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  希少生物の保護と環境保全  > ホトケドジョウの保護①

説明文1

トウカイナガレの生息地である豊川水系では「設楽ダムの建設」が予定されている(左)。ダム建設によってそこに棲むトウカイナガレが絶滅する可能性がある。赤紫色がダム湖に水没する部分。黄色はトウカイナガレの生息が確認された所、灰色は確認できなかった所。  

説明文2

ダム建設の影響を強く受ける生息地から安全な生息地へと移植することで、トウカイナガレを救うことができる。しかし、移植を行う上で、「遺伝的攪乱(遺伝子汚染)」と「生息に適した環境」の2点は考慮しなければならない。  

説明文3

「生息に適した環境」を探るために、愛知県北設楽郡設楽町のダム建設予定地周辺で生息地3箇所(緑の輪) 、非生息地3箇所(黒の輪)を選んで比較した。  

説明文4

餌の種類や量が、生息できるか否かを決めているのではないかと予測し、底生動物を年3回調査した。

 

説明文の5

トウカイナガレの胃内容物を調べると、主に底生動物を食べていることがわかった。    

説明文の6

2006年3月25日の底生動物の目レベルの構成。上3つがトウカイナガレの生息地、下3つが非生息地の結果。生息地、非生息地に限らず、カワゲラ、カゲロウ、トビケラ、ハエの幼虫等の底生動物の種類や量は豊富で、各々の調査地点の間での相違はあったものの、生息地、非生息地の間では相違いはなかった。

説明文の7

トウカイナガレの捕食者あるいは競争相手となる、主に魚類の調査を行った。 

説明文の8

カワヨシノボリ(トウカイナガレとほぼ同じような場所いるが、競合しあっているのか、何かしらの譲り合いをしているのかわからない)、アブラハヤ、イワナなどが採集された。アオグロハシリグモはナガレホトケドジョウの天敵と言われる。    

  

説明文の9

非生息地の一つはどんな魚類も棲んでいなかった。別の非生息地では魚食性の強いイワナやヤマメが生息しており、強い捕食圧があるだろうと推定された。トウカイナガレを捕食する可能性のあるアオグロハシリグモは生息地、非生息地に限らず生息していた。      

説明文の10

気温,水温,水位を1時間ごとに計測する自動記録計を用いて調べた。

説明文の11

非生息地(下の4つのグラフ)の2箇所では、しっかり固定したにもかかわらず、自動記録計が激流によって流された(矢印)。生息地(上の4つのグラフ)では記録計が冠水することはあったが(矢印) 、流されることはなかった。水温は生息地と非生息地ともにトウカイナガレの生存を脅かすほど高くならなかった。    

説明文の12

生息地(右)では増水、減水がゆるやかで、非生息地(左)では急激であった。これが生息できるか否かを左右している可能性がある。    

説明文の13

トウカイナガレは急激な水位変化や強い流れの起こる場所では生息できない可能性が高いので、国土地理院発行の地図を用いて平均勾配を調べた

説明文の14

トウカイナガレは平均勾配が20%を超える場所(赤で示した)には生息しなかった。  

説明文の15

治水ダム建設予定地のトウカイナガレの移植先として、国の名勝・天然記念物に指定されている鳳来寺の参道に沿って流れる細流を第一候補として考えている。    

説明文の16

鳳来寺の沢でも近隣のまるこめ沢でも、トウカイナガレの生存を脅かす水温にはならなかった。赤が気温、青が水温。    

説明文の17

移植候補地鳳来寺の沢と近隣のまるこめ沢の底生動物の種類数と個体数の季節変化。鳳来寺の沢とまるこめ沢ともにトウカイナガレが数多く生息し、好適な環境だと思われた。底生動物も種類数・個体数ともに多かった。    

説明文の18

鳳来寺の沢では、3人で30分間採集を行い、概ね20匹以上のトウカイナガレを得た。一方、まるこめ沢では、事前調査で数多くのトウカイナガレを確認したが、年間を通じて個体数が少なく、個体密度を調べることができなかった。    

説明文の19

トウカイナガレの個体全長とその頻度を表した。どの年においてもかなりの個体を捕獲することができ、鳳来寺の沢では年間を通して安定して大小様々な個体が生育しているということがわかった。    

説明文の20

移動平均の近似曲線を描いてみると、どの年度においてもいくつかのピークを確認することができ、5年間安定して多世代が繁殖していると考えられる。    

説明文の21

先程のグラフを、月別にわけるとこのようなグラフになる。まず、63mm以上の個体数は非常に少ないことがわかった。また、4月から6月までは全長30mm以下の個体はあまり見られず、8月に30mm以下の個体が多くみられるようになることから、これらは3月から6月頃に孵化した個体が、成長したものであると考えられる。30mm以下の個体は2月までみられるので、トウカイナガレの繁殖期はかなり長いと推測することができる。

説明文の22

鳳来寺の沢の上流と下流の勾配はそれぞれ20%,16%(赤の矢印)であり、まるこめ沢の上流、下流はそれぞれ8%と4%で(黄色の矢印)あった。鳳来寺の沢の方がまるこめ沢より急勾配であるため、水位変化が激しいようにみえるが、実際には穏やかであった。鳳来寺の沢が階段状の地形であるためと考えられる。