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最近読んだ文献                

Ellis, R., Basturkmen, H., & Loewen, S. (2001). Learner Uptake in Communicative ESL Lessons. Language Learning, 51, 281-318. 

学習者の誤りに対する教師のフィードバックに対し学習者が何らかの反応をすること (教師から指摘された文法的誤りを修正する試みなど) をアップテイク (uptake) と呼ぶ。この学習者のアップテイクは、十分に習得されていない誤った文法形式を意識的に修正し表出する意味で、第二言語習得を促進する一つの要素として捉えられている。そこで、本論では、コミュニカティブなクラスにおける教師のフィードバック (focus on form) に対する学習者のアップテイクの特徴を調べるために、ニュージーランドのESLクラス成人24人を対象に、授業中の教師と学習者とのやりとりを録音し分析した。その結果、コミュニカティブなクラスであっても、教師と学習者のコミュニケーションの流れをさえぎることなく、教師による形式に対するフィードバックは数多くなされていることが分かった。また、学習者主導型のフィードバックが教師主導型よりも学習者のアップテイクを多く生み出し、より正しく表出されていることが分かった。(July 25, 2001)

 

Swain, M. & Lapkin, S. (2000). Task-based second language learning: the uses of the first language. Language Teaching Research, 4, 251-274. 

第二言語学習における母語の使用は、社会文化的アプローチの観点によれば、認知過程の重要な媒体としての役割をもつと考えられ、母語の使用が第二言語発達を促進するとの研究報告もなされている。そこで、本論は、フランス語イマ―ジョンプログラムの8年生(22人)を対象にペアワークによる2つの異なるタスク (jigsaw taskとdictogloss task) を実施し、タスク中の母語使用の割合がタスクの結果にどのように影響するのかを調査した。その結果、2つのタスクともに、タスク中の母語使用が多いほどタスクの結果が良くなるとはいえないことが明らかになり、2つの異なるタスク間での母語使用の割合にも差は見られなかった。母語使用のタイプとしては、タスクを達成するための母語使用の割合が多く、タスクに関係のない母語使用の割合は少ないことが明らかになった。(July 17, 2001)

 

Storch, N. (2001). How collaborative is pair work? ESL tertiary students composing in pairs. Language Teaching Research, 5, 29-53.

ペアおよびグループ活動は、学習者同士の意味のやりとりや協同学習を促す意味で、第二言語習得にとって利点があることが主張されてきた。本論文では、ペア活動が本当に協力的なのかどうか、またペア活動の特徴が学習にどのように影響を与えているのかを調査するため、大学および大学院レべルのESLクラスの学習者を対象に、ペアによるライティング活動を実施し、ペア活動において交わされた会話の特徴(言語的特徴・テキスト構築に関わる行動的特徴・メタ言語的特徴)とライティングの質(文の長さ、複雑さ、エラーの割合)の関係を検討した。その結果、必ずしもすべてのペアが協力的にタスクを行っているとは言えず、協力の程度がペアごとに異なることが明らかになった。また、ペア活動における協力の程度が、ライティングの質に影響を与えていることも明らかになった。(July 9, 2001)

 

Thomas, M. (1994). Assessment of L2 proficiency in second language acquisition research. Language Learning, 44, 307-336.

第二言語習得研究において、研究の対象になる学習者がどのようなレベルの言語能力 (proficiency) をもっているのかを記述することは、研究結果を他の研究結果と比較検討したり、結果を一般化したりするための重要な要素である。そこで、主要な学術誌の研究論文のなかで、どのように学習者の言語能力が記述され扱われてきているかを調査した結果、(1) 研究者の印象に基づくもの、(2) 学校内の学年に基づくもの、(3) 学校内で実施されたテストや研究者が作成したテストの結果に基づくもの、(4) 標準化テストを利用するもの、の4つに区分できることが分かった。また、全体的にみて、(1)と(2)のタイプが多いことも明らかになった。第二言語習得研究における研究手法を改善し研究結果を客観的に解釈するためにも、学習者の言語能力レベルの明記の必要性が、今後さらに考慮されるべきであることが主張されている。(July 5, 2001)

 

Peirce, B. N. (1995). Social identity, investment, and language learning. TESOL Quarterly, 29, 9-31.

