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最近読んだ文献                

このページでは、個人的に興味のある英語教育関連の文献を簡単に紹介していきます。各文献の内容に興味のある方は必ず原典をお読みください。


Cheng, H. (2004). A comparison of multiple-choice and open-ended response formats for the assessment of listening proficiency in English. Foreign Language Annals, 37(4), 544-555. 
リスニング力を測るリスニングテストにおいて、多肢選択問題と自由記述問題の形式がよく使われる。テストの解答形式の違いよって受験者のリスニングテストの結果がどのくらい異なるのかを調べた研究はこれまで少ない。そこで、本研究では、4つの選択肢から内容に関するWh-questionに対する正解を選ぶ多肢選択問題(multiple-choice: 以下MC)、4つの選択肢から内容を記述した文の空欄を埋めるフレーズを選ぶ多肢選択クローズ問題(Multiple-choice cloze: 以下MCC)、内容に関するWh-questionに対して自由に記述する自由記述問題(open-ended: 以下OE)を用いて、被験者のリスニングパフォーマンスがどのように異なるのかを調べた。被験者は、中国人大学生159名を対象に、GEPTと呼ばれるリスニングテストからダイアローグ形式の会話文30組を上記3つの形式に振り分け調査を行った。その結果、MCとMCCの得点結果がOEより有意な差で高くなることがわかった。また有意差はないものの、MCCの方がMCよりも得点が高くなることもわかった。テスト後のアンケートから、多肢選択肢問題には、正解を含む選択肢があるため、それがリスニングの手がかりになったものと思われる。選択肢から内容を推測でき、記憶の負担を軽減できる。また、リスニングに先立って選択肢を見ておくことで、これから聞き取るリスニング内容を予測できることが選択肢問題の優勢につながった理由と考えられる。多肢選択問題は、選択肢の意味をとるというリーディング力を測っているという問題も考えられるが、初期レベルの学習者にとって、選択肢はリスニングの補助的作用がある。これらのことから、リスニングテストを作成するにあたり、テスト作成者はテストの解答形式の違いとその特徴を把握することが重要であり、受験者にとって適切な形式を使うべきでることが示唆される。(November 21, 2005)

谷口幸夫. (2000). リスニング回数がリスニング理解に及ぼす効果. STEP Bulletin, 12. 26-35. 
リスニングテストにおいて1回だけテキストを聞いた場合と2回聞く場合とでは、理解度がどのように異なるのかという疑問に答えてくれる研究は少ない。そこで、リスニング回数と理解度の関係を調べるため、日本人高校2年生100名(進学率の低い高校)を対象に、英語検定試験3級のリスニングテスト(応答、対話、ストーリータイプの3つの大問、全20問)を課し調査を行った。その結果、リスニングテストの合計の平均点で見た場合、1回目のリスニングでほぼ6割の理解が得られ、2回目で1割の理解が増し、1回目と2回目の理解度には有意な差が見られた。また、1回目と2回目のテスト得点にはある程度の相関があることが分かった。スピアマン順位相関により、1回目と2回目のテスト結果による順位変動を調べた結果、上位群は高い相関を示し、下位群は低い相関を示し、上位群では順位変動はあまり起こらず、下位群において順位変動がある可能性があることが分かった。 (November 18, 2005)

山西博之. (2005). 高校生の自由英作文はどのように評価されているのか:分析的評価尺度と総合的評価尺度の比較を通しての検討. JALT Journal, 26 (2), 189-205. 
自由英作文の評価には、大きく区分して分析的な下位項目を立ててある技能を評価する分析的評価と項目を立てず全体的な印象をもとに評価する総合的評価がある。この2つの評価には異なる特徴があり、その特徴を理解した上で使い分けが必要と言える。そこで、高校生20名が書いた自由英作文40編(2種類の課題:自分の経験と絵の説明)を総合的評価と分析的評価、そして観点別評価を用いて(この順で評価を行うよう指示された)、高校英語教員10名および教師志望の大学生6名に評価させた。総合的評価には、うまさと好み、全体的印象を尋ねる項目を設け、分析的評価には、Jacobs et al. (1981)のESL Composite Profile(内容、構成、語彙、言語使用、文法)を用い、観点別評価には、国立教育政策研究所(2002)提示した規準の関心・意欲・態度、表現の能力、知識・理解である。自由英作文の評価において、評定者の違いによる評価の特徴の違い、分析的・総合的評価および観点別評価の信頼性(尺度内一貫性および項目間相関による)および妥当性(印象的評価との並存的妥当性)を調べた。その結果、どの評価尺度においても、信頼性係数は高く、尺度内一貫性は確認された。項目間の相関を見ると、総合的評価では、項目間に高い相関が確認され、分析的評価および観点別評価においては、教員の評価については高い相関があった一方で、大学生にはやや低い相関が見られた。このことから、教員と大学生の評価の特徴において、教員はどの評価尺度を用いても評価の幅が少ないのに対し、大学生は分析的評価において幅が大きいことが明らかになった。観点別評価は、他の評価尺度と比較して、信頼性には大きな差は見られなかったが、妥当性について大学生が評価した際にはやや低くなった。このことから、指導経験が自由英作文の評価に、ある程度の影響を与えることが示唆された。(November 12, 2005)

Ellis, R. (2005). Measuring implicit and explicit knowledge of a second language: A psychometric study. Studies in Second Language Acquisition, 27, 141-172. 
第二言語習得研究において学習者の言語知識である暗示的知識と明示的知識の区別や移行などに関する議論は頻繁に行われてきているが、学習者のもつ暗示的知識と明示的知識をどのように妥当に測定するかという測定方法に関しては進展があまり見られない。そこで、この2つの知識を、(a) 規則に対する学習者の意識の程度、(b) タスクを行う時間の制限の有無、(c) 意識の対象の違い(意味にあるか形式にあるか)、(d) メタ言語的知識を問うかどうか、というテストの特徴に基づき、それらの知識を個別に測定するとされる一連のテストを被験者に実施し、その結果から2つの知識を区別するためテストを提案する。これまでの研究を踏まえ以下の5つのテストが実施された。(1) 口頭による模倣テスト、(2) 口頭による物語作成テスト、(3) 制限時間のある文法性判断テスト、(4) 制限時間のない文法性判断テスト、(5) メタ言語的知識を問うテスト、を用い、(1)、(2)、(3)のテストを暗示的知識を測るテストとして、(4)と(5)のテストを明示的知識を測るテストとし仮定し、17の英語の文法構造を対象に、91人の第二言語学習者を被験者に調査を試みた。主成分分析の結果、上記の(1)、(2)、(3)のテストの結果は暗示的知識に、(4)のうち非文法の文のテストと(5)のテストの結果は明示的知識に相当する2つの主成分として解釈できることが明らかになった。(October 17, 2005)

Littlewood, W. (2004). The task-based approach: Some questions and suggestions. ELT Journal, 58 (4), 319-326. 
タスクという用語は、コミュニカティブアプローチの発展とともに、これまで多様な定義で用いられてきている。本物のコミュニケーションを行うメッセージ中心の活動がタスクと呼ばれることがあったり、一方では、メッセージを中心としたコミュニケーションは行われず文法形式の練習がタスクと呼ばれたりする。このようなことから、ときにタスクという用語が適切に理解されずに誤解を招くことにもなっている。タスクという概念を正しく描写するためには、広い定義に立ち戻って理解する必要がある。そこで、focus on formsとfocus on meaningという次元と、task involvementという2つの次元がタスク理解の鍵であると考えられる。第一の次元は、学習者の意識が、文法などの言語形式に向けられるか、それとも伝達する意味に向けられるかによってタスクの種類が異なってくる。第二の次元は、その活動内容に対する学習者の介入度(involvement)の程度の違いによるものである。これら2つの次元の要素は、学習者がタスクをどう捉えるか、あるいは学習者の特徴によって大きく左右される。本論文では、タスクやコミュニカティブアプローチという用語が複雑かつ多様になる理由として、audiolingual methodやdirect methodといったこれまでの個別的な教授法全盛の時代とは異なり、包括的・折衷的な教授法が主流になった現在において、何をユニットとして指導方法を適切に描写するかという新しく難しい問題があるために起きている課題であると指摘し、今後も指導法のユニットの名称には誤解を招かないような慎重なラベリングをしていく必要性を指摘している。(October 22, 2004)

Manolopoulou-Sergi, E. (2004). Motivation within the information processing model of foreign language learning. System 32, 427-441.
外国語の学習過程そのものにおいて学習者の情意的な側面である学習意欲(モティベーション)の役割は十分に議論がなされてきているとは言えない。本論は、言語習得過程をインプット、中央処理、アウトプットと捉える情報処理モデルのフレーム内で、モティベーションが継続的な行動評価および行動規制において重要な役割を担っていることを主張する。インプット処理において、モティベーションは、絶えず学習者の注意の指向や注意資源の振り分けに大きく関わり、目標選択やタスクへのアプローチの仕方を決定しうる。その後の中央処理(既習事項と新規事項の結合)は、インプット処理に大きく影響され、学習者のモティベーションにより、処理のレベルの深さや学習者のストラテジーに影響を与える。アウトプットにおいては、モティベーションは、「表出する価値があるのか?」、「なぜ表出するのか?」など学習者のコミュニケーションする意欲に大きく左右し、学習者の意図を表出行動に移すか否かの決定に大きく関わる。情報処理モデルの3つの段階である、インプット、中央処理、アウトプット処理段階においてモティベーションの役割を捉えることにより、これまでのモティベーションの役割を新しく捉え直すことができることを主張している。(October 7, 2004)

Osada, N. (2001). What strategy do less proficient learners employ in listening comprehension?: A reappraisal of bottom-up and top-down processing. Pan-Pacific Association of Applied Linguistics, 5 (1), 73-90.
第二言語リスニング理解のプロセスにおいて、学習者はトップダウン処理に依存する傾向にあるのかボトムアップ処理に依存する傾向にあるのか、これまでの研究では意見が分かれている。本論は、ESL環境で学ぶ英語学習者と比べると初期レベルの英語力をもつ日本人英語学習者がリスニング理解において、トップダウン処理およびボトムアップ処理のどちらのプロセスを踏む傾向にあるかを調査する。そこで、日本の大学で学ぶ91名の日本人英語学習者を、英語力の上位群、中位群、下位群の3群に分け、4種類の英文を聞かせる。聴解度の測定は、リコールテストをアイデアユニットでカウントした結果と2種類(局部と全体)の質問への回答結果をもとに行われた。その結果、英語力の低い学習者は、ボトムアップ処理に依存する傾向が見られた。つまり、テキストの全体の内容を聞き取る代わりに、テキストから得られる局部の情報を聞き取ることに集中してしまう傾向にあることが明らかになった。(October 4, 2004)

Ellis, R. (2004). Definition and measurement of L2 explicit knowledge. Language Learning, 54 (2), 227-275.
第二言語習得における明示的知識の役割はこれまで様々な研究で議論されてきている。しかし、これまでの先行研究においては、明示的知識の定義やその測定方法は多様であり一貫されたものがない。そこで、この論文では、どのように明示的知識を定義すべきか、そして、どのように明示的知識を測定すべきかを探る。明示的知識の主要な特徴は以下の通りである。(1) 直感ではなく意識的な知識である (2) 宣言的な知識である (3) 必ずしも正確ではない (4) その知識の発達には広さと深さの2面性がある (5) アクセスには時間を要し統制的な処理が必要である (6) 難易度の高いタスクの場合に特に活用される傾向にある (7) 口頭で説明できる可能性がある (8) 学習可能である。また、文法的な側面だけでなく、発音、語彙、語用論などの多様な言語的側面に明示的知識が存在する。明示的知識に関する先行研究においてどのような測定方法が使用されているかを調べた結果、ほとんどの場合、文法性判断テストが用いられ、その他の方法として、言語適性テストの一部、メタ言語テスト、口頭説明が使用されてきた。最も頻繁に使用される文法性判断テストは、学習者の言語能力を直接見る窓口などではなく、多様な要因に影響されるパフォーマンスを測定するものである。したがって、明示的知識を測定するテストとして文法性判断テストを使用する際には、(a) 判断時間が十分に与えられ、非文法的な文を訂正させるタスクであること、(b) 非文と判断した文は文法的と判断した文とは別に扱われること、(c) 文法性判断そのものに対する学習者の不確かさをも考慮に入れること、などが提案されている。メタ言語(文法用語を使って文法を説明できること)は明示的知識の不可欠な要素ではないが、明示的知識の質的発達を支援する役割があることを考慮に入れる必要がある。また、学習者による口頭説明は、明示的知識の測定の最も妥当なテストと考えられる。しかし、学習者は文法について口頭で満足に説明できない可能性もあることを考慮する必要がある。(May 14, 2004)

Kormos, J. (1999). The effects of speaker variables on the self-correction behaviour of L2 learners. System, 27, 207-221. 
Krashenは、モニタリングを過剰に使用する学習者(monitor-over-users)と過少に使用する学習者(monitor-under-users)に区分され、前者は正確さを、後者は流暢さを重視すると主張した。しかし、これまでの先行研究では、このような個人差が、学習者による発話の自己修正にどのような影響を与えるかは検証されてこなかった。そこで、本論は、ハンガリー語学習者30名(大学生を含む成人)を対象に、スピーキングにおいてメッセージ伝達のために流暢さを重視するタイプか正確さを重視するタイプかを問うアンケートを行い、5分間のレストランでの個室を依頼に応対する店員の口頭によるロールプレイタスクを実施した。その後、インタビューを行い、どのような自己修正を行ったかを振り返り、自己修正のタイプを分析した。その結果、概して、スピーキングのスタイルの違いによる学習者の発話内における自己修正の違いは明らかにはならなかった。この結果より、学習者の個人差よりもタスクの特徴に自己修正の行動は影響を受ける可能性があることを推察している。(April 20, 2004)

