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 淡水貝類による水質浄化  > 水質浄野外実験

説明文の1

野外実験  

説明文の2

第3段階として、先行研究で浄化能力が高く、多くの個体を比較的容易に入手できるタテボシガイを比較的閉鎖的な玉諸公園内の池に設置し浄化能力を検討した。タテボシガイをマーキングし、殻長・殻高・殻幅・湿重量を3ヶ月ごとに測定した。  

  

説明文の3

池内に閉鎖的な水域を作るため、縦横3mの骨組みに高さ1mの透明なビニール製のシートをまきつけた囲いを作成した。縦45㎝横90㎝の柵とカゴを用意し、柵には網で作ったポケットを装着しポケットにタテボシガイを入れた。カゴにはタテボシガイが本来生息している底生環境を模すため、砂を入れその上にタテボシガイを置いた。これらを池の中に設置した各閉鎖区画に取り付けました。  

説明文の4

矢印で示したように設置した。設置した池内の位置を地図上の☆マークで示した。  

説明文の5

左側がタテボシガイを入れた囲い、右側がタテボシガイを入れていない囲いの写真。タテボシガイを入れた囲いの方が水がきれいになっていることがわかる。    

説明文の6

二枚貝の移植は2011年11月4日に行った。移植した二枚貝の3ヵ月毎の殻長、殻高、殻幅、湿重量の平均値。データはより正確な値を得るために、最終的に生存していた90個体から算出した。2011年11月から2012年11月における全ての測定項目において成長が見られた。    

説明文の7

移植した二枚貝の3ヶ月間の成長量。殻長・殻高・湿重量については2月から5月に大きく成長した。湿重量は5月から8月にはあまり増加しなかった。

説明文の8

近藤(1992)はタテボシガイの亜種であるイシガイの殻長成長を自然水系において記録しており,1ヶ月の殻長成長は平均0.14mmであった。本研究でにおいて、タテボシガイの1ヶ月の殻長成長は平均0.13mmであり,自然水系における二枚貝と同程度であると言え、タテボシガイが健全に生育していることが示された。    

説明文の9

タテボシガイを移植後取り出さなければ単に有機物を投入しただけになってしまうため、ある程度二枚貝が成長した後に回収する必要がある。成長の大きい時期に移植することで水中の有機物をより多く固定し、水質浄化に貢献できる。繁殖時期に移植すると精子や卵を体外に放出するため、結局有機物を排出することになる。また、生態系に配慮してタテボシガイの繁殖を防ぐことも必要である。以上のことから、成長時期と繁殖時期に焦点を当てて移植時期を検討していく必要がある。    

説明文の10

タテボシガイの亜種であるイシガイのグロキディウムの放出時期は4~8月である。本研究でタテボシガイの湿重量の増加が少なかった春季から夏季は繁殖期であり、この時期には濾過摂食により得たエネルギーが生殖に使われたと考えられる。また、生殖を行わない若い個体を用いることで、時期に関係なく二枚貝を移植することができる。    

説明文の11

青木ら(2011)は真珠養殖に用いられるアコヤガイの成熟状態を把握する方法を確立するため、閉殻力とタンパク質量、グリコーゲン量、筋肉量の関係を調査した。閉殻力を調べることで,二枚貝の生理・栄養状態を把握することができると考えられる。この方法によって二枚貝を選定し、より健康なものを移植することによって死亡率を下げることができると思われる。    

説明文の12

柵に取り付けたネットに二枚貝を入れて設置したのは、二枚貝をある程度成長させてから回収する必要があるからである。移植して成長させた後に回収することで、自然水系から有機物を除去し、水質浄化を適切に行うことができる。本来二枚貝は砂泥に潜って底生生活を行うので,ネットを使った場合死亡率が高くなる可能性があり,今後さらに設置法を工夫する必要がある。  

  

説明文の13

2016年5月27日から浄化効率を比較するため設定を変えた6つの閉鎖区画を玉諸公園内の池にを設けた。濁度と透視度の変化を1ヶ月ごとに測定し、成長量を3ヶ月ごとに計測した。  

説明文の14

各閉鎖区画は次のように設定した。Co:対照実験用に何も入れない区画、A:カゴにタテボシガイ50個体を入れた区画、B:網にタテボシガイ100個体を入れた区画、C:網にタテボシガイ50個体を入れ、水草と同伴させた区画、D:網にタテボシガイ50個体を入れた区画、PG:凝集剤(ポリグルタミン酸)を導入した区画。  

説明文の15

左側のグラフが濁度、右側のグラフは透視度を表している。区画Dの12月と1月を除いて、すべての区画で対照実験に比較して濁度の低下及び透視度の上昇が見られた。    

説明文の16

凝集剤を用いた区画PGでは水質の改善は見られたが、ほとんどの場合でタテボシガイを入れた区画のほうが水質が良くなり、水質浄化には貝類を用いた方が効果的であった。    

説明文の17

カゴにタテボシガイ50個体入れた区画Aと網にタテボシガイ50個体入れた区画Dでは、底生環境を模したAの方が水質が良くなった。

説明文の18

網にタテボシガイ100個体入れた区画Bと網にタテボシガイ50個体入れた区画Dでは、個体数の多いBの方が水質がよくなり、実験で使用した閉鎖区画の体積では、タテボシガイ100個体を入れた方が効果的であった。    

説明文の19

網にタテボシガイ50個体入れて水草と同伴させた区画Cと網にタテボシガイ50個体入れた区画Dでは、水草を同伴させたCの方が水質が良くなり、植栽した水草が窒素やリンを固定することで相乗的に浄化効率が向上したと思われた。    

説明文の20

全ての閉鎖区画で2016年5月から2017年4月にかけて平均殻長、平均殻高、平均殻幅は増加したが、平均湿重量のみ9月に減少し、1月に上昇した。平均湿重量が減少したのは、濾過摂食により得たエネルギーが、殻長、殻高、殻幅の成長に使われ、さらに繁殖期に入ったタテボシガイの生殖に使われたためと考えられる。    

説明文の21

梅津、上田、古川(1967)は海産のムラサキイガイ(Mytilus edulis)に餌となる藻類を区別する選択能力があるか否かを解明するため、3種の藻類(緑藻と珪藻)を与え、濾過率を調べた。藻類の種類によって濾過率が異なり、二枚貝が選択能力をもつことが明らかとなった。したがって、どのような藻類が生息しているか事前に調査することも、水質浄化の効果を予測するために必要であると思われる。    

説明文の21

実際に水質浄化に貝類を導入する場合以下のことに注意しなければならない。