これまでの第二言語習得研究では、動機付け・性格・自信などの学習者の情意的要因と学習者の習得の関係は固定的に捉えられてきた。本論では、その固定的な関係を批判的に捉え、カナダへの移民者とのインタビューから得たデータをもとに、第二言語学習は可変的な社会的な自己確立 (social identity) の過程であることを主張する。つまり、第二言語学習とは母語話者と非母語話者の間における社会的な力関係のなかで主体性 (subjectivity) を模索し、言語学習への自己投資 (investment) を行うことにより、話す権利 (right to speak) を獲得していく社会的な自己確立の過程であることを主張している。(July 2, 2001) 

 

Ellis, R. (2001). Investigating form-focused instruction. In R. Ellis (Ed.), Form-focused instruction and second language learning (pp. 1-46). Malden, MA: Blackwell.

最近の第二言語習得における文法指導 (form-focused instruction) の研究では、どのようなタイプの文法指導が習得に影響を与えるかという問題に焦点が置かれてきている。本論文では、文法指導はこれまでどのように定義され概念化されてきたか(focus-on-forms, planned focus-on-form, incidental focus on formの3タイプ)、また文法指導はどのように研究されてきたのか(実証型と解釈型の2つのタイプ)、そしてどのように習得そのものを捉えて文法指導の効果が検証されてきたのか(文法性判断テスト、理解、表出の3つのタイプ)という3つの観点からこれまでの文法指導に関する研究の方向性と先行研究に潜在する研究手法の問題点を概観している。 (June 29, 2001)

 

大下邦幸編著.(2001). 『コミュニカティブ・クラスの理論と実践』 東京:東京書籍.

授業そのものを一つのコミュニケーション活動と捉え、英語を媒体として授業を行うことにより、英語知識(正確さ)の獲得とコミュニケーション能力(流暢さ)の獲得の両方を可能にする授業のあり方を、生徒の教材への自己関与、生徒の意見・考えのクラスでの共有、生徒の心を動かすメッセージなどのキーワードを基に提案を行う。生徒のもつ背景知識を上手く活用しながら、教科書や言語活動のトピックや文法項目への生徒の自己関与度を高めたり、生徒一人一人異なる個性や創造性を引き出すインパクトのある発問をしたりして、生徒の知的好奇心を高める指導方法の提案を行い、教育実践で役立つ具体的な指導方法を数多く提示している。(June 11, 2001)

 

Turner, C. E. & Upshur, J. A. (1995). Some effects of task type on the relation between communicative effectiveness and grammatical accuracy in intensive ESL classes. TESL Canada Journal, 12, 18-31.

言語活動において流暢さ(コミュニケーション効率)と正確さ(文法的正確性)がどのような関係にあるかを、130人のフランス語を第1言語とする英語学習者を対象に、2つの異なるタイプのスピーキング活動を用いて調査した。絵を見せて一文を表出させるタスク1と短いアニメーションビデオを見て1分間のナレーションをさせるタスク2を行う被験者の発話内容を録音し、異なるタスクにおいて流暢さと正確さがどのような関係にあるのかを、著者らが独自に作成した測定基準に従い検討した。その結果、一文を表出させるタスク1では高いレベルの流暢さを得るためには文法的な正確さが必要であることが分かり、比較的長い文を表出させるタスク2では高いレベルの流暢さを得るために必ずしも文法的な正確さが必要ではないことが明らかになった。このことから、流暢さと正確さの関係はタスクの種類に依存していることが明らかになり、コミュニカティブな活動の中、文法の正確さを高めるためには、文法エラーがコミュニケーションの失敗に結びつくような短めの発話を求める言語活動を行うことが必要であると主張されている。(June 1, 2001)

 

Tuz, E. (1993). From controlled practice to communicative activity: Does training transfer? Temple University Japan Research Studies in TESOL 1, 97-108.

