あ酸化反応は有機工業プロセスの約30%に関連する基盤反応であり、特にアルコールやアミンを酸化することで得られるカルボン酸やイミンは、機能性色素や材料・医薬品などの先端分子を合成する際の鍵中間体として産業的・学術的にも重要です。しかし、従来法の多くは爆発性の過酸化物や有毒な重金属酸化剤を量論量またはそれ以上使用する環境負荷の大きなプロセスでした。そこで、より安全かつ環境にやさしい資源循環型プロセスとするために、空気中に無尽蔵に存在する循環資源である酸素を酸化剤とした触媒的酸化を鍵反応とする持続可能な反応開発が求められています。
本研究では、不均一系触媒や有機触媒を用いた触媒的酸化系を構築し機能性分子のone-pot合成への応用を検討しています。現在までに、高い酸化電位を持つ「金」を鍵触媒とする金属複合触媒系を設計することで、穏和な条件下で金触媒の再利用を可能にするアルコールやアミンの環境調和型酸化法の開発し、本手法を応用することで機能性モノマーとして生分解性プラスチックへの利用が期待されるフランジカルボン酸や、含窒素医薬基盤分子の高収率・高選択的合成に成功しました。
また、サリチル酸誘導体を有機触媒とするアミンのメタルフリー酸素酸化法を見出し、さらに系中で発生した不安定イミンを種々の反応剤と連続的に作用させることにより、従来法では合成が困難であった多彩なβ-ラクタム誘導体やキナゾリン誘導体などの医薬基盤分子のワンポット合成を優れた環境調和性で実現しました。