Ellis, R. (2002). Does form-focused instruction affect the acquisition of implicit knowledge? Studies in Second Language Acquisition, 24, 223-236.
(March 13, 2004)

Sanz C. & Morgan-Short, K. (2004). Positive evidence versus explicit rule presentation and explicit negative feedback: A computer-assisted study. Language Learning, 54 (1), 35-78.
(March 13, 2004)

戸出朋子. (2004). 「外国語学習における頻度の問題について」 『言語表現研究』 第20号. (pp.86-96).兵庫教育大学言語表現学会. 
最近注目されつつある用法依存モデル(usage-based model)は、生成文法による言語習得観と相反し、言語習得過程を、言語使用を通して多くの事例に触れそれが記憶される中で、その事例の中の規則性が帰納的に徐々に見出され、規則の抽象度が高まり、知識体系として組み込まれる過程、であると捉え、個々の事例をもとに抽象化がなされるというアイテム学習(item learning)の考え方を基盤にしている。同じように外国語学習を見た場合、学習者は、入力を通して受け取る事例を作動記憶内で復唱し、チャンクとして記憶し学習を繰り返す中で規則性を類推すると考えられる。もしそれが正しいとすると、1つの事例に触れる頻度や1つの規則を様々な事例を通して触れる頻度が、言語を習得する上で重要課題となる。また、そのような記憶に保持される事例の量、すなわち、頻度と習得の間の関係性を報告する研究も散見される。このように考えると、日本での英語教育の問題点は、一時的に目標規則が集中して指導されるが、指導された後は目標規則がほとんど指導されなくなってしまう指導の量と偏りにある。入力量を単に増やすという解決策は、学校教育のシステムの中では限界があり、顕在的指導と潜在的指導それぞれを改善し利用する必要があることが提案されている。(March 9, 2004)


山岡俊比古. (2004). 「外国語学習における事例を基にした規則の学習について―処理教授、ACT-R理論、項目学習、範疇学習の融合理論―」 『言語表現研究』 第20号. (pp. 16-26). 兵庫教育大学言語表現学会.
本論は、形式的言語指導において意識的あるいは無意識的に付与される言語知識が、どのようにして外国語学習者の言語処理体系の中に組み込まれうるのかという問いに対して、VanPattenの主張する処理教授(processing instruction)、Andersonが主張するACT-R理論、それらの説明を項目学習(item learning)と範疇学習(category learning)を援用し、それぞれ出発の異なる理論を融合させることによって理論的に答えようとしている。処理教授は、目標形式の規則の説明を先に行い、言語の意味と形式の関係を処理させることによって手続的知識を獲得させる。その点で、ACT-R理論による学習過程の説明の一部とうまく合致する。しかし、処理教授では、言語学習は宣言的知識の手続化による過程としてだけでなく、事例を基に類推的に規則を一般化する過程であるとするACT-R理論で修正された部分を十分に説明しきれていない。そこで、項目学習と範疇学習の両概念を援用する。つまり、言語学習の過程は、項目を未分析のままで丸覚えする模倣学習から個々の項目をそれぞれ規則の適用の一事例として学習する項目学習を通し、個々の規則をそれぞれが統括するすべての事例に適用できるように抽象化する範疇学習へ、そして、範疇化された個々の規則を全体として体系化する体系学習へと移行する過程であると捉える。そう考えるならば、処理教授の理論的不備を補うと同時にその考えをACT-R理論と統合させ言語学習をうまく説明することが可能になる。(March 9, 2004)

吉田達弘. (2004). 「中学校英語科における目標基準準拠評価の開発―『絶対評価』の再検討―」 『言語表現研究』 第20号. (pp. 27-39). 兵庫教育大学言語表現学会. 
本論は、中学校英語科で導入された絶対評価の実施に伴う問題点を指摘し、目標準拠基準評価の特徴とすぐれた評価実践例を紹介しながら、絶対評価の諸問題の解決方法を提示している。中学校英語科に導入された絶対評価の問題点として、以下のことが指摘されている。教科書の課というミクロなレベルでの評価規準の設定が中心となってしまい、中学校3年間を見通した実践的コミュニケーション能力育成というマクロなレベルでの評価規準の設定が行われていない。また、単元ごとに評価規準が設定される結果として、目標基準が細かくなりすぎ、学習がどの方向に向かって行われているか教師・生徒ともに見えにくくなり、教科書に準拠した評価がかえって強まる傾向にある点である。そこで、本多(2003)と英国のGOMLの事例を基に、次のような解決策を提案する。(1) 中学校3年間で育成できるコミュニケーション能力とは具体的にどのようなものかを分析した上で、適切なレベルの目標基準を、教師・生徒ともにわかりやすい具体的な記述を提示すること、(2) GOMLでも行われたように、実践的コミュニケーション能力育成という目標のもと、生徒が教室内外で遭遇しそうな実際の言語使用とはどのようなものかという観点でデータを蓄積し評価方法を開発すること、(3) 評価基準の学校間格差が生じさせないためにも、指導要領の4つの観点に関わる議論のもとに、地域ごとに統一された評価基準の開発が必要であること、(4) 評価基準設定の科学的側面を重視しすぎることなく、生徒の学習動機と達成感を高める評価の方法を開発すること、が挙げられている。(March 9, 2004)

Robinson, P. (1996). Learning simple and complex second language rules under implicit, incidental, rule-search, and instructed conditions. Studies in Second Language Acquisition, 18 (1), 27-67. 
第二言語習得研究においては、インプット内の文法規則の習得が、学習者が意識的に行われているのか、無意識レベルで行われているのか議論されてきている。また、一方で、ReberやKrashenの主張によれば、複雑な文法規則は暗示的な学習(implicit learning)により習得されやすく、簡単な規則のみ明示的な学習(explicit learning)により習得されると考えられている。そこで、非英語母語話者の大学生104名を対象に、擬似分裂文に関する文法規則の異なる提示方法が文法性判断テストにおいてどのような違いが見られるか、そして、簡単な規則と複雑な規則の違いによって指導効果に違いが見られるかが調査された。被験者は4つのグループに分けられ異なる指導を受けた。提示されたセンテンスを記憶するグループ(implicit群)、提示されたセンテンスの意味理解を要求されるグループ(incidental群)、提示されたセンテンス内の規則性を探すよう要求されるグループ(rule-search群)、提示されたセンテンをもとに指導された文法規則を質問されるグループ(instructed群)。その結果以下のことが明らかになった。(1) Implicit群とincidental群の間には、テスト結果に違いが見られなかったが、instructed群はrule-search群よりもテスト結果が良かった。(2) 複雑な規則について、implicit群とincidental群はinstructed群とrule-search群のテスト結果よりも良くはなかった。instructed群は、簡単な規則と複雑な規則の両方において、rule-search群よりもテスト結果が優れていた。簡単な規則について、instructed群の方がimplicit群およびincidental群よりもテスト結果が良かった。(3) すべてのグループにおいて簡単な規則の方が複雑な規則よりもテストにおける反応時間が短く、正確であった(implicit群以外)。(4) テスト後口頭で規則を説明できる被験者の数は、簡単な規則と複雑な規則において差は見られなかった。(March 7, 2004)

Gorsuch, G. (1998). Yakudoku EFL instruction in two Japanese high school classrooms: An exploratory study. JALT Journal, 20 (1), 6-32. 
本論は、日本の英語教育の典型的な指導実態を把握し記述する試みがこれまでほとんどなされていないことを指摘し、公立高校の2人の教師の授業観察(英語II)と教師へのインタビューを通して、ケーススタディー的に訳読式の高校英語授業の実態を報告する。その結果以下のことが明らかになった。(1) 英語から日本語への翻訳が訳読式の授業の中心である (2) 言語的にも内容的にも難易度が高い教科書が使用されている (3) 大学入試対策のために文型や語彙が集中的に指導されている (4) 教師はほとんど日本語を用いている (5) 生徒に英語の使用が要求されることはない (6) 翻訳や小テストに対する生徒の答えは教師に絶対的に従うことが求められる (7) 授業は教師主導型で教師による統制が強い (8) 生徒は頻繁に評価されている。教師のインタビューから、訳読式の傾向は、テストで出題される英文を素早く正確に読むことができる力をつけたいという大学入試の波及効果が影響していることが伺える。また、教師が大学で受けた指導内容が教師の指導傾向に影響を与えている可能性が指摘されている。(March 6, 2004)

Abraham, R. G. (1985). Field independence-dependence and the teaching of grammar. TESOL Quarterly, 20 (4), 689-701. 
第二言語習得研究において、場依存傾向(field independence)の違いが言語学習に影響を与える可能性が議論および検証されてきている。本論は、学習者の場依存傾向の違いによって文法指導の効果が異なるのかどうかを、分詞構文を目標構造として、非英語母語話者の大学生61名を対象に調査を行った。被験者の場依存傾向はGEFTを用いて調べられ、学習スタイルの特徴を場依存型(field-independence)か場独立型(field-dependence)かに分けられた。被験者は、演繹的な文法説明(規則が先に与えられ練習を後に行う)を受けるグループと機能的な文法説明(サンプルが与えられ規則を発見する)を受けるグループに分け、分詞構文を使用して2文を組み合わせる筆記テストによって、指導効果が測定された。テスト結果を場依存傾向で分けてみた場合、演繹型文法指導を受けた場独立型学習者のテスト結果が良く、帰納型文法指導を受けた場依存型学習者のテスト結果が良いという有意な相互関係があることがわかった。(March 6, 2004)

Rosa, E., & O'Neill, M. D. (1999). Explicitness, intake, and the issue of awareness. Studies in Second Language Acquisition, 21, 511-556. 
第二言語習得研究において、これまで文法習得におけるattentionやawarenessの役割が議論および検証されてきた。しかし量質ともに十分に検証が行われているとは言えず未だ推論の域を出ていない。そこで、本論は、think-aloud protocolを用いタスク中の学習者の気づきの有無を正確に描写した上で、文法説明およびタスク中の学習者の意識が文法規則の獲得にどのような影響を与えるかを調査するものである。そこで、スペイン語の仮定法過去を目標構造として、英語母語話者である大学生67名を対象に調査を行った。タスクとして、仮定法過去が含まれているジグソーパズルを組み合わせるタスクが使われた。被験者は5つの群に以下のように分けられた。仮定法過去についての文法説明が与えられ、かつタスク中に規則探しを要される第1グループ、文法説明は与えられ規則探しは要求されない(テキスト記憶を要求される)第2グループ、文法説明は与えられず規則探しのみ要求される第3グループ、文法説明も与えられず規則探しも要求されない(テキスト記憶が要求される)第4グループ、文法説明も与えられず規則探しもテキスト記憶も要求されない第5グループである。実験2日前にプレテスト、実験直後にポストテストが行われ、正しい仮定法過去の動詞句の部分を選ぶ多肢選択問題が課された。また、被験者の規則に対する気づきの度合いを調べるために、タスク中における口頭によるthink-aloud protocolが用いられ、理解を伴った気づき、理解の伴わない気づき、そして、気づき無しの3つに被験者は区分された。その結果、以下のことが明らかになった。(1) 文法説明を受け規則探しを要求された第1グループは、他のグループに比べテスト結果が良かった。しかし、文法説明と規則探しのどちらがテスト結果に影響を与えたかまでは有意な差は見られずわからなかった。(2) 理解を伴った気づきのある被験者は、理解を伴わない気づき、あるいは、気づき無しの被験者よりも、テスト結果が良かった。理解を伴わない気づきと気づき無しのグループ間のテスト結果には有意な差は見られなかった。(3) 文法説明を受けた被験者には理解を伴う気づきが多く見られ、理解の伴わない気づきや気づき無しは少なかった。文法説明を受けていない被験者には、理解の伴わない気づきが多く見られ、理解の伴う気づき、および気づき無しは少なかった。一方、規則探しが要求された被験者には、理解を伴う気づきが多く見られ、理解の伴わない気づきや気づき無しは少なかった。規則探しが要求されなかった被験者には、気づき無しが多く見られ、理解の有無に関わらず気づきは少ないことがわかった。このような結果は、Schmidt (1993)の主張する気づき仮説(noticing hypothesis)、すなわち、目標構造に対する学習者の気づきはインテイクを促進、つまり、第二言語習得を促進する、とする仮説を支持するものと考察されている。(March 6, 2004)

相澤俊行. (2004). 「認知文法と教育文法の接点:二重目的語構文を中心に」『東京工業高等専門学校研究報告書』 第35(2)号 pp. 11-18. 
論文では、英語の二重目的語構文の言い換え(A: May gave the dog a cookie./B: May gave a cookie to the dog.)を取り上げ、伝統的学習文法や語彙意味論的なアプローチでは説明が不十分であることを指摘し、Goldberg (1995)が主張する構文理論(construction grammar)による説明を援用することによって、新しい教育英文法のあり方の可能性を指摘する。上記のAとBの文は、伝統学習文法では文型の変換および前置詞の使用などの記述的説明のみで、意味の違いの理由までは説明されない。一方、語彙の意味や関係を文法解釈の中心にすえる語彙意味論では、「自分のところから何かを出す」という動詞の中核的意味から、動詞の位置に近い語が強調され、それが意味の違いにつながると説明する。しかし、この説明では、Aの文では犬がクッキーを確実に受け取ったことを意味するのに対し、Bの文ではそれが不確実であるという意味の違いを十分に説明できない。これは、giveという動詞という語彙的意味に由来するものではなく、構文そのもの意味に由来するとするのが構文理論である。つまり、動詞の意味から独立して、構文そのものが意味をもたせるという考え方である。構文理論では、Aの文は、「意思性をもつ動作主から自発的な受容者への移送」とする二重目的構文、Bの文は、「使役者が主題に働きかけて前置詞による方向表現で示される経路に沿って物が移動する」とする移動使役構文として説明される。この構文理論の構造構文としては、二重目的語構文、移動使役構文、結果構文、自動詞移動構文、能動構文の5つが挙げられる。したがって、動詞の多義性から意味の違いを説明するのではなく、構文の違いから説明することになるため、伝統的学習文法や語彙意味論の補完的説明ができると同時に、学習上の経済性が高まると考えられると主張されている。(February 16, 2004)

