【一般書】不安は自由のめまい

以前の書評に載せたSF小説集「息吹」の最後にある短編です.

 

人生の分岐点で違う選択肢を取ることでありえた「もしもの世界/パラレルワールド」にいる人と会話ができる,プリズムと言う名称の装置が存在する設定の下での物語です.

理系には色々な意味でなじみ深い量子力学の知見が元になっていて,今の自分と異なる選択をしていたらどうなるのかを知ろうとする人,装置を悪用しようとする人など,パラレルワールドの存在を介したいくつかの出来事が描かれます.

 

作者はSF的な設定とストーリーの統合が非常に上手く,終盤の展開が特に秀逸でした.「日々の選択を通して,私達の人格はアップデートされている」というメッセージには説得力があり,度々読み返したくなるものです.

2022年04月15日