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 希少生物の保護と環境保全  > ホトケドジョウの保護②

説明文の1

ホトケドジョウ類を絶滅から救うために、これまでに日本各地のホトケドジョウ類の遺伝学的な関係を調べ、保護すべき単位、すなわち保全単位を明らかにした。トウカイナガレが開発によって絶滅することがないように、その分布を詳細に把握し、生息に適した環境を生態学的に調べてきた。また、遺伝子汚染を回避して、適切な移植を行うために、遺伝学的な解析を行ってきた。今後慎重に移植を行い、その後移植地でトウカイナガレが健全に繁殖していることを事後アセスメントによって確認する予定。開発事業に伴って、事前調査・移植・事後アセスメントを行う必要がある。  

説明文の2

生態学低的調査について  

  

説明文の3

どのくらいの個体数を移植可能か?それを知るために標識再補法によって鳳来寺の沢の個体数推定調査を行った。6月にタモ網・トラップを利用してできるだけ多くの個体を採集し、蛍光樹脂を背中と尾に注入し放流した。背中の標識は体長を、尾は採集地点をそれぞれ表す。放流から一晩以上置き、各地点で3人ずつ30分間再捕獲した。以降は2カ月ごとに再捕獲を行った。  

説明文の4

2010、2011年度の調査地点は階段状の地形で、各地点の高低差は約2m。下流から順に、広範囲に浅い階段状の細流がある地点1、深い水の溜まりのある地点2、狭い水の溜まりのある地点3、浅く広い水の溜まりのある地点4で、地点1〜4全体の流程は約30m。  

説明文の5

標識再補法により推定された個体数 。地点1から4を合わせると、約30mの間に265〜513匹生息していると推定された。    

説明文の6

推定個体数の月ごとの結果を示した。推定個体数は、2010年度も2011年度も、12月まで上昇傾向にあり、2月になると減少するという点で類似していた。2010年度と2011年度の結果に有意差はなく、データに再現性がみられた。    

説明文の7

調査期間中に成長した個体と、地点を移動した個体が見られた。成長個体については、4cm以上の個体では1年間での成長は1cm以下であることがわかった。移動個体については、下流部に向かって移動する個体は見られたが、上流部に向かって移動する個体は見らなかった。

説明文の8

2012、2013年度は新たな地点での調査を行った。流程は約47m。下部は小石・砂で覆われた浅い箇所が、上部・中部に比べて多かった。水深は深い時でも1mほど。    

説明文の9

調査地点において、6月にタモ網・トラップを利用して個体を採集し、61個体の全長を測定した後、後頭部・背部・尾部に蛍光樹脂を注入し、放流した。蛍光樹脂は赤・オレンジ・緑・青の4色であり、その樹脂の配置によって、個体識別した。放流から一晩以上置き、各地点で3人ずつ30分間再捕獲を行った。以降は2カ月ごとに採集・記録を行った。    

説明文の10

流程約50mの間に、229から1088匹生息していると推定された。最も重要なのは、死亡する個体や新たに生まれ増える個体がいない、標識を行い放流した6月の結果だが、253~448匹生息していると推定された。今年度2月は標識個体の再捕獲数が0であったため、値が無限大となった。沢全体に移植できる個体数の許容範囲は非常に大きいと推定された。    

説明文の11

2012度は移動個体を確認することはできなかったが、2013年度は移動個体を1個体確認することができた。この個体は、現在調査している地点よりも約40メートル上流にある、2010年、2011年度に調査を行っていた地点から下流に移動してきた個体であり、再捕獲時には2mmの成長が見られた。    

説明文の12

数字横の括弧内は上が2012年度に、下が2013年度に再捕獲した標識個体数。6月の標識時に40mm台・50mm以上の全長だった個体より、標識時に全長が30mm台であった個体はその後の成長量が大きいことがわかった。30mm台の個体は、短期間でより大きく成長すると考えられる。    

説明文の13

6月に放流してから2ヶ月ごとの再捕獲時の全長と、標識時の全長を比べた。成長量3mm以上の個体を赤色で示した。    

説明文の14

6月に放流してから2ヶ月ごとの再捕獲時の全長と、標識時の全長を比べた。成長量3mm以上の個体を赤色で示した。    

説明文の15

2014年度の10月は標識個体の再捕獲数が0であったため、値が無限大となった。推定個体数の値が大きくなっているのは標識した個体が移動・もしくは死亡し、標識個体そのものの数が減少したためだると考えられる。    

説明文の16

赤枠で囲ったものが3㎜以上の成長が見られた個体。青枠で囲っているものは小さくなった個体。おそらくヒレ等がちぎれた可能性が考えられる。    

説明文の17

標識を行ってから3年以上経過しており、ほぼすべての個体で3㎜以上の成長が見られ、成長が少なくなるとされる50mm以上の個体においても3mm以上の成長が見られた。青枠で囲まれたこの個体は2012年度は下流、2013年度は中流、2015年度は上流で確認された。

説明文の18

遺伝学的調査について    

説明文19

設楽ダム建設予定地付近に生息しているトウカイナガレの遺伝的関係を表した系統樹。設楽ダム建設予定地は水色で示されている。その上の青い矢印が移植候補地である鳳来寺の沢。塩基配列にほとんど違いがない。よって、「遺伝子汚染(遺伝学的攪乱)」を引き起こさずに移植を行うことができると判断した。