Hinkel, E. (2004). Tense, aspect, and the passive voice in L1 and L2 academic texts. Language Teaching Research, 8 (1), 5-29. 
英語によるアカデミックライティングにおいて、時制、相、態の使用頻度が非英語母語話者と母語話者の書いた文章を比べた場合、どれくらい異なるかをアメリカの大学生(多様な言語を母語としたTOEFL593平均の非英語母語話者と母語話者を含む)の書いた746のエッセイをもとに調査する。その結果、非英語母語話者は、過去時制を母語話者よりも頻繁に使用し、未来やwouldといった使用はごくわずかであることが明らかになった。相と態に関しても、非英語母語話者は進行相および完了相ともに使用頻度が低く、受動態の使用頻度もわずかであることが分かった。アカデミックライティングにおいて、時制、相、態などの文法規則の正しい使用は、エッセイの質を高める上で重要な側面であり、談話構成などマクロ的な指導と同様に、指導を強化すべき必要性があることを主張している。 (February 12, 2004)

Ellis, R., & Yuan, F. (2004). The effects of planning on fluency, complexity, and accuracy in second language narrative writing. Studies in Second Language Acquisition, 26 (1), 59-84. 
第二言語のタスクに基づく言語指導やライティング指導において、タスクにおいて学習者に考えさせる時間(planning)の果たす役割が検証されることは少なかった。Yuan & Ellis (2003)のスピーキングにおけるplanningの影響に関する研究に引き続き、この論文では、ライティングにおける影響を調査する。大学生42名(中国人英語学習者)を、pretask planning群(作文の前に考える時間を与えるグループ)on-line planning群(制限時間を設定せずに作文させる群)、そしてplanningのない群の3つのグループに分け、異なるタイプのプランニングが、流暢さ、複雑さ、正確さの観点において、被験者のライティングパフォーマンスにどう影響を与えるかを調査した。その結果、pretask planning群の作文は、流暢さと複雑さの面で得点が高く、正確さは低かった。On-line planning群の作文は、流暢さは低いが複雑さと正確さで得点が高かった。したがって、作文の前に考える時間を与えること(pretask planning)と制限時間を設定せずに作文させること(on-line planning)には学習者のライティングパフォーマンスに対して異なる作用が働くことが明らかになり、この結果から前者はformulation (メッセージ概念の形成およびその符号化)に学習者の意識が向き、後者ではmonitoring (自分自身の作文の編集)に学習者の意識が向いたことから上記のような結果が導かれたのではないかと考察している。
■タスク関連研究で使われるパフォーマンス評価規準の流暢さ・複雑さ・正確さという観点をL2ライティングに応用させ、作文中および作文前後における学習者の意識対象が、プランニングのタイプの違いによってどう影響を受けるかを検証し、そのタイプの違いが学習者のformulationとmonitoringにそれぞれ影響を与えると考察している点が面白い。(February 10, 2004)

Wilson, M. (2003). Discovery listening: Improving perceptual processing. ELT Journal, 57 (4), 335-343. 
第二言語のリスニング指導において、これまでトップダウン処理やリスニング方略に関する指導方法が注目されてきたが、トップダウン処理にいつまでも依存していては、本当の意味でのリスニング力の育成につながらないことを指摘する。ボトムアップ処理に関する指導に関しては議論が不十分であるとの主張に基づき、ボトムアップ処理を重視したDiscovery Listeningという指導方法を提案している。Discovery Listeningとは、グループメンバー同士協力しながら聞き取ったテキストの再構築を要求するDictoglossと同じ手法が用いられる。ただしここでは、音声と語彙の認識に焦点を置き、元のテキストと再構築したテキストを比較させ、聴解を困難にしている原因を発見させることに主眼が置かれる。3つのプロセスでタスクを行う。まず、メモを取らせずにテキストを聞かせ、理解度レベルを確認し、その後メモを許可して複数回テキストを聞かせる。第2段階として、グループになって聞き取った内容をメモをもとに復元させる。第3段階として、課題を発見させる。元のテキストと復元したものを比べ聞き取れなかった箇所、聞き取れなかった原因、聞き取れなかったエラー箇所の重要度を意識させる。そして、再度テキストを読ませないで聞かせ、全体のパフォーマンスを評価させる。テキストの意味を推測させる活動だけではなく、元のテキストと復元したものを比較する中で、学習者の形式への「気づき」を重視するリスニング指導こそ、学習者の動機を高める指導であることを主張している。
■ Fieldの論文と同様、ボトムアップ処理の向上のためのリスニング指導を検討している点で新しい。(January 24, 2004) 

Field, J. (2003). Promoting perception: Lexical segmentation in L2 listening. ELT Journal, 57 (4), 325-334. 
第二言語のリスニング指導ではこれまで、背景知識や方略などの高次レベルの要因が理解にどう影響を及ぼすかに焦点が当てられることが多かった。しかし、ボトムアップ的な低次レベルの要因である音声の符号化も、聴解上の困難を引き起こす重要な要因であることを主張し、音声学の基本的知見をもとにその練習法を提示する。学習者にとって既習語彙であったとしても、それが音声的に変異したものとして知覚されたり、音声的つながりの中で個々の語彙が認識できなかったりして、聴解が困難になることが第二言語学習者の場合頻繁に考えられる。その原因としては、語間のポーズの欠如が理由となり音声的につながったフレーズから語を分割して認識すること(segmentation)が困難になることと、英語の音声的特徴(reduction, assimilation, elision, resyllabification, cliticization)が符合化を困難にすることが挙げられる。その対処の1つに、listenerの観点から英語の音声的特徴に意識を向けさせる補足練習としてのディクテーションが提案されている。
■ 高次レベルに関するリスニング研究が多い中で、低次レベルの要因を重要視し提案している意味で面白い。提案型論文(実験や調査などのデータを使わない論文)のモデルとして参考になる。 (January 24, 2004)  

Norris, J. M., & Ortega, L. (2000). Effectiveness of L2 instruction: A research synthesis and quantitative meta-analysis. Language Learning, 50, 417-528. 
第二言語習得研究のおける形式指導の効果に関する1980年から1998年までの主要ジャーナルに掲載された49の実験結果をメタ分析(すべての実験結果を効果サイズ(effect size)の観点で統合的に検討し直すこと)を行った。その結果、何らかの形で文法形式に焦点化した指導(Focus on Formと Focus on Forms)は、文法形式を焦点化しない指導(Focus on Meaning)よりも実質的な指導効果が指導直後において見られることがわかった。とくに文法形式に焦点化した指導効果を検証した結果、コミュニケーションの中で意味を重視しながら文法形式への意識を向ける指導(Focus on Form)と意味と形式を分離して文法形式に焦点化した指導(Focus on Forms)の効果は同じような効果サイズが見られたが、その2つのタイプの指導の中でも明示的(explicit)な文法説明を行っている指導の方が、明示的な説明を行わない暗示的(implicit)な指導よりも指導の効果が大きいことが明らかになった。また、形式指導の効果はある程度持続すること、個々の実験結果は効果をどのように測定するか、つまり、指導効果の測定テストの方法が指導効果に大きく影響することもわかった。これらのメタ分析に伴った彼らの指摘として、効果サイズ(effect size)や信頼区間(confidence intervals)などを記載すること、実験操作の詳細および測定テストの妥当性・信頼性などの正確な情報を記述することが、今後の第二言語習得研究における仮説検証および実験結果の比較検討には欠かせないことを指摘している。
評価者間信頼係数の算出方法や効果サイズ(effect size)や信頼区間(confidence intervals)など英語教育の研究論文の質を高めていくための統計記述の解説がとても参考になる(December 7, 2003)

Laufer, B. & Hulstijn, J. (2001). Incidental vocabulary acquisition in a second language: The construct of task-induced involvement. Applied Linguistics, 22, 1-26. 
この論文は、これまでの語彙習得の研究動向をレビューしながら、語彙習得における処理水準、動機づけ、ニーズなどの重要性を指摘し、学習者のタスクへの介入(involvement)の程度が、語彙習得の成否に影響を与えるとの仮説を導き出している。タスクによって引き起こされる介入には、ニーズ(need)、探索(search)、評価(evaluation)の3つの要素が関わっているとする。ニーズとは、タスク達成のために引き起こされる学習動機である。探索とは、未知の語の意味を汲み取ろうとする認知的試みのことである。評価とは、語の意味を他の語の意味と比較したり、文脈への適切度を確認するためにある語と穂かの語の意味を組み合わせたりする認知的試みのことである。これらのタスクにおける学習者の介入が大きいほど、そのタスクにおける語彙習得が促進されるとする "involvement load hypothesis"を提唱している。(November 30, 2003)

Erlam, R. (2003). Evaluating the relative effectiveness of structured-input and output-based instruction in foreign language learning: Results from an experimental study. Studies in Second Language Acquisition, 25, 559-582. 
この論文は、文法指導におけるインプット型指導とアウトプット型指導の効果を比較検証する。英語を母語とするフランス語学習者である中学生70名を被験者に、フランス語の直接目的格代名詞に関し文法説明を行った後、インプット型の指導、アウトプット型の指導、そして特別な指導を受けない統制群の3つのグループに分け、それぞれの指導の効果を調査した。指導効果はインプット型(聴解、読解)のテスト、アウトプット型(筆記表出、口頭表出)のテストにより測定された。その結果、インプット型およびアウトプット型すべてのテストにおいて、アウトプット型指導を受けたグループが最も効果を上げたことが明らかになった。(November 30, 2003)

Kato, S. (2003). Examining relationships between phonological/ orthographic processing efficiency, working memory capacity, and overall reading performance: Implications for developmental changes in L2 reading proficiency. JACET Bulletin, 37, 31-48.
第二言語による読解における研究では、これまで高次レベルの言語処理、例えば、推測などの読解への影響が研究されることが多かった。そこで、低次レベルの言語処理も読解に大きく影響を与えると考え、低次レベルの処理と読解との関係を成人の64名の日本人英語学習者(ESL環境)を対象に調査する。本研究での低次レベルの言語処理は、正書法処理と音韻処理で測定した。正書法処理は本物の英語の綴り字に近い文字をペアの無意味文字から選ぶタスクの処理速度と正解率により測定され、音韻処理は本物の英語の音韻に近い文字を無意味文字から選ぶタスクの処理速度と正解率により測定された。読解に関しては、TOEFLの文章5題により測定され、口頭による作動記憶量は、70の英文を音読させ文尾の文字を再生させることで測定した。その結果、読解力は口頭による作動記憶量と相関が高く、正書法処理は読解力と口頭による作動記憶量との間に相関が見られた。しかし、音韻処理には読解力と口頭による作動記憶との相関が見られなかった。一方、口頭による作動記憶量と音韻処理の間には相関が見られた。今回の調査対象である被験者は、大学レベルのESL学習者であるため、音韻処理よりも正書法処理に依存しているためではないか、そして、正書法処理は作動記憶上の処理負荷を軽減させる可能性があることが考察されている。(November 26, 2003)

Asaoka, C. & Usui, Y. (2003). Students' perceived problems in an EAP writing course. JALT Journal, 25, 143-172.
本論は、日本の大学におけるアカデミックライティングの授業に焦点を当て、学生がライティング過程において何をどのように問題視しているかを、日本人大学1年生10名を対象に、1年間に渡る縦断的および質的な観察を行い調査した。その結果、学生が抱く問題意識は多岐に渡り、ライディング過程のすべての段階で問題にするポイントがあることが明らかになった。その中でも、文法や表現方法のような表面的なレベルよりもむしろ、文章構成などのようなマクロレベルの問題を学生は重要視し、構成に関する重要性を頭では理解しているにもかかわらず、ライティングの段階ではうまく対応できないでいることがわかった。また、トピック選定などを行うライティングの計画段階においてもつまずいていること、あるいは、時間的な制限との闘いが課題として学生に挙げられている点などが明らかになった。(November 25, 2003)

Akiyama, T. (2003). Assessing speaking: Issues in school-based assessment and the introduction of speaking tests into the Japanese senior high school entrance examination. JALT Journal, 25, 117-141.
本論は、中学校における指導および評価の現状に基づき、高校入試にスピーキングテストを導入することの妥当性を考察する。東京都の中学校英語教師199名にスピーキングテストに関するアンケートを行った結果、直接スピーキング力を評価している教員は14.6%であり、高校入試へのスピーキングテスト導入は中学校での指導に影響を与えるかという問いに対しては、76.8%がYesと答えたことが分かった。また、アンケートの結果から得られた中学校で最も頻繁に行われるスピーキングテストの4つのタスク(スピーチ、ロールプレイ、描写、インタビュー)を中学生219人に対して行い、流暢さ、語彙、文法、わかりやすさ、タスク達成度の5つの規準項目をもとに評価を実施しRashモデルによる分析を行った。その結果、それぞれのタスクの規準項目は目標とする構成概念を評価するのに妥当なものであることは明らかになったが、難易度の点においてこの4つのタスクに違いがあることが分かった。スピーキングテストに異なるタイプのタスクを混合して用いる場合には注意が必要であり、すでに実証的に難易度を検証した一貫性のあるタスクを集めたタスクバンクを活用することがスピーキングテストにおいて重要であることが指摘されている。(November 25, 2003)