英語の形容詞の配列と前置詞を目標構造として行う文法練習 (controlled practice) の結果、その後に行われるメッセージに焦点を置いたコミュニケーション活動 (free communicative activity) においても目標構造が正確に表出されるかどうかを、12人の日本人高卒生を被験者にして調査した。その結果、十分な文法練習を行ったにもかかわらず、その後のコミュニケーション活動において、必ずしも目標構造が正確に表出されないことが明らかになった。そのことから、文法に焦点を置いた練習とメッセージに焦点を置いた活動を連携させることが一般的な授業展開とされていることと、文法練習の結果がすぐにコミュニケーション活動での表出につながるものと期待されていることに対し疑問視する主張がなされている。(May 30, 2001)

 

Aljaafreh, A. & Lantolf, J. P. (1994). Negative feedback as regulation and second language learning in the zone of proximal development. Modern Language Journal, 78, 465-483.

3人の英語学習者の英作文を教師が個人指導を行う過程を録音し、その過程を通して教師からのエラー修正がどのように学習者の言語学習に影響を与えるかを分析した。その結果、ヴィゴツキーのZone of Proximal Development理論で主張される要素が明らかになることが示された。(1) 協力者である教師の直接の援助がなくても教師の存在 だけで学習者の作文の修正への取り組み方が変わる。(2) 同じ英語力をもつ学習者であっても、教師からの修正援助への気づき方が異なり、それぞれの学習者には個々の修正の仕方が存在し、異なった修正援助の仕方が必要である。(3) 教師からの修正援助による学習者の言語学習は、相互的依存的な学習から個人的独立的な学習へと進み、学習した内容はより広い文脈に一般化される。(4) 協力援助者である教師の援助は徐々に減少しかつ援助が必要なときにのみ示される、などのことが明らかになった。(May 29, 2001)

 

Skehan, P. (1998). "Chapter 6: Implementing task-based instruction." In A cognitive approach to language learning. Oxford: Oxford University Press.

メッセージを重視したタスクに基づく言語活動と文法構造を重視した言語活動にはそれぞれ学習者の第二言語習得を促進する点で問題を抱えているが、その問題を解決するためにメッセージを維持しつつ文法構造にも学習者の意識を向けさせる方法を提案する。とくに、 (1) バランスの取れた目的を達成するためのタスク選定と連携、(2) 学習者の意識を高めるタスクのあり方、の2つのポイントに焦点を絞って方策を提案する。前者は意味のやりとり、タスクの難易度、タスクの目的(正確さ、複雑さ、流暢さ)に応じたタスク選定が重要であり、後者は事前活動、事中活動、事後活動のあり方や、個々のタスクの連携や学習者自身によるパフォーマンスのモニタリングなどが重要であることが、これまでのタスクに関わる研究結果に基づいて紹介されている。(May 28, 2001)

 

Johnson, K. (2000). What task designers do. Language Teaching Research, 4, 301-321.

指導経験の豊富な教師 (ST) と指導経験の少ない教師  (NST) の間に、タスク設計過程にどのような特徴の違いが見られるかを調査するために、実際にタスク設計を依頼し、設計に基づく信念や手順に関するインタビューなどを行った。その結果、次の3つの観点からSTとNSTの特徴がまとめられる。(1) コントロール:STはタスク設計を幅広く計画する傾向にあり、NSTは深く狭く計画し始める傾向にある。また、NSTは所要時間やタスクのつながり (task frame) に気がとられ、タスクの中での言語機能 (task function) やインフォメーションギャップなどのタスク形態 (task genre) といった特徴に意識が向けられない。(2) 設計スキーマ:STとNSTとの特徴に大きな差は見られないが、言語志向のものとタスク志向のものに分けられる。 (3) その他:言語使用のシミュレーションを行う、教師用指導書を念頭においたタスク設計、本物度 (authenticity)とタスクの実用度との妥協を探るなどタスク設計上の行動が明らかになった。 (May 24, 2001) 

 

Ohta, A. S. (2000). Rethinking interaction in SLA: Developmentally appropriate assistance in the zone of proximal development and the acquisition of L2 grammar. In J. P. Lantolf  (Ed.), Sociocultural theory and second language learning (pp. 51-78). Oxford: Oxford University Press.

