分子の開発を進めています。特に圧力と温度の同時イメージングを目指して、感圧色素と感温色素の両方を含む塗料の開発を進めています。しかし、単純に2つの色素を混ぜてしまうと互いに干渉して性能が劣化することが知られています。そこでイオン性の感温色素であるRu錯体を高分子逆ミセル内に閉じ込めて、感圧色素から分子レベルで隔離することを試みています。
 
 
両末端にFRET色素を導入した高分子の合成と応用
 
 制御ラジカル重合技術を利用して鎖状高分子の開始末端と停止末端にフェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)を起こす色素ペアを導入し、鎖状高分子の広がりをFRET効率で計測する技術の開発に挑戦しています。また鎖状高分子として温度応答性高分子を用いLCST挙動をFRETで検出する試みも進めています。
 
 
 
糖質高分子の精密合成による医療用糖衣ナノ粒子の開発
 
 糖は生体内でエネルギー源としてばかりでなく細胞認識等の機能を担う生理機能分子です。このような糖の機能を利用する材料として、側鎖に糖鎖を有する合成高分子(糖質高分子、Glycopolymer)の研究が盛んに行われています。当研究室では制御ラジカル重合法を用いて精密な糖質高分子の合成研究と、それに基づく糖衣ナノ粒子の研究を進めています。例えば、当研究室では高純度で単離可能な結晶性糖モノマー ManEMAを開発し、このManEMAの重合体poly(ManEMA)が細胞にダメージを与えることなくエンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれることを見出しました。現在、このManEMAの性質を合成核酸キャリアに応用する研究を進めています。 
 

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