山森光陽. (2003). 「中学校英語科の観点別学習状況の評価における関心・意欲・態度の評価の検討: 多変量一般化可能性理論を用いて」 『教育心理学研究』 第51巻. pp. 195-204. 
本論は、日本の中学校英語科における観点別評価の関心・意欲・態度の評価が、どのように評価項目を作成すれば信頼性の高い評価になるかを検討している。その結果、項目数を増やせば信頼性が高まるとは限らず、妥当な項目内容を考案することがより重要であるとの主張がなされている。(August 30, 2003)

Erlam, R. (2003). The effects of deductive and inductive instruction on the acquisition of direct object pronouns in French as a second language. Modern Language Journal, 87, 242-260. 
第二言語習得研究において、演繹的(deductive)文法指導と帰納的(inductive)文法指導を比較した場合どちらの方に効果があるかを比較検証する研究はまだ少なく、明確な結論もでていない。演繹的文法指導とは、先に文法規則を文法説明として指導し、それからその規則を個々に練習する文法指導をさし、帰納的文法指導とは、目標文法規則を含む具体的な例を学習者に与え、その中から学習者自身に規則を推測させる文法指導をさす。本研究は、ニュージーランドのフランス語学習者69名(中学生)を被験者にし、演繹群、帰納群、統制群の3つのグループに被験者を分け、フランス語の直接目的格代名詞を目標文法規則として文法指導の効果に関する調査を行った。全般的に、演繹群は統制群と比較しテスト得点に差があることが分かり、演繹的指導にある一定の効果があることが明らかになった。言語理解テストにおいて演繹群は帰納群よりも高得点を獲得し、言語表出テストにおいても演繹群の優位が見られた。しかし、演繹群が長期的な習得まで影響するという明確な結論にまでは至らなかった。(August 28, 2003)

Green, P. S., & Hecht, K. (1993). Pupil self-correction in oral communication in English as a foreign language. System, 21, 151-163.
本論は、外国語として英語を学ぶドイツ人学習者(中学から高校レベル)を対象に、自分のアウトプットの誤りを自己修正できるかどうかを調査した。一連の絵を見て話すタスクと電話での会話(録音された声に対して応答する)タスクの2つのタスクを被験者に課し、286の言語表出コーパスをもとに分析した結果、以下のことが明らかになった。第二言語による自己修正は、明示的知識のみによるものではない。自己修正の結果は、81%の割合で正しく修正できた。形態・統語レベルと語彙・意味論レベルに対し、自己修正はそれぞれ半分ずつの割合でなされていた。自己修正を頻繁に行う学習者ほどアウトプットの誤りが少ないとは限らない。学習者の自己修正は母語話者の自己修正の特徴に似ている。以上のことから、Krashenによるモニター仮説である、自己修正は、時間的余裕があり、形式に意識が向けられ、かつ、明示的知識のあるときに限られるとする主張は十分ではないと主張されている。(June 25, 2000)

Ajideh, P. (2003). Schema theory-based pre-reading tasks: A neglected essential in the ESL reading class. The Reading Matrix, 3 (1). Retrieved June 10, 2003, from http://www.readingmatrix.com/articles/ajideh/article.pdf 
本論は、リーディング活動のなかでも、スキーマ理論に基づくプレリーディング活動に焦点を置き、スキーマ理論の歴史的な研究動向を考察したうえで、学習者のスキーマを活性化させるプレリーディング活動は、読解を援助するものと捉え提案している。これまでのプレリーディング研究を参考に、本文のプレビュー、発問、意味マッピングの3つの観点から活動を具体的に提示し考察を行っている。(June 10, 2003)


Green, P. & Hecht, K. (1992). Implicit and explicit grammar: An empirical study. Applied Linguistics, 13, 168-184. 
外国語として英語を学ぶ学習者は、明示的に文法規則を教えられている。この明示的な文法規則が英語学習者にどのように使用されるかを調査するため、ドイツ人英語学習者300人(高校、大学レベル)と英語母語話者50人(高校レベル)を対象に、すべての被験者に誤りを含んだ12のセンテンス(語順、時制、動名詞、副詞、関係詞、冠詞などを含む)が与えられ、その誤りを訂正することとその文法規則を記述することが求められた。その結果、英語母語話者は、96%の割合で正確に誤りを修正し、42%の割合で規則を述べることができた。一方、ドイツ人英語学習者は、全体として、78%正確に修正し、46%規則を述べることができた。大学生レベルの英語学習者は、97%正確に修正し、85%規則を述べることができた。高校レベルでは、学力が低くなるほど修正率と規則説明率の割合が低くなることが分かった。規則を説明できればほとんどの場合正しく誤りを修正でき、一方、規則を説明できなくても正しく誤りを修正できることが分かった。(June 2, 2003)

Makino, T. (1993). Learner self-correction in EFL written compositions. ELT Journal, 337-341. 
生徒に作文を自己修正できる力があるかどうか実際に検証されることは少なかった。そこで、英文を自己修正させる機会を生徒に与えることが、どの程度効果があるかをみるために、64名の日本人大学生を対象に、日本文を英文に書き直させ、その誤りについて、次の3段階で自己修正を行わせた。(1) 自分自身で誤りを見つけて修正させる (2) 教師が誤りのある文にチェックをして生徒に修正させる (3) 教師が誤りのある箇所にチェックをして生徒に修正させる。その結果、どの文法的な誤りに関しても、初期段階、第1段階から第3段階に行くにつれて、英文の正確さが高まることが分かった。被験者は、たとえ教師からヒントが与えられなくても、自分自身で英文の誤りを修正することができ、また、教師からのヒントが詳しくなるほど、修正できる割合も高くなることが分かった。(May 30, 2003)

Yuan, F. & Ellis, R. (2003). The effects of pre-task planning and on-line planning on fluency, complexity and accuracy in L2 monologic oral production. Applied Linguistics, 24, 1-27. 
これまでの研究では、タスクの前に内容を考えさせる時間(pre-task planning)を持つことが、学習者の言語にどのような影響を与えるかに研究の焦点が置かれることが多かった。しかし、オンラインで考える時間をもつこと(つまり、タスクに制限時間を持たずに、ゆっくりとタスクに取り組ませること(on-line planning))の影響は、検討されることがなかった。そこで、本論では、中国人英語学習者42人を対象に、pre-task planningとon-line planning、そしてno planningの3グループに被験者を分け、4つの絵の物語を説明させるタスクを行い、学習者の口頭表出の特徴(流暢さ、複雑さ、正確さ)が、どのように影響を受けるかを調べた。その結果、on-line planning群は、言語の正確さを高める一方で、流暢さは低くなった。Pre-task planning群は、言語の流暢さは高まったが、正確さは高まらなかった。また、pre-task planning群は、on-line planning群と比較して、多様な語彙を使用することが分かった。これらの結果は、以下のように考察されている。タスクの前に計画させる時間を持つことで、学習者はメッセージ伝達に意識が向き、流暢さと多様な語彙使用が高まった。一方、タスクに制限時間を持つことで、学習者の意識はより言語形式に向き、正確さが高まったと考えられる。(April 8, 2003)

Cohen, A. D. (1998). Strategies and processes in test taking and SLA. In Backman, L. F. & Cohen, A. D. (Eds.) Interfaces Between Second Language Acquisition and Language Testing Research. (pp. 90-111). Cambridge: Cambridge University Press. 
言語テストは、第二言語習得および言語指導研究において、重要な役割を担ってきているが、学習者の言語使用の測定に使用されるテストが、本当に妥当なものなのかが疑問視されている。本論は、テストの妥当性を確かめるためにテスト解答ストラテジー(test-taking strategies)を学習者の口頭報告(verbal report)により明らかにする研究を報告しながら、テスト結果をテスト解答ストラテジーと結びつけて考察してみる必要性を指摘している。テスト解答ストラテジーとは、テストを受ける学習者がテスト項目に対する正答を引き出すために選択するプロセスをさす。多肢選択問題は、本文を深く読まずに表面的な読みで、選択肢にある項目を正解であると学習者が判断する場合は、本当の意味で読解力を測定していることにならないことが指摘される。クローズテストは、テキスト全体の理解ではなく、局部的な理解で解ける問題が多いことが指摘されている。要約問題は、本文を深く読まずテキストの一部をそのまま抜き出して書いても正解が得られることがありうる。自由記述問題も要約問題と同様な問題を指摘できる。したがって、テストの妥当性を確かめるためにも、学習者の口頭報告が役立つことと、テスト解答ストラテジーをテスト結果の一考察の道具として活用する必要性を主張している。(March 6, 2003)

Bygate, M. (2001). Effects of task repetition on the structure and control of oral language. In Bygate, M., Skehan, P., & Swain, M. (Eds.) Researching Pedagogic Tasks Second Language Teaching and Testing. (pp.23-48). Harlow, Essex: Pearson Education Limited. 
本論は、繰り返しタスクを行うことで、学習者の言語に変化が見られるのかどうかを調査する。48人の外国人英語学習者(大学生)を対象に、被験者を統制群(タスクの繰り返しを行わない)と実験群(インタビュータスクを実施するグループと物語タスクを実施するグループに分ける)に分け、授業を5週に渡って同じタイプのタスクを繰り返すことにした。流暢さ(fluency)、正確さ(accuracy)、複雑さ(complexity)の3つの観点から、学習者がタスクにおいて表出する言語の特徴が、タスクの繰り返しによりどう影響するかを調査した。仮説は以下の通り。タスクの種類(インタビューと物語)によって言語の特徴に違いが見られる。同じタスクを繰り返し行うことにより言語の特徴に違いが見られる。同じタスクを繰り返すことによって学習者の言語へ与えられる影響は、同じタイプではあるが新しいバージョンのタスクにも現れる。その結果、インタビューは物語と比較して、学習者の言語の複雑さは高くなり流暢さは低いことが分かった。発する言語が複雑になればなるほど、流暢さはなくなるというtrade-off効果が見られた。また、タスクの繰り返しにより、学習者の言語の流暢さと複雑さは向上したものの、正確さは向上しなかった。タスクを繰り返した結果、そのタスクとタイプは同じであるが新しいタスクでの学習者の言語の特徴には違いが見られなかった。(March 5, 2003)

杉田由仁.(2002). 「大学生を対象とした速読指導の効果」『山梨大学教育人間科学部紀要』第4巻1号.(pp.128-135) 
本論は、授業において速読練習を継続して行うことが、学習者の読解の向上にどのような効果があるかを調べる。日本人英語学習者(大学生34人)を対象に4ヶ月10回にわたる速読指導を行った。継続的な速読指導の効果があるかどうかを、指導前と指導後(事前テストの5ヶ月後)に同じ読解テストを実施し読解を測定した。その結果、理解を伴わない読解速度は、英語力のレベルにかかわらず有意に向上することが分かったが、理解を伴う読解速度は、上位グループには向上が見られ下位グループには有意な向上が見られなかった。したがって、速読指導の効果があるのは、ある一定レベル以上の英語力をもつ学生に限られる可能性があることが分かる。また、実験後に行ったアンケートから、速く読ませるだけの練習によって、逆さ戻りや逐語訳を減少させるといった読解ストラテジーが自然に増えていることも明らかになった。(March 4, 2003)

Polio, C., Fleck, C., & Leder, N. (1998). "If I only had more time:" ESL Learners' changes in linguistic accuracy on essay revisions. Journal of Second Language Writing, 7(1), 43-68. 
これまでの先行研究では、文法的なフィードバックや文法指導は、長期的にみると、学習者の作文の文法的な正確さに大きな影響は与えないとされてきている。しかし、短期的にみれば、学習者に作文させることは、自分の文法的な誤りに気づかせる機会とも考えられ、文法的な正確性を高める可能性も考えられる。しかし、作文指導において、学習者が自分の文法的な誤りを自分で直せるかどうかは、まだ十分調査されていない。そこで本論は、ESL環境で学ぶ英語学習者が、作文において追加の時間が与えられたときに、フィードバックがなくても、自分の文法的誤りを修正できるかどうかを調査する。そこで、64人の大学生を対象に、30分の作文(選択したトピックについて自由に書く)の時間と60分の作文修正の時間(30分作文の2日後に返却された自分の作文を修正するよう指示される)を与え、第1原稿と修正原稿の言語的な正確さにおける変化を調べた。言語的な正確さとは、文法ミス、語彙選択のミス、句読法上のミス(スペルミスは除く)をさす。被験者を統制群(フィードバックを与えない)と実験群(フィードバックを与える)の2グループに分け調査を行った。その結果、統制群と実験群の文法的正確さには差は見られなかったものの、統制群と実験群ともに、第1原稿と修正原稿を比較して正確さが向上することが分かった。したがって、文法的なフィードバックや文法指導が作文の正確さへ与える影響はないことが分かり、フィードバックを与えなくても追加の時間が与えられれば、自分で文法的な誤りを直すことができることが分かった。(March 3, 2003)

