研究内容

これまでに取り組んでいる主な研究テーマを紹介します.

深層学習を用いた衛星撮影画像の分析による地震被害の即時検知

大地震が生じた際に,人命救助などの対応を適切に取るために必要となる被害情報の収集には,現在も大きな労力と時間を要しています.そこで,地震が起きた直後に被害状況を迅速に把握するための技術として,人工衛星から撮影された画像を人工知能によって分析する手法を開発しています.近年に発展した人工知能技術である深層学習技術をベースに被害検知に特化した機械学習モデルを構築し,衛星撮影画像から住宅1棟1棟の被害を分析することにより,地震発生後すぐに地域の被害状況を把握する仕組みの実現を目指しています.

 


データ駆動型手法による短期降雨予測

豪雨災害が頻発する我が国の現状の中で,降雨量を局地的に予測することは防災上重要な課題です.降雨予測の手法には,物理現象をモデル化した微分方程式の数値解に基づく数値予測と,現象の定常性を仮定した降雨域の外挿に基づくナウキャストの大きく2種に大別されますが,いずれの手法においても精度が落ちる予測時間帯が存在します.こうした点を補完するための手法として,近年では観測データの機械学習モデルなどを利用するデータ駆動型手法の適用が研究されています.

本研究では特に,データの空間的な特徴を抽出する畳み込み演算と,時系列的な関係性を学習する再帰的ネットワーク構造を組み合わせた深層学習モデルであるConvolutional Recurrent Neural Networkやその発展的モデルを用いて,ナウキャストなどで対象とされる5-30分先の降雨量の短期予測を試みています.

 

  Conv-LSTMモデルによる降雨予測の概念図           入力データ(左)に対する5分後の降雨分布の予測結果(中)と実際の5分後の降雨量(右)


 

多数の地震動群の情報を集約した代表的な設計地震動の設定

社会基盤構造物が設計される際は,地震時の揺れ(=地震動)に対する安全性を評価するために,仮想的な地震動に対する構造物の挙動が数値シミュレーションなどから確認されます.この時に用いられる仮想的な揺れは設計地震動と呼ばれ,設計地点で想定される地震動を代表するものである必要があります.設計地点とよく似た条件で観測された多数の地震動記録群や,様々な想定での数値シミュレーションから生成される多数の仮想的な地震動が用意されたときに,それらの地震動群の持つ重要な情報が抽出・集約された代表的な設計地震動を設定するための研究を行っています.

主な研究成果

- Miyamoto, T. and Honda, R.: Synthesis of representative wave of spectrum-fitting input motions based on iterative learning procedures, Int. J of Earthquake and Impact Engineering, Vol.1, No.1/2, pp.159-173, 2016. DOI:10.1504/IJEIE.2016.10000978

- 宮本崇,本田利器:JS divergenceに基づく地震動波形のクラスタリング手法による観測地震動記録群の分類,土木学会論文集A1(構造・地震工学),Vol.72,pp.I_810-I_820,2016.


大規模並列計算による甲府盆地の地盤震動解析

地震が起きた際にどの地域がどの程度揺れるかを想定することは,防災対策を考える上で重要な情報となり得ます.並列化された非線形有限要素法によって想定東海地震に対する甲府盆地の地盤震動解析を行い,地域ごとの揺れやすさや地盤の変形量を解析しています.

主な研究成果

宮本崇,入原渉,鈴木猛康,藤田航平,市村強:3次元非線形地盤震動解析を用いた堆積層における地盤ひずみの集中効果の検証,土木学会論文集A1(構造・地震工学),Vol.72,pp.I_768-I_776,2016.


ディープラーニングを用いた大規模物理探査記録の高効率処理

地域の揺れやすさを評価する際は,正確な地盤構造を知ることも重要になります.地盤構造を推定する物理探査手法の一つである微動探査法は,計測の容易さから広く利用されるようになっており,特に近年では多点観測記録や長期観測記録の利用が進んでいます.こうした大規模な量の観測記録を処理する上で,従来は目視で行っていた非定常的なノイズの少なく解析に適した時系列区間の抽出をディープラーニング技術で自動化することによって,解析時の時間的ボトルネックを解消し大規模な物理探査を推進するための研究を行っています.