山梨大学 圧電フロンティア研究ユニット

圧電単結晶育成

担当:田中 功
所属:クリスタル科学研究センター
専門:結晶工学

 

トピックス

研究室所属学生(深沢育哉さん 修士課程2年)が「グリーンエネルギー変換工学」第6回国際セミナーで奨励賞を受賞

深沢育哉さん(大学院修士課程グリーンエネルギー変換工学特別教育プログラム1年、指導教員:田中 功教授)が2017年9月13日〜15日に小海リエックスホテル(長野県)で開催された「グリーンエネルギー変換工学」第6回国際セミナーにおいて研究「Crystal Growth of Hybrid Improper Ferroelectric Sr3Zr2O7(ハイブリッド間接型強誘電性Sr3Zr2O7単結晶の育成)」でPoster Award(ポスター賞)を受賞しました。

 

研究概要

 圧電体、イオン伝導体、超伝導体などの機能性材料の機能向上、新機能創成および諸物性の機構解明のために、それらの単結晶をフローティング・ゾーン(FZ)法やフラックス法により育成しています。また、機能性材料単結晶の実用化を目指して大型で高品質な単結晶を育成する技術の開発も進めています。圧電体に関しては、以下の研究を行っています。

◯新規圧電機構解明のためのSr3Zr2O7単結晶の育成

 Sr3Zr2O7は、隣同士のZrO6八面体が長軸(c軸)に対する逆方向の回転と短軸(a軸またはb軸)に対する逆方向の回転が組み合わせによって分極が生じて強誘電性が発現する新しい強誘電性(ハイブリッド間接型強誘電性(Hybrid Improper Ferroelectricity HIF))と考えられています。この現象を解明するための精密な結晶構造解析や物性測定には単結晶が必要です。現在、SrCl2を溶剤に用いたフラックス法により20 μm程度の大きさの単結晶を育成することに成功しています。1 mmサイズを目指して育成条件を更に最適化しています。また、溶融法によるSr3Zr2O7大型単結晶育成も行っています。Sr3Zr2O7は、SrZrO3と液体の分解溶融することがわかり、SrO過剰な溶媒を用いて溶媒移動帯域溶融(Traveling Solvent Floating Zone: TSFZ)法により数ミリサイズ以上の大型単結晶の育成にもチャレンジしています。

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図1 Sr3Zr2O7の結晶構造変化
図2 フラックス法により
育成したSr3Zr2O7単結晶

◯浮遊帯域溶融(Floating Zone : FZ)法による圧電体大型単結晶の育成

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図3 FZ法により育成した単結晶の一例.
上からBa0.985Sr0.015TiO3, BaTi4O9, CaTiSiO5, SrTa2O6.

 BaTiO3は、70年以上前に発見された強誘電体ですが、フォトリフラクティブ (Photorefractive: PR)効果を有し、このPR効果を利用すると1cm角の単結晶に現在の1000倍以上のデータ記録ができるホログラフィックメモリーへの応用が期待されています。しかし、BaTiO3には構造相転移があり、普通の融液からの冷却では六方晶系の常誘電体が生成します。そこで、我々は、BaTiO3中のBaの一部をSrで置換することにより正方晶系の強誘電性単結晶を育成することに成功しました[1]。そのほかに、マイクロ波強誘電体BaTi4O9[2, 3]、反強誘電体CaTiSiO5[4]、無置換及びBa置換SrTa2O6[5]、ニオブ酸ストロンチウムバリウムSr1-xBaxNb2O6[6, 7]などの圧電体結晶の育成に成功しています。

 

圧電体に関する主な研究業績

[1] H. Kojima, et al., J. Crystal Growth, 155, 70-74 (1995).
doi.org/10.1016/0022-0248(95)00189-1 
[2] I. Tanaka, et al., J. Crystal Growth, 76, 311-316 (1986).
doi.org/10.1016/0022-0248(86)90376-3 
[3] I. Tanaka, et al., J. Materials Sci., 24, 959-962 (1989).
doi.org/10.1007/BF01148784 
[4] I. Tanaka, et al., J. Crystal Growth, 89, 169-174 (1988).
doi.org/10.1016/0022-0248(88)90160-1 
[5] I. Tanaka, et al., J. Crystal Growth, 99, 837-840 (1990).
doi.org/10.1016/S0022-0248(08)80036-X 
[6] L. Galambos, et al., J. Crystal Growth, 167, 660-669 (1996).
doi.org/10.1016/0022-0248(96)00322-3 
[7] S. Erdei, et al., J. Crystal Growth, 167, 670-680 (1996).
doi.org/10.1016/0022-0248(96)00323-5