Hu, G. (2002). Psychological constraints on the utility of metalinguistic knowledge in second language production. Studies in Second Language Acquisition, 24, 347-386. 
これまでの第二言語習得研究において、第二言語表出の際に学習者がメタ言語知識を活用しているのかどうかに関し実験が行われてきているが、まだ確かな結論に達していない。しかし、これまでの実験報告を考察してみると、学習者がメタ言語知識を活用できるかどうかは、次の3つの要因に影響を受けていると考えられる。(1) 文法構造の典型性の程度(prototypicality)、つまり、その文法構造は典型的な構造か周辺的な構造か、(2) その文法が学習者に意識されているかどうか(attention to form)、(3) メタ言語知識の処理が自動化されているかどうか(processing automaticity)、つまり、タスクに制限時間があるかどうか。本論は、この3つの要素が第二言語表出におけるメタ言語知識のアクセスにどのように影響を与えるかを調査した。大学生である64人の中国人英語学習者を対象に、その被験者にメタ言語知識があると判断された6つの文法構造を、典型性(高低)の2つのレベルに分け、調査が実施された。表出タスクとして、自由英作文と誤答修正テストが実施され、その正解率がメタ言語知識の活用率と捉えられた。自由英作文は意識昂揚(上記のメタ言語知識の有無をみる口頭説明テストを意識昂揚とする)前に行うものと意識昂揚後に行うものが実施され(つまり、文法への意識の有無の影響をみるため)、誤答修正テストは制限時間のあるものとないものが実施された(つまり、文法の自動化の有無をみるため)。その結果、文法が典型的であるほど、両方のタスクの正確性は高くなることが分かり、文法が周辺的であるほど、そのメタ言語知識へのアクセスは、意識の程度、および、処理の自動化に影響を受けることが分かった。つまり、その文法が周辺的であれば、学習者が文法への意識度が低いほど、時間が制限されているほど、学習者がメタ言語知識を活用する率は低くなる。また、その文法が典型的であれば、文法への意識度が低くても、時間が制限されていても、学習者がメタ言語知識を活用する率は高いことが分かった。したがって、第二言語表出におけるメタ言語知識のアクセスには、3つの要素が相互的に作用していることが判明し、コミュニカティブな第二言語表出において、暗示的知識のみが重要であって、メタ言語知識は何ら機能しないという考えに対し疑問を呈することになった。つまり、典型的な文法であれば、処理が自動化されていれば(つまり、意識されていなくても、制限時間があったとしても)、メタ言語知識はコミュニカティブな言語表出であっても、十分アクセス可能であるということである。(February 24, 2003)

Qi, D. S. & Lapkin, S. (2001). Exploring the role of noticing in a three-stage second language writing task. Journal of Second Language Writing, 10, 277-303.
学習者の気づき(noticing)がL2ライティングの作文過程においてどのような役割をもち、作文の質にどのような影響を与えるかは、これまで追究されることが少なかった。そこで、本論は、ESL環境で学ぶ英語力のレベルの異なる2人の成人学習者を対象に、学習者の気づきが作文過程でどのように作用するかを調査するケーススタディを報告している。作文指導は、3つのステージで行われた。第1ステージでは、与えられた絵をもとに物語を英語で書かせる。第2ステージでは、第1ステージで書かれた作文を母語話者が修正しそれを被験者に見せ第1原稿と比較させる。第3ステージでは、もう一度同じ物語を英語で書かせる。調査対象は、(1) 第1ステージで、被験者自身が書いた文の何に気づき、気づいた結果正しく修正されたかどうか、(2) 第2ステージで、ネイティブによるバージョンと自分が書いたものを比較させた結果何に気づくか、(3) 第3ステージで、第2ステージで気づいた部分が2度目の作文に生かされるかどうか、(1)から(3)を作文中にthink-aloud protocolを行い調べた。この結果、英語力の違いによって、気づきの質が異なることが分かった。上位レベルの被験者は、下位レベルの被験者に比べ、第1ステージでの気づきが多く、気づいた結果も自分自身で正しく修正できる割合が高かった。第2ステージでは、単なる気づきと理解の伴う気づきの2つの気づきに分類して分析した結果、上位の被験者は、理解の伴う気づきの割合が高かった。また、第1ステージで気づいた部分は、第2ステージで再び気づく割合が多いことも分かった。第2ステージで理解の伴った気づきをもった方が、第3ステージで再び作文する際、正しい文を書く割合が高くなることが明らかになった。つまり、気づきの質の違い(理解を伴った気づきか単なる気づきか)により、ライティングの質に影響を与える違いに結びつくことが分かった。(January 27, 2003)

Truscott, J. (1998). Noticing in second language acquisition: A critical review. Second Language Research, 14, 103-135. 
本論は、Schmidt (1990)を始めとする気づき仮説(noticing hypothesis)の主張を批判する。気づき仮説では、学習者が文法を習得するためには、学習者が触れる言語入力の中の文法形式に意識的に気づかなければならないとされる。しかし、この仮説は、これまで実証的に検証されてきたわけではない。また、気づきの定義も複雑で規定が困難なため、実証的検証を困難にさせてきた。そこで、本論では、気づき仮説を修正し、気づきは学習者のメタ言語的知識の獲得に貢献するとすべきであると主張する。 (January 24, 2003)

Cross, J. (2002). 'Noticing' in SLA: Is it a valid concept? TESL-EJ, 6(3). Retrieved January 23, 2003, from http://www.kyoto-su.ac.jp/information/tesl-ej/ej23/a2.html
第ニ言語習得における学習者の気づき(noticing)は、第二言語習得を促進する重要な一過程として、この第二言語習得研究の分野ではみなされてきた。本論文は、学習者の気づきの役割と重要性に関するこれまでの議論は、直感と推測によるものであり、適切な実証的な研究の結果に基づくものではなかったことを指摘する。気づきが第二言語習得促進に直接的に貢献するという実証的研究はまだ少ない。しかし、学習者のインプットにおける言語構造への気づきは、学習者のコミュニケーションを支える中間言語体系の構築に貢献するとする仮説が今のところ主流である。本論は、むしろ、Truscott (1998)が主張する、気づきは学習者のメタ言語的知識の獲得に貢献するのみであるとする弱い(weaker)仮説が妥当であろうと主張する。気づきに関する研究は、気づき自体が直接観察できない現象のために、論点のヅレ、概念操作の困難さ、気づきのレベル、被験者のレベル、インプット情報の複雑性など複雑な要因が実証的研究を困難にしていることを考察している。(January 23, 2003)

Hinkel, E. (2002). Why English passive is difficult to teach (and learn). In Fotos, S. & Hinkel, E. (eds.). New Perspectives on Grammar Teaching in Second Language Classrooms (pp. 233-259). Mahwah, NJ: Lawrence Erlbaum Associates.
なぜ非英語母語話者が英語受動態の習得が難しいかを、とくに、能動態であるべき文を受動態にしてしまう傾向(例えば、*I am suffered from a cold.を文法的であると判断すること)や、能動態の文を受動態にしなければならないと勘違いしてしまう傾向(Water filled the ditch.を非文法的と判断したりすること)を、動詞のタイプ(他動詞か自動詞)と名詞のタイプ(有性か無生)の不十分な理解を原因の一つとして実証的に説明している。(December 10, 2002)

Ellis, R. (2002). Methodological options in grammar teaching materials. In Fotos, S. & Hinkel, E. (eds.). New Perspectives on Grammar Teaching in Second Language Classrooms (pp. 155-179). Mahwah, NJ: Lawrence Erlbaum Associates. 
文法を扱った市販テキストは、これまで十分に分析されてこなかった。この論文は、市販の文法テキストがどのような内容で構成されているかを分析し、その傾向を指摘し、軽視されているオプションを提案している。明示的文法解説(演繹・帰納)、言語データ(本物度・テキストサイズ・筆記口頭)、言語操作(表出・入力・判断)の3つの観点から、6社の市販文法テキストを、現在進行形に関して分析した結果、明示的な文法解説が演繹的に提示され、文法形式を制限された表出練習がなされる傾向があることが分かった。文法形式を発見するような帰納的文法提示や、言語入力を通して文法を処理するような練習が、有効である可能性を示し、そのような特徴をもつ文法テキストを紹介している。(November 25, 2002)

Fotos, S. (2002). Structure-based interactive tasks for the EFL grammar learner. In Fotos, S. & Hinkel, E. (eds.). New Perspectives on Grammar Teaching in Second Language Classrooms (pp. 135-154). Mahwah, NJ: Lawrence Erlbaum Associates.
授業の内外で英語に触れる時間が少ない、クラスサイズが大きすぎる、学習する動機が低いなど、EFL環境における多様な問題点を踏まえて、EFL環境に適した文法指導におけるタスクのあり方を提案している。暗示的な文法指導はEFL環境では十分ではないことを主張し、EFL環境では文法指導の中にコミュニカティブ活動を組み入れる形がふさわしいことを指摘しながら、明示的な文法説明、文法形式の使用を含むコミュニカティブ活動、学習者の意識を文法形式に向けるまとめ的な活動、の3つの部分からなる指導を提案する。(November 25, 2002)

Ellis, R. (2002). The place of grammar instruction in the second/foreign language curriculum. In Fotos, S. & Hinkel, E. (eds.). New Perspectives on Grammar Teaching in Second Language Classrooms (pp. 17-34). Mahwah, NJ: Lawrence Erlbaum Associates.
第二言語指導においてなぜ文法が指導されなければならないか、コミュニカティブな言語指導アプローチの中で文法指導をどのように取り入れていくべきなのかをこれまでの研究動向をもとに提案している。第二言語習得理論、学習者の視点、指導上の視点から総合すると、メッセージを中心とした指導と文法を中心とした指導は両方重要であることがわかる。それを前提に次に重要になってくる論点は、(1) 文法指導をいつ行うのか、(2) どれだけ文法指導を行うのか、(3) メッセージ中心の指導と文法中心の指導をどのように関連付けていくのかという問いである。第1の論点に対しては、初期の言語習得段階では、文法獲得よりも語彙獲得が中心であり、基本的語彙の獲得が文法規則の獲得を援助するものと考えられることから、ある程度の基本的語彙が習得されてからの文法指導が提案されている。第2の論点については、文法指導の目的を考えた場合、目標とする文法構造を操作できるようにする(つまり、暗示的知識のレベルになるまで指導する)ことと、文法構造に気づく、あるいは学習者の既有知識とのギャップに気づく(つまり、明示的知識を身につけさせる)ようにする指導目的に区別できるが、後者が提案されている。第3の論点に関しては、2つの選択が示されている。1つは、ある文法に焦点を当てたコミュニカティブなタスクを使い、その中で、教師は学習者の文法上のミスにフィードバックを与えていくとする、メッセージと文法を同時に示す指導。もう1つは、メッセージと文法を切り離し、メッセージをもっぱら中心とした指導をしながら、別枠で文法を指導していく指導。これら2つの選択は相補的に扱われるべきであり、どの文法を指導すべきかという指標を示しながら、明示的知識レベルでの指導が提案されている。(October 24, 2002)

Ellis, R. Basturkmen, H. & Loewen, S. (2002). Doing focus-on-form. System, 30, 419-432. 
本論は、focus on formの定義と理論的背景を解説しながら、コミュニケーションをとる中での言語形式への焦点化の2つのタイプを具体例とともに紹介している。Focus on formの2つのタイプとは、reactive focus-on-formとpre-emptive focus-on-formである。前者は、教師あるいは他の学習者が、コミュニケーションの最中に起こった学習者の形式上のミスを訂正することを指し、コミュニケーションを成立させるために学習者の形式上のミスに反応するconversational なもの(例えば、request for confirmationとrequest for clarificationなどのnegotiation of meaning)と、コミュニケーション上問題を引き起こすようなミスではないものを教師や他の学習者が敢えて訂正するdidacticなもの(つまり、negotiation of form)に分けられる。また、訂正の仕方も、学習者の形式上のエラーを直接指摘しないで訂正させる暗示的(implicit) なものと、エラーを直接指摘して訂正を求める明示的(explicit)なものに分けられる。Pre-emptive focus-on-formは、エラーが起きていないうちに、教師や他の学習者が言語形式を話題に取り上げる行為を指し、生徒が言語形式について質問をするような生徒から起こるもの(student-initiated)と、教師が今後問題として起こりうると考えられる形式上のミスを前もって指導しておくような教師から起こるもの(teacher-initiated)とに区別できる。以上のように、focus on formは多様なタイプがありうるが、focus on formは、コミュニケーションの自然な流れを遮る可能性の大きいものがある一方で、言語形式への学習者の意識を向けさせる利点があることも指摘されている。(October 23, 2002)

Skehan, P & Foster, P. (2001). Cognition and tasks. In P. Robinson, (Ed.), Cognition and Second Language Instruction. (pp. 183-205). Cambridge: Cambridge University Press.
第二言語学習者がタスクパフォーマンス中に注意できる範囲には制限がある。したがって、学習者はタスクの特徴や条件に応じて、言語の意味に注意を向けた言語使用を行うか(流暢さ)、言語の形式に注意を向け言語使用を行うかを選択する。また、言語の形式に注意を向ける際にも、リスクを犯さず正確さを保つか、リスクを犯して複雑さを高めるかを選択する。タスクに基づく言語教授アプローチでは、タスクパフォーマンス中のこのような学習者の選択的な注意を、いかに言語の形式の方に向け、正確さと複雑さのある言語使用を行わせるかという重要な課題が議論されてきた。そのため、これまでの研究動向は、タスクの特徴と条件、または、タスクの実施方法(プレ・ポストタスクの実施)が、どのように学習者のタスクパフォーマンス(流暢さ、正確さ、複雑さの観点から)に影響を与えるかが検討されてきた。どのようなタスクが第二言語教授の中で使用されていくべきかを明らかにするためにも、言語の流暢さ、正確さ、複雑さが影響を受けるタスクの難易度をどのように概念化し、それがどのようにタスクパフォーマンスに影響を与えるかを学習者の認知処理を正確に見据えながら、今後検討していくことが重要であることが論考されている。(September 29, 2002)