大学レベルの日本語学習者2人の口頭によるインタラクションを録音し、初級者が自力で解決できるレベルと上級者の援助によって可能になるレベルの差(the zone of proximal development)が、協同作業的学習における初級者の発達過程にどのように作用するかを調査した。その結果、上級者の援助は必ずしも一方的なものではなく、むしろ初級者の要求があってから援助を始めたり、初級者の発達に応じて援助の量を減らしたりするという繊細な特徴をもつことが明らかになった。また、初級者によるエラー修正は、他者からの修正から独力での修正に次第に移行し、初級者は繰返し行われるインタラクションの中で独立した学習者に変わっていくことが明らかになった。(May 22, 2001)

 

Newton, J. (2001). Options for vocabulary learning through communication tasks. ELT Journal, 55, 30-37.

メッセージの伝達を重視したコミュニカティブタスクのなかで未習語彙の学習をどのように促進させるかという課題を解決する指導方法を事前・事中・事後活動の3つの段階に分け、ペアやグループを用いた語彙学習を提案する。事前活動では、タスクの話題やトピックに関連するキーワードをグループでリストアップする活動、タスクで用いられる未習語彙の意味を辞書を使ってグループで調べる活動、定義を未習語彙のリストを共同で組み合わせる活動が紹介される。事中活動としては、記憶保持のため未習語彙とのかかわり (involvement)を重視し、未習語彙の定義を所持した生徒がほかの生徒に説明する活動、グループの中のメンバーのみの力で未習語彙の意味を文脈などから推測させる活動などが挙げられる。事後活動では、タスク中に出会った新出語彙を5つに限ってリストアップさせその定義や例文を書かせる活動が提案されている。(May 18, 2001)

 

Porto, M. (2001). Cooperative writing response groups and self-evaluation. ELT Journal, 55, 38-46.

著者自身のこれまでのライティング指導における問題点(人工的な読み手・目的意識、時間的な過度の制限、作文へのフィードバックのなさなど)を反省し、ライティング指導に関する最近のアプローチを取り入れ、グループによる共同作業の一部としてのライティング活動を紹介する。この活動では、次の2段階のプロセスと自己評価を繰り返しながら生徒の作文修正を行う。(1) 内容に関連する共同作業(不明確な箇所の指摘、意見に対する感想、主張されている主題の推測、良い点または改善点などの指摘など)、(2) 文法に関する共同作業 (すばらしい表現・単語の指摘、分からない表現・単語の指摘、複雑な表現の箇所の指摘と改善案の提案など)。この共同作業のライティング活動を通して、読み手を強く意識すると同時に、生徒同士の異なる観点からによるライティングの存在に気付き、他者および自己評価の結果、自分の作文に対し責任感を抱くようになった。(May 16, 2001)

 

Han, R. & Ellis, R. (1998). Implicit knowledge, explicit knowledge and general language proficiency. Language Teaching Research, 2, 1-23.

明示的知識と暗示的知識はどの程度まで分離して測定が可能か、また、明示的および暗示的知識と一般的な英語力の関係はどの程度あるかを、(1) 絵を見せて文を瞬時に口頭で表出させるテスト(暗示的知識)、(2) 制限時間のある文法性判断テスト(期間を置いて2度実施)(暗示的知識および明示的・暗示的知識)、(3) 制限時間のない文法性判断テスト(明示的分析的・暗示的知識)および文法知識に関するインタビュー(メタ言語知識)、(4) TOEFL(明示的・暗示的知識)、(5) SLEP(暗示的・明示的知識)を使って検証した。(1), (2), (3)のテストに関しては、動詞句補文構造(動詞の後に続く動名詞、不定詞)を判断させるテストが用いられた。因子分析の結果、明示的知識と暗示的知識は独立して測定可能であることが明らかになり、制限時間の有無が文法性判断テストにとって重要であることが判明した。また、(4)や(5)の一般的な英語力を測定するテストに関し、(4)は明示的知識(分析的)と、(5)は暗示的・明示的知識の両方と相関があることが明らかになった。メタ言語知識に関しては、(4)や(5)との相関は低かった。(May 15, 2001)

 

Basturkmen, H. (2001). Descriptions of spoken language for higher level learners: The example of questioning. ELT Journal, 55, 4-13.

