【一般書】射鵰英雄伝

中国の作家,金庸の書いた武侠小説です.

武侠小説とは,武術の達人の活躍や生き様を描いた,中国文学のジャンルの一つです.金庸は,中華圏では知らない人はいないと言われるほどの最も有名な武侠小説の作家で,作品の中では武術の躍動感や登場人物の悲喜が生き生きと,スケールの大きな物語の中で描かれます.

 

射鵰英雄伝は,三部作を構成する物語群の第一の作品になります.朴訥とした人柄の主人公が数奇な運命をたどりながら中国武術の神髄に触れていく,王道の冒険小説です.

私は,あまり小説の中で描かれる情景を映像化しながら読むことはしない(できない)のですが,金庸の物語では不思議なことに強烈なビジュアルイメージが自然にわきます.巨大な壺を指先で投げ合う不思議な力比べを行う奇人,断崖絶壁を駆け上がって戦い続ける武人,かつて敵対しながら最後は抱き合って笑いながら死んでいく達人など,実直で豪快な登場人物達の活躍の様子は,読後もまるで映画を観たかのように思いだされます.

 

映画「マトリックス」で有名になった撮影技術のワイヤーアクションは,元々は中華圏で多用されていた技術とされています.ハリウッド映画でスピード感のあるアクションの実現に使われるそれとは異なり,中国映画では独特のテンポを持ったアクションの展開に用いられるのですが,金庸の武侠小説を読んで初めて中国における武術アクションのイメージがよく理解でき,ああいった映画はこの武侠小説の世界を体現しているのだ,ということに合点がいったことがあります.主要な登場人物が中国人監督のハリウッド映画でモチーフにされたりするなど,現代中国の娯楽文化を理解する上でも役に立ちます.

2017年11月19日|ブログのカテゴリー:一般書