Doughty, C. (2001). Cognitive underpinnings of focus on form.  In P. Robinson, (Ed.), Cognition and Second Language Instruction. (pp. 206-257). Cambridge: Cambridge University Press. 
第二言語の形式教授のアプローチとして、Focus on Meaning(言語使用の意味に焦点が置かれる形式教授)やFocus on Forms(言語形式に焦点が置かれる形式教授)と区別され、Focus on Formは、入力処理や出力処理の言語処理を遮らないで行われる形式教授をさす。つまり、学習者の意識を形式、意味、使用へ同時に向ける形式教授のことをFocus on Formと呼ぶ。本論では、そのFocus on Form のあり方を、とくに作動記憶における形式、意味、使用の同時並行的な処理の特徴に焦点を当て、その処理を促進する教授的介入の可能性を、認知的な視点から理論的に考察する。そのため、これまでの研究を総括しながら次の3つのポイントで考察している。(1) 学習者は自分の中間言語と目標言語のギャップに気づく(認知的比較)ための認知的資源をもっているのかどうか、(2) 学習者の言語学習のための認知処理を遮らない教授的介入は可能なのか、(3) もし可能なら、そのような教授的介入はいつすべきなのか。これまでの文献考察から、理論的には、第二言語学習者の認知的資源は潜在的に大きく、作動記憶が作用する時間も比較的長く、焦点化された注意の外にある言語入力にも注意が向けられるのに十分な複雑性をもつことが示唆されている。また、通常は比較的自動的な言語処理であっても、完全に集約的なものではなく、形式教授の介入が促進的で妨害的でなければ、発話計画を修正することは理論上可能であることが示されている。Focus on Formの教授介入の一つとして、直接的で付随的なrecast(教師あるいは他の学習者が、学習者の文法的誤りをその場で間接的に示唆すること)が、学習者の認知的比較を促し、形式・機能・意味のマッピングに導く言語学習につながる可能性があることを示している。(September 24, 2002)

Schmidt, R. (2001). Attention. In P. Robinson, (Ed.), Cognition and Second Language Instruction. (pp. 3-32). Cambridge: Cambridge University Press. 
学習者の注意(attention)は、中間言語発達過程、中間言語の変異性、第2言語の流暢さの発達、動機・適性・学習方略などの個人差、明示的指導の役割など、第2言語習得のあらゆる側面を理解する際に必要になってくる概念であることことを、本論は主張する。Attentionの特徴は、有限で選択的であり、自発的制御に影響を受けやすく、consciousnessへのアクセスの制御、行動の制御、学習にとって必要不可欠なものである。Attentionは、一元的な現象ではなく、(1) alertness, (2) orientation, (3) preconscious registration (detection without awareness), (3) selection (detection with awareness within selective attention), (4) facilitation, (5) inhibitionの複数の下位システムからなる。Alertnessは学習者の内的動機やレディネスに関係し、orientationはinput-floodingなどの指導技術からの外的要因に影響を受ける。Detectionはalertnessとorientationによって強化され、言語処理と学習の必要十分条件である。Detectionはawarenessと異なり、detection without awarenessとdetection within focal attention accompanied by awareness (= noticing)に区別される。Attention はさらなる言語処理をfacilitateする場合とinhibitする場合があり、二者択一的に選択される。(September 11, 2002)

Skehan, P. (2002). A non-marginal role for tasks. ELT Journal, 56, 289-295. 
本論文は、タスクに基づく言語指導アプローチを批判する同誌のBrutonによる論文に反論するものである。この指導アプローチの基本概念を3つの見地から紹介しながら、本アプローチの妥当性を主張している。第1に、Longによるタスクに基づく言語指導の考えを紹介している。Longは、学習者のニーズを考慮した現実社会でのタスクに直結した教育的タスクを実施することを提唱し、どのようなタスクがいつ効果的なのかを調査する研究手法を先がけ、とくに意味交渉を促進するタスクの提唱を行った。また、タスクを言語シラバスの基盤とし、適切にタスクを選択・活用していくことで、学習者の個々の言語発達が期待できると仮定した。第2に、実際の言語授業の中でどのようにタスクを実施していくべきかを示唆するWillisらの考えを紹介している。彼らは、タスクの実施には、準備段階、計画段階、プレゼンテーション、言語への焦点化、といった段階を追った指導が重要であり、タスクの中心的な特徴として、学習者自身が表現したいものを取り上げるべきであると主張された。第3に、認知的アプローチからのタスクに関わる知見が紹介されている。(1)人間は限られた量の注意しか言語使用に付与できない。 (2)言語使用において、流暢さ、正確さ、複雑さの間で緊張関係が存在する。 (3)学習者は、言語形式ではなく意味に優先的に意識する。これらの3つの見地から、タスクに基づく言語指導は、言語観、学習観に関しこれまで明らかになってきたことに基づき、学習者の主体的な学習を重視し、自然な言語使用を優先すると同時に、言語形式への配慮する指導アプローチであることを解説している。(September 9, 2002)

Kobayashi, M. (2002). Method effects on reading comprehension test performance: Text organization and response format. Language Testing, 19, 193-220. 
読解テスト研究において、リーディングテキストのタイプは恣意的に選択されることが多く、どのようなタイプのテキストが読解テストに使用されるべきか深く追究されることはこれまで少なかった。本論では、テキスト構造の違いとテスト形式の違いが、学習者(英語熟達度の上・中・下レベル)の読解度にどのような影響があるかをみるため、754人の日本人英語学習者(大学生)を対象に実験が行われた。テキストが論理的に構成される度合いの違いによる異なる4タイプのテキストが被験者に与えられ、読解度をみるテストとして、クローズテスト、自由記述問題、要約作文の異なる3タイプのテストが行われた。その結果、クローズテストにおいては、テキスト構造の違いは被験者の読解度に影響を与えなかったが、自由記述問題と要約作文においては、構造が論理的なテキストになるほど、上位レベルの被験者の読解度がよくなることが分かった。この結果から、熟達度レベルの違いによって読解力を正しく峻別できなくなる可能性があるため、テキスト構造とテスト形式の特徴に留意して、リーディングテストを行っていく必要があることを指摘している。(August 29, 2002)

Iwashita, N., McNamara, T., & Elder, C. (2001). Can we predict task difficulty in an oral proficiency test? Exploring the potential of an information-processing approach to task design. Language Learning, 51, 401-436. 
タスクの異なる特徴が、学習者のタスクパフォーマンス、とくに言語使用の流暢さ、複雑さ、正確さに影響を与えるとする認知的アプローチによる考え(Skehan, 1998)が、スピーキングテストにおけるタスクパフォーマンスにも当てはまるのかどうかを調査する。193人の成人の英語学習者を被験者に、絵を見て物語を作るタスクを使い、被験者の発話を談話分析すると同時に、訓練を受けた試験者による評点からの分析の両方から、タスクの特徴がタスクパフォーマンスに与える影響を調査した。タスクの特徴は、視点(一人称 vs. 三人称)、親密度(here and now vs. there and then)、視覚的援助の有無、計画時間の有無により8つの異なるタイプのタスクが使用された。その結果、タスクの特徴はタスクパフォーマンスにほとんど影響を与えなかった。教室におけるタスクと違って、コンピューターの前で行うスピーキングテストの特殊性が、この結果を導いたかもしれないことを考察している。(July 30, 2002)

Gil, G. (2002). Two complementary modes of foreign language classroom interaction. ELT Journal, 56, 273-279. 
これまでのインタラクション研究では、インタラクションの特徴が自然なコミュニケーションとどれだけ近いかに研究対象が置かれてきた。例えば、referential questionsの使用、理解不能なときのみのエラー修正、意味のやりとり、などという観点からインタラクションが分析され、逆に、display questionsの使用や形式に焦点化されたエラー修正、クラスでの振り返りのための繰返し、などは不自然なコミュニケーションとして捉えられてきた。外国語としての言語授業でのインタラクションは、その言語は指導の目的かつ手段であるがゆえに、複雑な特徴をもっている。したがって、外国語授業におけるインタラクションの豊かな特徴を正確に捉えるためには、一側面から分析するだけでは本質的な特徴をうまく捉えることはできない。したがって、言語授業の特殊性を認めた上で、次の2つの異なる様態(modes)を用いてインタラクションの特徴を捉えていく必要がある。1つは、実際のコミュニケーションに近い自然な様態(natural mode)。2つ目は、形式に焦点が置かれた指導的な様態(pedagogical mode)である。前者は、指導上の明確な目的はなく、意味に焦点化されたやりとりを指す。後者は、指導上の目的をもち、形式に焦点化されたやりとりを指す。言語授業に見られる偶発的な(contingent)やりとりなどの複雑なインタラクションも、自然かつ指導的な様態から捉えることが可能であることを主張している。(July 23, 2002)

Kasper, G. (2001). Four perspectives on L2 pragmatic development. Applied Linguistics, 22, 502-530. 
第二言語学習者の語用論的能力の発達は、これまでのところ多様な観点から研究されてきた。語用論的能力とは、要求、依頼、不満などの発話行為を適切な文脈で適切な手段を用いて具現化する能力を指す。本論は、語用論的能力の習得に関するこれまでの研究動向を4つの視点からまとめている。(1) 語用論的能力と文法能力の発達の関係、(2) 語用論的能力と情報処理の関係、(3) 語用論的能力と社会文化的アプローチの関係、(4) 語用論的能力と社会化の関係。第二言語習得理論の一つの部門として、この語用論的能力の習得の解明は追究され習得理論に貢献することが期待される。また、多様な観点から実証的な研究が行われるべきであることが主張されている。(May 24, 2002)

Muncie, J. (2002). Finding a place for grammar in EFL composition classes. ELT Journal, 56, 180-186. 
ESL環境とEFL環境におけるライティング指導は、目的が異なるため、文法指導のあり方も違うべきであることを主張した上で、EFL環境におけるライティングでの文法指導のあり方を、これまでの文法指導に対する様々な主張をもとに、文法の扱いに関する次のようなガイドラインを提案している。(1) ライティング指導におけるメッセージ指向から逸脱するような文法指導を行うべきではない。文法とディスコースの機能に関連させる指導をすべきである。(2) 教師のフィードバックにおいて、文法の訂正は避けるべきである。(3) 文法に関する修正は、編集過程と関連付けるべきである。(4) 文法指導は、生徒のニーズに沿うべきである。(5) 文法は、文章を繰返し見直す中で修正されるべきであり、 そのジャンルに応じて必要となる文法に限定されるべきである。(May 9, 2002)

Mayer, R. E. (1983). Can you repeat that? Qualitative effects of repetition and advanced organizers on learning from science prose. Journal of Educational Psychology, 75, 40-49. 
繰返し提示されることにより記憶される量が増加することは検証されてきたが、繰返しによる記憶の質的変化はまだ明らかにされていない。そこで本論は、繰返しによる記憶の質的変化を調べるため、88名の女子大学生を対象に、レーダの技術に関する説明文を聞かせ、記憶を測定するために、再生テスト、再認テスト、問題解決テストの3つのテストを実施した。被験者は4つのグループに分けられた。1度だけ説明文を聞くグループ、2度聞くグループ、3度聞くグループ、そして先行オーガナイザーを与えられ1度だけ説明文を聞くグループに分けられた。その結果、次の通りになった。繰返しの回数に従い、再生テストの得点は向上し、再生される内容の違いによって、記憶される量が異なることが確認された。つまり、一般的な概念的な情報の再生量は向上するが、より専門的な詳細な情報は向上しないことが分かった。再認テストの得点は減少し、問題解決テストの得点は向上した。そのことから、被験者は繰り返すたびに、記憶された事柄が既存の知識と結び付けていく再構築化が記憶において行われていることが明らかにされた。先行オーガナイザーが与えられたグループは、複数回繰返し説明文を聞いたグループと同じような結果になった。(April 21, 2002)

Chiang, C. S. & Dunkel, P. (1992). The effect of speech modification, prior knowledge, and listening proficiency on EFL lecture learning. TESOL Quarterly, 26, 345-374. 
本論は、テキスト修正の有無、予備知識の有無、リスニング能力のレベルの違い、の3つの要因がリスニング理解とどのような関係があるのかを調査する。180人の中国人英語学習者を対象に、CELTのリスニングテストの結果から上位・下位グループに分け、英語による講義(身近なトピックの有無)を聞かせ、多肢選択問題によりリスニングの理解度を測定した。その結果、英語力上位者の方が修正されたリスニングテキストをより理解することが分かった。両グループともに、身近なトピックを含んだ講義内容の方がより理解されることが分かったが、トピックから予想しやすい内容を問うテスト項目にのみその効果が見られただけで、講義の中の細かい内容を問うテスト項目には身近なトピックの効果が見られなかった。この結果から、テスト内容によっては、背景知識があることが、リスニングテキスの理解促進に効果を発揮するとは必ずしも言えないことが明らかになった。(December 10, 2001)

Schmidt-Rinehart, B. C. (1994). The effect of topic familiarity on second language listening comprehension. Modern Language Journal, 78, 179-189. 
第一および第二言語のリスニングにおいて、背景知識は理解を促進すると考えられてきているが、本論では、身近なトピックを与えることが第二言語のリスニングにどのように影響するかを、また、その影響が学習者の英語力の違いによって異なるのかを調査する。90人のスペイン語学習者を対象に、身近なトピック(スペインの大学)と新しいトピック(公園での散歩)にリスニングテキストを分け、被験者の母語によるリコールテストを用いてリスニングの理解度が測定された。その結果、身近なトピックの理解度の方が高いことが分かった。しかし、英語力に関わらず、身近なトピックを含むテキストの理解度の方が高かったため、どのレベルの学習者が身近なトピックからの背景知識をより活用するのかは明らかにできなかった。(December 10, 2001)

Rubin, J. (1994). A review of second language listening comprehension research. Modern Language Journal, 78, 199-221. 
第二言語におけるリスニングに関するこれまでの研究結果を総括し、リスニングに影響を与える要因ごとにこれまで明らかになっていることを解説している。音声レベルでのテキストの特徴(速度や休止の有無、連続音の有無、強勢やパターンの有無など)、形態素および統語レベルでのテキストの特徴(統語的修正の有無、剰余の有無、談話指標の有無)、テキストそのものの特徴(書き言葉と話し言葉、視覚援助の有無)、活動の特徴(多肢選択、絵の選択・語彙リスト・WH質問、局部的・全体的質問、表出活動の有無)、学習者の特徴(英語力のレベル、記憶力、注意力、年齢、性差、母語における学習障害、背景知識)、リスニングプロセスの特徴(トップダウン、ボトムアップ、パラレル処理、方略、ノートの利用、方略指導、理解可能のインプットのための意味のやりとり)など。(December 3, 2001)