質問をすること(questioning)は、情報入手・意見交換など会話への参加を積極的に促すものであるにもかかわらず、EFLの市販教科書では十分にかつ適切に取り扱われていない。質問に焦点を絞り市販教科書を分析した結果、当該質問文に関わる場面の設定や情報が十分示されていない点、質問によく使われる例文が羅列されるのみで重要度が示されていない点、疑問文には話者の言外の意味が含まれることがあることが示されていない点など、多くの欠点が指摘される。また、質問を含む話し言葉のコーパスを分析した結果、実際の質問の特徴として、質問の構造(トピックの導入、質問文・質問の正当化)があること、疑問文が連続して発せられることがあること、単なる疑問ではなく疑問文に発話者の示唆が含まれることもあることなど多様な特徴があることが分かる。このことから、上級者レベルの教材においては、質問に関する微妙な機能や意味などを適切に取り扱う必要性が主張されている。 (May 11, 2001)

 

Jones,R. E. (2001). A consciousness-raising approach to the teaching of conversational storytelling skills. ELT Journal, 55, 155-163.

ストーリー・テリング活動を使って日常会話能力を向上させる指導技術を紹介している。日常会話には、過去に起こった逸話を取り混ぜて会話を行うことがよくあるが、英語学習者は、逸話を混ぜながら話すことに慣れていないことが多い。そこで、一連の絵を使ってストーリー・テリング活動を行いながら、逸話の構造(abstract, orientation, remarkable event, reaction, coda)、逸話における便利なフレーズ(e.g., you see; anyway; now; right?) などに意識させる言語活動が会話能力育成に有効であると主張されている。(May 9, 2001)

 

Lynch, T. (2001). Seeing what they meant: Transcribing as a route to noticing. ELT Journal, 55, 124-132.

言語活動後に発話内容を書き起こす作業が、学習者の気付き(noticing)を促進させる活動として適切かどうかを検証するため、成人英語学習者8人を対象に、以下の一連の活動を行った。ペアによる口頭でのロールプレイを行った後、その発話内容を書き起こさせ、その書き起こした原稿を基にパートナーと修正しあい、最後に教師がその原稿を修正した。その結果、文法・語彙・言い換えなどペアによる修正は多岐にわたり適切に行われ、学習者の関心も低くないことが分かった。また、ペアによる修正の割合は教師による修正よりも多く、語彙の分野に関する教師のフィードバックが必要ではあるものの、ペアによる書き起こし作業は、事後活動(post-activities) の一つとして適切であることが示されている。(May 1, 2001)

 

Millard, D. J. (2000). Form-focused instruction in communicative language teaching: Implications for grammar textbooks. TESL Canada Journal, 18, 47-57.

コミュニカティブな言語教授に沿った文法指導が、現在市販されている成人用の13のESL文法教科書の中でどのように扱われているかを、(1) 目標文がどの程度文脈の中で提示されているか、(2) 文法指導に付随する活動がどの程度コミュニカティブなものになっているか、(3) 文法説明が単なる形式のみならず機能や社会言語学的な視点をどの程度提示しているか、(4) 教師にとって実用度はどの程度あるか、という4つの観点から分析した結果、教科書によって結果には幅があり、センテンスレベル以上での文脈の中での文法の提示や、機能・語用論的な説明などのコミュニカティブな言語教授に沿った文法の提示などまだまだ不十分であることが示されている。(April 25, 2001)

 

Guest, M. (2000). "But I have to teach grammar!": An analysis of the role "grammar" plays in Japanese university English entrance examinations. Language Teacher, 24(11), 23-29.