Dornyei, Z. & Kormos, J. (1998). Problem-solving mechanisms in L2 communication: A psycholinguistic perspective. Studies in Second Language Acquisition, 20, 349-385. 
第二言語学習者は、対話者との会話が途切れることを回避するために、スピーキングで直面する問題を何らかの方法で解決しようとする。つまり、いくつかの問題解決メカニズムが使用される。心理言語学的(言語処理を中心に)な観点から、このスピーキングにおける問題解決メカニズムの研究動向を総括し、次の4つに分類して解説している。(1) 語彙・文法・音声に関わるL2知識の欠如を補うメカニズム、(2) 言語処理の自動化の欠如からの処理時間の制約を補うメカニズム、(3) 言語表出の自己修正によるメカニズム、(4) 対話者による発話の理解の欠如を補うメカニズム。(November 26, 2001)

Foster, P. (1998). A classroom perspective on the negotiation of meaning. Applied Linguistics, 19, 1-23. 
これまでの第二言語習得研究において、意味のやりとり(negotiation of meaning)は、理解可能なインプットやアウトプットを生み出す意味で、学習者の言語習得にとって重要な役割を持つものと考えられ、効果的に意味のやりとりを生み出すタスクの種類が検討されてきた。本論文は、実験を意識しない、より自然な状態で活動が行われた場合、学習者の意味のやりとり、学習者のアウトプット、修正されたアウトプットの量が、タスクの種類(ペア・グループ活動および情報交換の要求度の違い)に応じてどのように変化するかを検討するため学習者同士のやりとりを調査した。その結果、次のようなことが明らかになった。(1) 情報交換の要求度の強弱に関わらず、ペア活動において発話量が平均して多く見られ、グループ活動ではメンバー内の発話量に著しい違いが見られた。(2)情報交換度が強いペア活動で意味のやりとりが多く見られたが、全体的にはあまりやりとりが活発に行われなかった。(3) 情報交換の要求度の強弱に関わらず、ペア活動において発話修正の量が多く見られたものの、全体的には発話修正はほとんどなかった。以上のことから、実験指向の弱い自然な形での学習者のやりとりでは、時間が消費され活動を遅くさせる意味のやりとりは、敢えて行われない可能性があることが示され、これまでの研究結果とは相反するデータが示されている。(November 19, 2001)

Dunkel, P., Henning, G., & Chaudron, C. (1993). The assessment of an L2 listening comprehension construct: A tentative model for test specification and development. Modern Language Journal, 77, 180-191. 
第一言語、第二言語に関わらずリスニングの構成要素に関する概念規定は、まだ十分に統一されていないため、リスニングテスト開発におけるリスニングの概念規定が必要とされている。本論文では、第二言語のリスニングテストにはどのような概念的要素が含まれているのかに関して、タスク要素と被験者要素の2つの要素からの試案を提供している。 (November 16, 2001)

Shohamy, E. & Inbar, O. (1991). Validation of listening comprehension tests: The effect of text and question type. Language Testing, 8, 23-40. 
本論文は、リスニングテキストと質問の質の違いがリスニングパフォーマンスへどのような影響を与えるかを調査する。リスニングテキストには、日常会話のような話し言葉の特徴が強いテキストからニュース放送のような話し言葉の特徴が弱いテキストタイプがあり、前者のテキストタイプは後者よりもその特徴から聞き取りやすいとの仮説が立てられる。また、リスニングテストで用いられる質問には、グローバルな質問とローカルな質問とに分けられ、初期レベルの学習者はグローバルなリスニング方略を使用する傾向があるとの研究報告が多いことから、ローカルな質問の方がグローバルな質問よりも答えやすいとの仮説が設定できる。これらの仮説をもとに実験を行った結果、この2つの仮説は実験結果により支持されることが明らかになった。この結果から、リスニングテストの概念的妥当性を高めるためには、異なるジャンルを含むテキストタイプが必要であることと異なるストラテジーを求める質問が必要であることが主張されている。(November 15, 2001)

Skehan, P. & Foster, P. (1997). Task type and task processing conditions as influences on foreign language performance. Language Teaching Research, 1, 185-211. 
タスクに基づく言語指導における、タスクの種類(認知負荷の違い)とタスクの実施方法の違い(@事前活動における計画する時間の有無、A事後活動におけるクラス発表の有無)が、学習者のタスクパフォーマンスにどのように影響を与えるかを調査した。その結果、主に次のことが明らかになった。@事前活動に計画の時間をとることはパフォーマンスの流暢さに影響を与える。A事後活動におけるクラス発表の有無がパフォーマンスの正確さに与える影響ははっきりしなかった。Bオンライン処理を必要とする複雑なタスクは、よりパフォーマンスの複雑さを高める傾向がある。C流暢さ、正確さ、複雑さの指標は互いに独立しており、トレード・オフ効果がある。つまり、正確さを必要とするタスクでは複雑さが低くなり、その逆も成り立つ傾向にある。(November 5, 2001)

望月正道. (1998). 「日本人英語学習者のための語彙サイズテスト」 IRLT Bulletin, 12, 27-53.
日本人英語学習者を対象とした標準化された語彙サイズテストは、今のところ存在しない。そこで、相澤(1997)によって開発された語彙サイズテストをもとに、より妥当で信頼性の高いテストに改良するプロセスを紹介している。(November 4, 2001) 

Tsui, A.B.M. & Fullilove, J. (1998). Bottom-up or top-down processing as a discriminator of L2 listening performance. Applied Linguistics, 19, 432-451. 
リーディング研究と同様にリスニングの研究では、トップダウン処理とボトムアップ処理のどちらがL2学習者のリスニングパフォーマンスの特徴をより説明する処理なのかという問題が議論されてきた。そこで、本論では、リスニングテキストと質問の2つの要素に焦点を絞り、内容が首尾一貫しているテキストと内容が一貫していないテキストの2種類のテキストを含むテスト問題とグローバルな質問とローカルな質問の2種類の質問を含むテスト問題のそれぞれの解答傾向を調査した。その結果、質問の種類に関わらず、一貫していないテキストを含む問題を正解した学習者の方が、一貫したテキストを含む問題を正解した学習者よりも総合的な英語力が高いことが分かった。テキスト内で内容が変化する一貫していないテキストを理解するためには、ボトムアップ処理に慣れている必要があるとの仮説から、リスニングにおけるボトムアップ処理の重要性が再確認される結果となった。つまり、初級レベルのL2学習者はボトムアップ処理が弱く、文脈的な手がかりに依存しがちになる。したがって、トップダウン処理に依存しすぎることなく、正確かつ迅速にインプットをボトムアップ的に処理する力を育成する必要性があることが主張されている。(October 26, 2001)

Laufer, B. & Nation, P. (1999). A vocabulary-size test of controlled productive ability. Language Testing, 16, 33-51. 
本論文は、学習者の語彙力のレベルを測定するテストの一つとして、統制的な表出語彙力テストを提案し、このテストが英語力に応じて正しく語彙力を峻別する妥当性をもつテストであるかどうかを調査した。4つの異なる学年のL2学習者グループに、4つの異なるレベル(Nation(1990)の語彙レベルテストを参考)の統制的表出語彙テストを課した。その結果、学年が上がるにつれて語彙テストの点数がきれいに高まることがわかった。また、統制的な表出語彙力テストを4つのフォーマット(互いに異なる語彙を用いた)で作成し、4つのテストが相関を示すかどうかを測定したところ、どのテスト間においても高い相関が示された。したがって、この統制的な表出語彙力テストは、学習者の語彙力のレベルを見分ける妥当なテストであることが検証された。(October 25, 2001)

Laufer, B. (1998). The Development of passive and active vocabulary in a second language: Same or different? Applied Linguistics, 19, 255-271. 
第二言語の語彙の知識は、受容語彙と表出語彙に分けられる。本論文では、受容語彙、統制的な表出語彙、表出語彙に学習者の語彙知識を分け、それぞれのレベルの語彙習得が1年間でどのように発達するか、また、お互いの発達にどのような関係があるのかを2つの学年の語彙測定から考察する横断的手法によって調査が行われた。その結果、1年間で受容語彙と統制的な表出語彙の習得は大きく進んだが、表出語彙には発達はほとんど見られなかった。また、受容語彙の発達は、上級レベルの学習者になるに従い、統制的な表出語彙の発達よりも大きくなることが分かった。受容語彙と統制的な表出語彙の発達には相関が見られたが、受容語彙および統制的な表出語彙と表出語彙の間には相関が見られなかった。この結果をさらに追究するためには、指導内容の影響、語彙習得の特徴に関するさらなる研究が必要であることが考察されている。(October 14, 2001)

Richards, J. C. (2002). Accuracy and fluency revisited. In Hinkel, E. & Fotos, S. (Eds.), New Perspectives on Grammar Teaching in Second Language Classrooms. Mahwah, NJ.; Lawrence Erlbaum Associates. 
タスクに基づく言語指導における文法指導のあり方を、これまでの研究の動向を総括しながら考察している。コミュニカティブなタスクにおける言語の特徴を問題視し、タスクにおける言語の流暢さを大切にしながら、学習者のパフォーマンスの文法的正確さを保つ方法を、第二言語習得の過程を考察した後、タスク活動に伴う事前活動・活動中・事後活動といった枠組みの中で提案している。(October 12, 2001)

古家貴雄.(1993). 「Pre-reading activity に関する実験研究の現場への教育的示唆について」 『山梨大学教育学部紀要』 第7号, 108-121. 
第二言語におけるプレリーディング活動の効果に関する実験研究の動向を概観し、各実験の結果および問題点をまとめ、現時点でのプレリーディング活動の効果に関する総括を行っている。その結果、プレリーディング活動の内容、テキストの難易度、被験者の英語力のレベル、効果を測定するテストの内容などが、プレリーディング活動の効果の有無を左右する要因と考えられる。本論では、とくに、プレリーディング活動の内容と被験者の英語力のレベルに焦点を絞って考察している。プレリーディング活動は、テキストの全体的な意味を活性化させるトップダウン的なものとテキスト内で使用される語彙の意味を理解させるボトムアップ的なものとに区分される。使用されるテキストの難易度が低い場合には、トップダウン的な活動に効果があるものの、難易度が高いテキストの場合には、トップダウン的な活動にはあまり効果が見られない、また、英語の上級者の場合、難易度の高いテキストにとってプレリーディング活動の効果が見られるのではないかという考察を行っている。 (October 11, 2001)

Todd, R. W., Mills, N., Palard, C., & Khamcharoen, P. (2001). Giving feedback on journals. ELT Journal, 55, 354-359. 
言語学習や授業の反省などを学習者自身が綴るジャーナルは、言語学習および教員養成の重要な道具の一つとして捉えられてきている。しかし、教師側がこのジャーナルに対しどのようなフィードバックを与えることが最も有効なのかはまだ十分に議論されていない。そこで、本研究では、タイの大学院でのスタディースキルに関する授業におけるジャーナルのやりとりの内容と学生に対するインタビューを行って、どのようなタイプのフィードバックが学生にとって有効と感じ取られているかを調べた。その結果、教師からの全体的なコメントだけでは十分ではなく、特定の箇所に対する焦点化されたコメントであればコメントの内容に関わらず、ためになるフィードバックであると学習者から受けとめられている傾向にあることが明らかになった。(October 10, 2001)

Guariento, W. & Morley, J. (2001). Text and task authenticity in the EFL classroom. ELT Journal, 55, 347-353. 
現実のコミュニケーションに近い形の本物の (authenticity) 教材が外国語教育において活用されるようになってきているが、その議論はテキストに焦点が置かれ、言語活動自体の自然さはあまり議論されてこなかった。活動自体を自然なコミュニケーションに近づける方法として、(1) 言語項目を練習する目的ではなくメッセージに焦点の置かれた本物の活動の目的をもつこと、(2) 現実社会で実際に行われる行動を活動に取り入れること、(3) クラスルームでの生徒とのインタラクション自体が生のコミュニケーションであること、(4) 生徒の主体的な活動への関わりをもたせること、の4つのポイントを実現することが考察されている。(October 5, 2001)

Dornyei, Z. & Malderez, A. (1997). Group dynamics and foreign language teaching. System, 25, 65-81. 
外国語学習における学習者によるグループダイナミクスの重要性に焦点を当て、グループの形成、グループの発達、グループの特徴、物理的環境の影響、グループ・リーダーとしての教師の役割、の観点から、グループダイナミクスの原理を解説し、第二言語教室への具体的な示唆を提示している。(October 2, 2001)

Carrell, P. L. & Wise, T. E. (1998). The relationship between prior knowledge and topic interest in second language reading. Studies in Second Language Acquisition, 20, 285-309. 
リーディングにおける背景知識とトピックへの興味の度合いが読解に及ぼす影響は、これまでL1およびL2のリーディング研究において検討されてきているが、2つの要素は混同して実験されることが多かった。そこで、本論では、被験者のもつ背景知識とトピックへの興味の2つの要因をより明確に区別し、その要因が読解とどのような関係があるかを104人の英語学習者を対象に調査した。その結果、背景知識とトピックへの興味は高い相関は見られず、背景知識があるトピックが必ずしも興味があるものではないことが分かった。また、背景知識と興味の度合いが高いときに読解率が高いとは必ずしも言えず、背景知識と興味の両方が低いときに最も読解率が低いことが明らかになった。性差から見ると、男性の方が興味のもてるトピックにおいてより高い読解率を示し、女性は興味の低いトピックに対しても良い読解率を示すことが分かった。(October 1, 2001)