日本の大学入試において文法がどれだけ重視されているかを、ネイティブスピーカーである著者の観点から、センター試験と国立大学2次試験の英語問題を分析し、その結果、入試問題の英語問題が単なる文法を問うものではなく、幅広い英語のスキルを測定していると主張されている。高校英語において文法指導が重視されている傾向は、大学入試の内容によるのではなく、高校教師の判断によるものであると結論づけられている。(April 23, 2001)

 

Schmidt, R. (1992). Psychological mechanisms underlying second language fluency. Studies in Second Language Acquisition, 14, 357-385.

Fluency(流暢さ)を支える心理メカニズムを、1) automatic/ controlled processing, 2) Bialystok's dimension of language development, 3) Anderson's ACT theory, 4) restructuring, 5) instance theory, 6) strength theory, 7) chunking theoryの観点から概観すると、fluencyの基礎としてmemory-based / rule-based automaticityのいずれか、または、両者が共存し機能していると主張される。今後、事例研究やプロトコル研究など、L2 fluencyの発達およびメカニズムのさらなる理解のために、多角的な研究が実施される必要がある。(April 19, 2001)

 

萩原裕子. (1997). 「言語理論からみた失語症:心的演算処理の型をめぐって」『最新 脳と神経科学シリーズ第7巻:失語症からみたことばの神経科学』高倉公朋・宮本忠雄(監修)東京:メジカルビュー社.

脳の情報処理の性質は、多層結合ネットワークによる処理と記号による表示とその変換アルゴリズムからなる規則に基づく言語情報処理が必要とする2種機構説が主張されている。異なるタイプの失語症患者による英語動詞の過去時制における規則変化と不規則変化の処理、また日本語形容詞派生名詞の処理から、この主張の検証が試みられ、立証されてきている。(April 18, 2001)

 

Rivas, R. M. M. (1999). Reading in recent ELT coursebooks. ELT Journal, 53, 12-21.

リーディングに関する3つの市販教科書を、相互作用的読み、および、リーディングの3段階の観点から分析した結果、3社の教科書とも、現在のリーディング理論を反映した活動が採用されていることが明らかになった。(April 15, 2001)

 

Miura, T. (2000). A system for analyzing conversation textbooks. JALT Journal, 22, 6-26.

日本の高等学校で使用されている16のオーラル・コミュニケーションAの検定教科書を (a) トピックの一貫性 (b) シラバスのタイプ (c) ドリルの使用頻度 (d) 自己表現活動の有無 (e) 言語活動のタイプの観点から分析する尺度を提案しながら、オーラル・コミュニケーションの指導に相応しい言語活動のあり方を示唆している。(April 12, 2001)

 

Ellis, R. (1999). Item versus system learning: Explaining free variation. Applied Linguistics, 20, 460-480.

Free variation ("No look." "Don't look." など同じ文脈にもかかわらず異なる形態で同じ意味を表す学習者言語の可変性 (variation)のこと) は、system learningの前段階に起こるitem learningの証拠であり、同じ意味を違う形でも表現してみたいと思う学習者の表現欲求 (expressive need) がfree variationを生み出している原因であると考えられる。また、free variationが次第に体系化される原因としては、場面にあった社会的形態を使い分ける必要性 (sociolinguistic need) があることや、新しい形態を次々に習得するに従い、緩くしか結びついていない形態を再構築するよう内なる言語的圧力 (internal linguistic pressure) が作用することが挙げられる。このような考えは、最近の認知科学の知見と合致し、第二言語習得におけるfree variationの存在およびその役割は、従来考えられていたよりも重要であることが主張されている。(April 6, 2001)

 

Ellis, R. (1997). The empirical evaluation of language teaching materials. ELT Journal, 51, 36-42

本論は、言語教師による教材評価を効果的かつ体系的に行うため、使用教材の中のあるタスクに焦点を絞り、実証的に評価する具体的手順を提案している。(April 3, 2001)

 

Ketko, H. (2000). Importance of "multiword chunks" in facilitating communicative competence and its pedagogic implications. Language Teacher, 24/12, 5-11.