Robinson, P. (2001). Task complexity, task difficulty, and task production: Exploring interactions in a componential framework. Applied Linguistics, 22, 27-57.
タスクに基づく言語指導における最近の研究では、タスクをどういう基準で配列するかが問題視されてきている。学習者のパフォーマンスはタスクのもつ3つの要素(複雑性、条件、困難度)から影響を受けると考えられる。本論では、タスク内で説明する要素の数とタスクへの馴染みの程度に基づき、簡単なタスクと複雑なタスクに分け、タスクの複雑性の違いによって、学習者のパフォーマンスがどのように異なるのか、学習者がタスクをどの程度難しく感じるのか、タスクの中でどの程度インタラクションが起きるのかを調べるため実験を行った。その結果、複雑なタスクの方は、語彙的に多様なパフォーマンスを引き出し、簡単なタスクは流暢さのあるパフォーマンスを引き出すことが分かった。また、複雑なタスクの方が、簡単なタスクと比べ、インタラクションをより引き出し、学習者にとって難しいと感じられることが明らかになった。タスクの複雑性、とくにタスクに備わる認知的要素を、タスク配列の基準の一つとして参考にできることを主張している。(September 27, 2001)

Ortega L. (2001). Current options in graduate-level introductory SLA textbooks. Second Language Research, 17, 71-89. 
大学院レベルの授業において使われる第二言語習得に関する導入として相応しい教科書を4つ紹介している。Gass & Selinker (2001)、Larsen-Freeman & Long (1991)、Lightbown & Spada (1999)、Mitchell & Myles (1998)の4冊を取り上げ、各図書の長所および短所を率直に述べた上で、各図書を推薦している。(September 25, 2001)

谷口すみ子 (1995). 「語彙の学習における自己関与の重要性」 The Language Teacher, 19 (2), 31-33 & 35. 
第二言語としての日本語習得における語彙習得プロセスにおいて、どのような語彙がアクセスされやすいのか、またどのような想起の手がかりが用いられやすいのかを日本での留学生を対象に自由連想法により調べた。その結果、初級者は身の回りのエピソード的手がかりをもとに語彙を想起し、中級者は意味概念的な手がかりをもとに語彙を想起する傾向があることが明らかになった。このことから、初級レベルの学習では、自分の経験を通して得られた語彙が記憶・想起されやすい。学習が進むにつれて、エピソード的連鎖から意味概念のグルーピング化がなされていくことが指摘されている。(September 25, 2001)

高橋正夫.(2001). 『実践的コミュニケーションの指導』 東京:大修館. 
新学習指導要領で示された実践的コミュニケーションの概念を言語の使用場面と言語の働きという観点から潜在的な問題点の指摘も含めて解説を行った上で、構造・形式を学習者に意味のある場面のなかで練習させ、言語の働きに関わる行動目標を学期および単元ごとに掲げ、それに関連した多様な言語活動を実施していくことを提案している。その提案を実現させるため、授業のなかで言語活動をどのように実施していけばよいのかを4つのステップ(言語活動、タスク活動A、タスク活動B、実践的コミュニケーション活動)に分けて具体的に示している。(September 17, 2001)

Robinson, P. (1995). Task complexity and second language narrative discourse. Language Learning, 45 (1), 99-140. 
第二言語習得理論を背景にタスクに基づく言語指導の有効性が主張されてきているが、タスクの配列の基準となるタスクの分類とそれらの難易度に関する実証的データがこれまでのところ十分に得られていない。そこで、本研究では、タスクの難易度によって言語パフォーマンスの特徴(言語の正確さ、複雑さ、および流暢さ)に違いが見られるのかどうかを調べるため、身近な状況を説明させるHere-and-Nowの内容を扱うタスクと現状から少し離れた状況を説明させるThere-and-Thenの内容を扱うタスクを用い、12名の成人英語学習者を対象に物語を口頭で作らせる実験を行った。本研究では、There-and-Then型タスクは認知的負荷が高いため、Here-and-Now型タスクよりも、命題、統語、文法および語彙的に複雑な文をより多く表出させるとの仮説を立て実験を行った。実験結果から、There-and-Then型タスクでは、文法、語彙的に複雑な文は多く表出されたものの、命題、統語的に複雑な文は表出されず、発話数も少ないことが明らかになった。There-and-Then型タスクは、認知的負荷が高く流暢さを求めるタスクではなく、文法、語彙面での正確さを高めるタスクであることは確認できたが、言語発達を促すと考えられる言語の複雑さを要求するタスクであると断定するには至らなかった。 (September 14, 2001)

Bygate, M. (1999). Task as context for the framing, reframing and unframing of language. System, 27, 33-48. 
学習者の言語発達のために、授業の中でどのようにタスクを体系的に活用していくべきかをこれまでの文献をレビューしながら主張している。授業では様々なタスクが実施されるが、タスクの特徴とそこでの学習の関係を把握し体系的にタスクを実施していくことが重要であることを指摘し、以下の4つの観点から論考がなされている。(1) タスクは期待通りの言語使用をもたらすとは限らないこと、(2) 言語使用の流暢さ、複雑さ、正確さはタスクの種類により左右されること、(3) 同じタスクを繰り返すことやプレ・ポストタスクを活用することが言語発達をバランスよく促すこと。タスクというフレームを体系的に実施することが、内容から形式への意識の移行を促し、言語の流暢さ、複雑さ、正確さを統合するという意味で、学習者の知識を繰返し形作ることになると指摘している。(September 13, 2001)

Skehan, P. (1998). Task-based instruction. Annual Review of Applied Linguistics, 18, 268-286. 
タスクに基づく言語指導(Task-Based Language Teaching)に関わるこれまでの研究動向を、TBLTの理論的背景にあるこれまでの主張、タスクタイプの分析、TBLTに関する実証的研究、TBLTの効果測定の基準、TBLTに関する指導の提案の観点から様々な文献をレビューし、これからのTBLTに関する研究の方向性を示している。(September 11, 2001)

Foster, P. & Skehan, P. (1999). The influence of source of planning and focus of planning on task-based performance. Language Teaching Research, 3, 215-247.
タスクに基づく言語指導における事前活動(タスクの内容を事前に準備し計画すること)の効果がどのようにタスク中のパフォーマンスに影響を与えるのかという問題が最近注目を浴びている。本論では、事前活動における計画が誰の主導のもとで行われるのか(個人型、教師主導型、グループ型)という要素と何についての計画か(内容または言語)という要素によって、タスク中のパフォーマンスの質に差が見られるのかどうかを検討した。そのため、66人のEFLクラスを対象にディスカッションを行い、タスク中の学習者のパフォーマンスを複雑さ、正確さ、流暢さ、ターンの長さの観点から分析調査した。その結果、教師主導型のグループは正確さに最も優れバランスのよいパフォーマンスを示し、個人型は、複雑さ、流暢さ、ターンの長さの面で最も優れていたことが分かった。また、グループ型のグループは望ましいパフォーマンスは見られなかった。計画の内容によってパフォーマンスの質に影響が見られるほどの差は得られなかった。このことから、タスクに基づく言語指導での事前指導のタイプが重要な要素であり、そこでの教師の役割は予想よりも大きいことが主張されている。(September 11, 2001)

Tusi, A.B.M. & Ng, M. (2000). Do secondary L2 writers benefit from peer comments? Journal of Second Language Writing, 9, 147-170.
L2のライティング指導における教師および他の生徒からのフィードバックの効果がこれまで議論されてきているが明確な結論は今のところでていない。これまでの研究では高等教育レベルでの調査が多かったため、本論文では、香港の中等教育レベルの英語学習者(27人)に焦点を当て、プロセスライティングにおける教師および生徒からのフィードバックが修正に与える効果を、質問紙、作文分析、インタビューによって調査した。その結果、教師からのフィードバックが他の生徒からのものよりも好まれ、その後の修正により多く取り入れられていることが質問紙および作文の分析より明らかになった。しかし、インタビューによる質的調査の結果、教師のフィードバックはマクロ的なテキスト構造の修正に役立つ一方、生徒からのフィードバックは、読み手をより意識させ作文の不十分な点に気づかせ協同学習を促進するという意味で価値があると学習者によって認識されていることが分かった。このことから、教師および生徒同士のフィードバックはそれぞれの長所を生かして相補的に活用することが望ましいことが指摘されている。(September 10, 2001)

Yule, G., Powers, M., & Macdonald, D. (1992). The variable effects of some task-based learning procedures on L2 communicative effectiveness. Language Learning, 42, 249-277. 
タスクに基づく言語指導に関する研究では、これまで学習者の言語的要素に対するタスクの効果が注目されることが多かった。本論では、タスクによってもたらされるコミュニケーションの質に着目し、タスクの内容がその後のパフォーマンスにどのように影響を与えるかに焦点を絞って実験を行った。実験では、ペアによるタスクを3回連続して行うが、一回目のタスク後にディスカッション活動をはさんだ(3回のタスクを通して情報の送り手と受け手を固定された)。ディスカッション活動では、送り手のみを集め、聞き手の理解をどのように向上させることができるかを議論するグループと、情報伝達のやりとりにおける送り手の発話の言語的誤りのみに関して議論するグループに分けられた。その結果、その後のタスクにおいて、前者のグループでは聞き手の立場に立った言語のやりとりが多くなり、後者のグループでは聞き手の立場に立ったやりとりが少なくなり、送り手本位のやりとりが多くなされることが明らかになった。タスクの内容がその後のタスクパフォーマンスに大きな影響を持つことが考察されている。(September 7, 2001)

Kormos, J. (2000). The role of attention in monitoring second language speech production. Language Learning, 50, 343-384.
第二言語学習者の注意と言語使用の正確さの関係が注目されることは多かったが、学習者が言語表出する最中に行う自己修正(モニタリング)と学習者の注意がどのような関係にあるのかに関してはまだ十分に検討されていない。そこで、本研究は、どのように学習者の注意はL2言語表出の際の自己修正に向けられるのか、また、その注意の向けられ方は学習者のレベルによって異なるのか、母語での言語表出の場合と異なるのかどうかを、30人のハンガリー人英語学習者と10人のハンガリー人母語話者を対象にインフォメーションギャップタスクを用い、タスク後の追想記録により調査した。その結果、L1言語使用においては、言語的修正のうち、語彙に関するものが文法に関するものよりも多く、L2言語使用においては、両者の修正の数には差は見られなかった。また、学習者のレベルの違いによる学習者の自己修正の特徴には大きな差は見られなかった。(September 5, 2001)

Izumi, S. & Bigelow, M. (2000). Does output promote noticing and second language acquisition? TESOL Quarterly, 34, 239-278.
Swain (1995)のアウトプット仮説の一つである、言語表出によって学習者が表現したいことと自分の力のギャップに気付き、その後のインプット理解の際に文法構造をより意識することが第二言語習得の促進につながるとする仮説を検証するため、本研究では、18人の大学生を被験者に、仮定法過去完了を目標構造として実験を行った。実験群には、自由作文をさせた後に目標構造を含んだモデルを読ませる第1段階と、モデル文を読ませた後に文章再構築タスクをさせる第2段階を行った。統制群は、自由作文と文章構築タスクの言語表出に関しては実施しなかった。第1と第2段階終了後に、目標構造の習得を測定するため、多肢選択問題と描写タスクによる筆記テストを行った。その結果、実験群と統制群の差はほとんど見られなかった。つまり、言語表出に予想される学習者の気づきを促進する効果は確認できなかった。言語表出における学習者の意識は、必ずしも目標構造に向けられるとは限らず、言語表出させる活動の種類に実験結果が大きく左右される可能性が高いことを考察している。(August 31, 2001)

Cabrera, M. P. & Martinez, P. B. (2001). The effects of repetition, comprehension checks, and gestures, on primary school children in an EFL situation. ELT Journal, 55, 281-188.
学習者が受け取るインプットを聞き取りやすく修正することが言語理解および言語習得を促進するとの研究報告がこれまで数多くなされてきている。インプット修正には、インプットそのものを聞き取りやすく修正する言語的修正 (短い易しい文、簡単な語いの使用)と聞き手とのやりとりを通してインプットを修正する相互作用的修正(言語的修正だけでなく、繰返し、理解確認の質問、ジェスチャーの使用)が学習者の聞き取りに影響を与えるものとされる。 これまでのインプット修正に関する研究には、ESL環境における研究が多く、EFL環境における研究が少なかった。そこで、本論では、英語学習者であるスペイン人小学生60名を対象に、2つのおとぎ話を異なる2つの方法(言語的修正のみによる聞き取りと、相互作用的修正による聞き取り)によって読み聞かせた。その結果、相互作用的修正による聞き取りをしたグループの方が、内容を確認するテストにおいて高得点を示した。そのことから、EFL環境における子どもの場合でも、インプットの言語的修正だけでなく聞き手とのやりとりを通した繰返しや理解確認の質問、そしてジェスチャーといった要素が、子どもの聞き取りに大きく貢献することが明らかになった。(August 29, 2001)

Williams, J. (1999). Learner-generated attention to form. Language Learning, 49, 583-625. 
習者の言語形式への意識が第二言語習得を促進するとの研究報告がなされてきているが、これまでの研究では、教師あるいは教材が意図的に学習者の言語形式の意識を高める研究報告が多く、学習者が主体的に言語形式を意識するケースを調査する研究が少なかった。そこで、本論では、学習者自らが言語形式を意識するケースを質的に調査するために、英語力の異なる8人の大学生または大学院生を対象に、授業中の様々な活動において学習者が主体的に言語形式に意識している談話(言語要素に関して学習者主導で会話を始めているもの)を録音し分析を行った。その結果、コミュニカティブな授業において学習者自ら言語形式に意識を向けるケースが頻繁に見られた。学習者の英語力が高くなるほど言語形式に意識を向ける頻度が多くなり、教師に言語に関する援助を求めるよりも学習者同士で問題を解決することが多くなることが分かった。また、文法的なものよりも語彙的な言語要素の方が、より頻繁に学習者によって意識されることが明らかになった。(August 1, 2001)


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