コミュニケーション能力育成における multi-word chunksの役割を論じ、日本人英語学習者にとってスピーキングの流暢さを高めるためにこの適切な使用が不可欠であると結論付けた上で、教室におけるmulti-word chunksの指導方法を具体的に提案している。(March 25, 2001)

 

Ernst,G.(1994). "Talking circle": Conversation and negotiation in the ESL classroom. TESOL Quarterly, 28, 293-322.

民族学的手法を用いて第二言語授業での教師と生徒の談話の特徴を分析する。談話の段階を追って、トピックの展開、社会的要求、コミュニケーション上の機能の観点から教師と生徒の談話を分析した結果、教師発話の目的、トピックの内容、参加の援助などが談話の特徴に大きな影響を与えることを示唆する。生徒が積極的に教師との談話に参加するカギとしては、生徒の経験をもとに生徒に談話をコントロールさせ、教師は明確化を求めるながら足掛かりを与え、同じ授業の中での議論の内容、参加への要求働きかけ次第で談話の質と量が大きく左右されることを教師が把握することが重要であることを示している。(March 22, 2001)

 

Lantolf, J. P. (2000). Second language learning as a mediated process. Language Teaching, 33, 79-96.

第二言語学習を社会文化的なアプローチから捉えなおし、第二言語学習を、他者とのさまざまな社会的やりとりの中で言語使用を学び、自分のものとしていく媒体過程(mediated process)であると考える。その過程には、熟達者と新米のやりとり、学習者同士のやりとり、第一言語の使用を通した社会的過程、プライベートスピーチを通した自己的過程、ポートフォリオやタスク、ビデオやコンピューターを利用した道具的過程などを足掛かりにして、学習者は言語を自分のものとして内在化していくと捉えることができることを、これまでの文献をレビューしながら概観する。(March 202001)

 

Ellis, R. (2000). Task-based research and language pedagogy. Language Teaching Research, 4, 193-220.

第二言語習得研究および言語教授におけるタスクに関わる議論を心理言語学的および社会文化学的な視点から概観し、その2つの視点における議論の長所と短所を指摘する。前者はタスクの特徴の違いが言語使用および習得にどのように影響するかといった問題を追求するが、学習者の内的要因や教師の役割、一連の指導手順の一つとしてのタスクの役割を無視する。後者は学習者・教師・環境を重要視しながら、学習者と教師がどのように協力しタスクを達成し、その共同作業の過程がどのように第二言語習得に影響を与えるかを追求する。しかし、共同作業の過程と第二言語習得の直接的な関係までは明らかにされてはいない。タスクの目標が学習者のコミュニケーション効率性の向上と第二言語習得の促進の2つにあることを踏まえながら、前者の議論はタスク作成や実施の計画性に貢献し、後者の議論はタスクの即興性に貢献することを示し、これら2つの視点からのタスクを基盤とする教授の議論の必要性を主張している。(March 13, 2001)

 

Ellis, R. (1999). Learning a Second Language Through Interaction. Amsterdam: John Benjamins Publishing Company.

第二言語習得におけるインタラクションの役割を、インタラクション仮説、社会文化理論、処理レベルモデルの3つの観点から捉えなおし、インタラクションをintermentalおよびintramentalな活動を促す意味での第二言語習得への貢献を実証的に検討している。また、第二言語習得を促進するインタラクションの指導上の要は、インタラクションの量および質を高めることであるとし、インタラクションの質を高める要素として、学習者が談話をコントロールすることが、とりわけ重要であることを示唆している。(March 10, 2001)

 

Nassaji, H. (2000). Towards integrating form-focused instruction and communicative interaction in the second language classroom: Some pedagogical possibilities. Modern Language Journal, 84, 241-250.

メッセージ指向のタスクを実施しながらも学習者の意識を言語の形式に向けさせる指導方略をこれまで主張されてきた理論的研究をもとに、タスク作成と実施過程の両面から提案している。(March 1, 2001)

 

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